2025年01月15日

「カオスの帝王」スコット・パタースン (著), 月谷 真紀 (翻訳) 東洋経済新報社

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昨年、銀行の社畜をようやく辞めてプチFIREのご身分になったので今年からはブログを再開していければと思っています。
年金が出るまではまだだいぶありますし、iDeCoから出金できるのもまだまだですが、なんとか食いつないでいきたいなあ~。

という訳で以前読んだ「まぐれ」のタレブ氏とかが思いっきり出てきます本書。
そっち方面だろうなあ~と思って読みだしたんだけど、本書の主役の一人だったりする。

端的に本書の中身を言うと、暴落は予測できないのでそれを予測しようと無駄なことするよりは、過小評価されているプットオプションを継続的に購入し、暴落時の権利行使することで膨大な利益を獲得することが出来る、そしてそれを実際に実現したヘッジファンドにまつわるお話。

但し、著者はあくまでもジャーナリストで本書もあくまでもジャーナリスティックな代物で本来、一番大切な理論やモデルについての数学的な説明は皆無。漠然として雰囲気は分かるものの、あくまでもボヤっとしていて単なる文屋さんの書き物に終始している。

更に投資という観点でみる限り、第3部以降は完全に蛇足というか、不要でただでさえ、冗長な文章が更に緩んで読むのが鬱陶しくなります。途中からは斜め読みして、肝心の投資理論部分を探していましたが、本書のどこにもその記載はありませんでした。

また、訳者さんも投資や金融分野の方ではないようで、訳語もところどころで違和感を覚えて読む意欲が落ちます。
訳者さんが原文について注記してくださっているのですが、必要なところに注記がなく、不要なところに訳者注記がある感じがしました。その辺が大変残念な感じです。

ボラティリティをいかにして捉えるか、期間の幅や振幅の上下、それに対して継続的にコストして支払うオプション価格の限界値等、モデルやパラメータがどのようになっているか分からないと結局はブラックボックスのままですよねぇ~。

効率的市場仮説なんてもんは、そりゃ当然、幻想に近いあったらいいなの世界ですし、近経やってりゃ、十分なスパンを取れば、失業は発生しないとか目の前の失業者をいないものとしてのたまう学者先生が大学院には確かにいましたが(政府の諮問委員だったりする)、まあ、現実は至るところに歪みだらけですしね。アノマリーとか言い出すと更にきりがない(笑)。

まあ、本書で数式出したら、売れなくなっちゃいますからね。分かるんですけど・・・ね。

ただ、久しぶりにアイン ランドの名前が出てきた時は、ナツイ!
やっぱり思想としては未だにアメリカ資本主義の底流を流れているんだなあ~と思いました。
先物のシカゴ学派なんて、何十年振りかに思い出しました。

本書から、理論やノウハウとかで得るものは全くありませんでしたが、【暴落に備える】という視点を最近、やはり甘く見てたのでそこは改めて気づきとなりました!!

私は株と債券のポートフォリオとかは信頼してないので(落ちる時は両方落ちるでしょ!)、株(個別株と投信)と現金を50%:50%で持っていますが、バフェットさんの現金ポジションを見るまでもなく、暴落に備えるなら個別株は全売りかと思いますね。

NISA昨年360万円埋めて、今年も1月中に8割方埋める予定ですが、個別株は数回に分けて売っておくべきでしょうね。幸い、今の市場環境でも利益が十分出ているので一度売って、キャンペーン金利の定期で寝かしつつ、投信はひたすらキープ。
暴落したら、個別株は買い戻し+追加購入して、また寝かすってところでしょうか。

iDeCoは何もせず、出金できるようになるまでキープ。時期が来たら、NISAに移したいけど、その頃には枠埋まっていそうなので特定口座になりそうですね。

リーマンショックは、事前に現金化して社債に変えていたので無傷でしたが、今度の暴落も無事に切り抜けたいところです。同時に、絶好の買い場なので資金も準備しておこうと改めて思いました!

そんな気付きを与えてくれただけで読んだ価値はあったかもしれません。

ただ、まあ、グレタさんはいいや。大嫌いだし。
金になりそうと思って企業が排出権ビジネスやクリーンエネルギー投資が賑わっていましたが、今、アメリカの金融機関はほとんどやる気ないよね。環境や多様性とか、なんて一時のブームに過ぎなかった扱いです。

環境気にするなら、車なんて乗るなって話です。
EVだってモーターや電池の製造、電気の発電等大きく考えれば、すべて本当の意味でクリーンなんてあり得ない幻想(妄想)に過ぎないですしね。子供騙しも飽きられた感があります。

これからのトランプ政権下、世界はより一層、不安定でボラティリティに満ちた世界になっていくでしょう。
先日観た「トランプ・ダイナスティ」の番組の方がはるかに勉強になりましたね。
別にウィナーになりたいわけでもありませんが、ルーザーにはなりなくないかなあ~。

本書は究極の逆張りで、考えたことあっても実現不可能と思われていた(であろう)手法を実際にして成功した一例の紹介になります。
私も机上の空論で考えたことはあるが、実際にできるとは本書を読むまで思いませんでした。十分にペイする価格でプットオプションが入手できるなんて想像もしませんでした。

ただ、本書にも何度も繰り返し記述されてますが、メンタルにきそうですね。
成功する前に、メンタル削られて病みそうです。
毎日毎日、少額の損失をコストとして垂れ流し、いつか来るであろう暴落をひたすら待つ、う~ん、絶対に精神病みますね。
まあ、勉強になりました。得るものはあまりありませんでしたが。

【目次】
プロローグ:地獄がやってくる

【第1部:スワンとドラゴン】
第1章:瞬時の崩壊
第2章:破産問題
第3章:さらに暗い未来が待ち受けている
第4章:シズラー
第5章:ナシーム・タレブの世界
第6章:七面鳥問題
第7章:ドラゴンハンター
第8章:その先にある狂気
第9章:真っ暗なトンネル

【第2部:ファットテールの世界】
第10章:夢と悪夢
第11章:フラッシュ・クラッシュ
第12章:無秩序のクラスター
第13章:ボルマゲドン
第14章:これが私たちの生きている世界
第15章:宝くじ

【第3部:厄介な問題】
第16章:この文明は終わった
第17章:絶滅への移行
第18章:破産は永続する
第19章:タイミングはとっくに過ぎている
第20章:ギャンブル
第21章:ティッピングポイントを越えた先に
第22章:目隠し飛行
第23章:リスクの大いなるジレンマ
第24章:破滅の入り口


カオスの帝王: 惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「まぐれ」ナシーム・ニコラス・タレブ ダイヤモンド社
「肩をすくめるアトラス」アイン ランド  ビジネス社
posted by alice-room at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする

2024年10月26日

「世界の図書館を巡る 進化する叡智の神殿」ゲシュタルテン マール社

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【目次】
図書館という名の楽園
ストラホフ修道院図書館
デペトリュス(フフト市立図書館)
フューリ(キルッコヌンミ中央図書館)
マリア・ラーハ修道院イエズス会図書館
セイナヨキ市立中央図書館
クイーンズ公共図書館ハンターズ・ポイント分館
聖カタリナ修道院図書館
リンカーン・カレッジ図書館
ウィリアム・W・クック・リーガル・リサーチ図書館
ジョン・P・ロバーツ研究図書館(通称:ロバーツ図書館)
ロックハル
ベネディクト会メッテン修道院図書館
現代(ヒョンデ)カード・クッキングライブラリー
ジョアニナ図書館
シアトル市立中央図書館
ジョンズ・ホプキンス大学ジョージ・ピーボディ図書館
ティクセ・ゴンパ図書館
ポルトガル赤十字社図書室
シュレーグル修道院図書館
ウォーカー人類想像史図書館
フランス国立美術史研究所(INHA)付属図書館
OMAH図書館
フランス元老院(上院)図書館
ハンガリー国会議事堂図書館
ムインガの図書館
アルテンブルク修道院図書館
ベルリン国立図書館
ビクトリア州立図書館
モルガン・ライブラリー&ミュージアム
カイパース図書館
ジ・アンセンサード・ライブラリー(検閲なき図書館)
シンゲッティの図書館群
アル=カラウィーイーン大学図書館
イェール大学バイネッキ貴重書・手稿図書館
ピフェッティの図書室
ブータン国立図書館
コソボ“ピェタル・ボグダニ”国立図書館
カタール国立図書館
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念図書館
太平御覧書楼(皇帝の書斎)
ボドリアン図書館
新アレクサンドリア図書館
バスコンセロス図書館
オーストリア国立図書館
ガイゼル図書館
天津浜海図書館
トリニティ・カレッジ図書館
フィリップス・エクセター・アカデミー図書館(クラス・オブ・1945図書館)
王立ポルトガル図書館
第4代オーフォード伯爵ホレス・ウォルポール邸ストロベリー・ヒル・ハウス図書室
ヴィブリンゲン修道院図書館
ランプル・ラザ図書館
バーミンガム図書館


世界の図書館を巡る(amazonリンク)
ラベル:図書館 書評
posted by alice-room at 19:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】 | 更新情報をチェックする

2021年05月03日

Illuminated Manuscripts and Early Printed Books from the Collection of Elaine and Alexandre Rosenberg

Illuminated Manuscripts and Early Printed Books from the Collection of Elaine and Alexandre Rosenberg

装飾写本のオークションやってたみたいです。
かなりまとまった数の売り立て。
これだけの物がまとまっているのも誰のコレクションだったかの説明を読むと納得ですね。
あのモーガンライブラリーにも関係ある人なんですねぇ~。

買うのは無理としても実物観たいですねぇ~!!
たまにあちこちのオークションサイトで装飾写本見てますが、今回のはボリューム的に圧巻です。
是非、お好きな方は直接、リンク元のサイトをご覧下さい。

あ~、またシエナ行って写本みたいなあ~。
何年も海外行ってない&行けてない(涙)。


【クリスティーズより転載】
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posted by alice-room at 01:27| Comment(0) | 【備忘録C】 | 更新情報をチェックする

スコットランド女王メアリーの手記入り祈祷書が競売へ、予想落札価格4700万円

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スコットランド女王メアリーの手記入り祈祷書が競売へ、予想落札価格4700万円
【CNN.co.jpより以下転載】
16世紀のスコットランド女王、メアリー・スチュアート本人が記した文言の入った祈祷(きとう)書が、オークションにかけられる予定であることが分かった。予想落札額は35万ポンド(約4700万円)とされている。

波乱に満ちた恋愛や政争の中で生涯を送ったメアリー・スチュアート。血縁関係にあったイングランド女王エリザベス1世の命により処刑された悲劇的な最期はつとに有名だ。

今回オークション会社のクリスティーズが競売にかける祈祷書は、本来、仏フォントブローラベイの女子修道院長のために書かれた写本だった。同修道院長は1558年から61年の間に、この祈祷書を親類だったメアリーへ譲ったという。

祈祷書の見返しには修道院長のモノグラム(頭文字などを組み合わせて図案化したもの)とモットーが書かれている。さらに同書にはメアリーの手書きの文章とモットーも記されている。

祈祷書を彩る40点の細密画は、フランス王フランソワ1世に仕えた宮廷画家の中で特に人気の高かった人物が手掛けたものだという。

クリスティーズによると、メアリーは青年期の大半をフランスで過ごした後の1561年、この祈祷書とともにスコットランドへ帰国したと思われる。

やがて祈祷書は18世紀後半か19世紀初めにイングランドにわたり、北部のハリファクスにある業者が製本し直した。

クリスティーズで中世・ルネサンス期の写本を担当するエウジェニオ・ドナドーニ氏は声明で、今回のオークションについて「鮮やかな装飾が施された王族ゆかりの祈祷書を手に入れるまたとない機会になる。スコットランドと欧州の歴史上最も興味をそそられる人物の1人であるメアリー・スチュアートが所有し、自ら文言を書き込むほど愛着を抱いていた品だ」と述べた。

オークションはロンドンで7月29日に行われる予定。

一瞬、ブラッディ・メアリーかと思ったけど、確認すると別人ですね。オークションの方はスコットランドですし、血まみれの方はイングランドですもんね。

著名人の署名入りってことでやはりプレミアつくんですね。
posted by alice-room at 00:24| Comment(0) | 【ニュース記事B】 | 更新情報をチェックする

2020年06月13日

「名物「本屋さん」をゆく」井上 理津子 宝島社

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最近はネットでばかり読んでいて久しぶりに本となったものを読みました。
というか・・・久しぶりにブックオフ行って、本を買ったかな?

図書館も古書店ももう半年以上、行ってなかったので・・・。
そもそも家には未読本が山積みですが、なかなか紙の本を読む気になれなくてねぇ~。

さて、よくある系の古書店(更にありがちなブックカフェ含む)紹介の本。

それなりに特徴のあるお店に行かれているのではと思うものの、あまりに似たような類書のあるジャンルだし、紹介されている内容もあまりにも一般向けに幅広に間口を広くしたせいでかえって、紹介内容としては薄っぺらなものになってしまっています。

最近はめっきり古書店に行かなくなった私でさえ知っている古書店が何軒か紹介されているのですが、読んでいて申し訳ないが全然魅力を感じません。少なくともこの本の文章を読んでわざわざ初めて行かないだろうなあ~というのが感想だったりする。

私の感覚的にはもっと&もっと魅力的な本屋さんなのですが、一番大切な古書店で扱っている具体的な本のタイトルの羅列がものの見事に失敗しているような? あそこの本屋で着目すべきはその本ではなく、あの本!といった感じを強く感じてしまう。

そこから類推すると、他のお店ももっと取り上げるべき点があるんでしょうが、なんか違うポイントを紹介してるんだろうなあ~って感じがしてならない。

単純に私の感性と違うのかもしれませんが、古民家カフェで少しばかり店主こだわり(本人的には)の本や雑貨があって、そこで軽い飲食や飲みが出来ていい空間を楽しめる、とか正直どうでもいいかなあ~。

古書が好きで古書店巡りをする根っからの本好きというよりは、このコロナの前に少しばかり流行った系のノリのにわか(?)の方達向けに軽い情報っぽいのを提供しようとするコンセプトが個人的には駄目でした。

よせばいいのに、そこに更にサブカルっぽい部分まで入れて、いかにも宝島社的な方向へ持っていくのが更に失敗の傷を深めた一冊かと。

本書を読んで古書店巡りを改めてしたいという気持ちにならなかったのでお勧めしません。


名物「本屋さん」をゆく (宝島SUGOI文庫)(amazonリンク)
ラベル:書評 古書店 古書
posted by alice-room at 21:59| Comment(0) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする