
当初、思いっきりジュブナイルものの軽い読み物だと思っていました。出版社さんもメディアワークスさんでしょ、確かアニメにもなってたはずだから、舞台が図書館なだけでいささかチャライものを想像していたのですが・・・。
すません、私の完全な誤解&偏見でしたね。実に、よく練り上げられた読むべき価値のある作品です。
内容は、ある一人の新人図書館員(図書館を守る戦闘要員)の女性を通して描かれる近未来(というより、並行してあるかもしれないパラレル・ワールドっぽいかな?)の図書館が舞台。そこでは悪書(恣意的に決め付けられたもの)を検閲で取り締まる側と検閲を逃れて情報を公開しようとする図書館側の対立勢力が文字通り、力づくで各々の主張を行う世界を描いています。図書館は、自らの存在意義(資料の収集、資料提供)を維持する為に独自の武装勢力を有するに至り、そこで繰り広げられる抗争が描かれます。
「表現の自由」を巡る規制は、未だにロシアや中国を見ても厳然たる事実としてあり、その重大性は時代を超えて、地域を越えて普遍なものだと思われるが、正直、図書館が検閲勢力と対抗する為に武力を有するというのは、設定からしてもいささかナンセンスって私思ってました。本書を読み始めた当初は。
でもね、そのいささか奇妙とも言える設定が、言論の自由に対する劣悪な公権力からの介入、且つ、実にしばしば生じうる操作された大衆世論の圧力などを丹念に描写されていくにつれ、実に生き生きとして興味深いものになっていきます。極端な舞台設定が、かえって現実の問題を顕在化させるいい例ですね。
登場人物の極めて日常的な言動が、いかにもどんな職場にもいる上司や同僚の世界での話であり、近未来的なSFの舞台設定を虚構を虚構としないリアリティに変化させています。読んでいて単純に楽しいエンターテイメント小説でもあるのですが、むしろ本書の魅力はその背景に描かれているのは、設定は違うものの実際に存在する現実だと思います。
例えば、図書館の館長が病気の為、代わりに送り込まれた館長代理というのが、上からの顔色を伺う行政派で図書館独自の立場を尊重する原則派とは合わないなど、どこの組織にも付随する不毛でありながら、無視できない構図など、さらりと描いているのも面白い。
私も図書館によく行くが、そこでみた司書さん向けの業界誌的なものにも載っていたが、図書館員は必ずしも司書の資格を要せず、あくまでも行政組織の一部署として管理職が数年おきに変わるので、プロパーの方とは問題意識も視点も異なっていて、大変らしい。そんなことを知っていて、本書を読むと更に興味深い記述が散見する。
また、それと気付かない人が多いかもしれないが、法律をきちんと学んだ人なら分かると思う。行政サービスとしての法律解釈なども実に適切だ。しばしば一般人は、柔軟な法解釈で行政サービスを受けたいと考えるが、これは大間違いだろう。例えば、生活保護問題などでもっと柔軟に適応対象を広げるべきだなどと良識者ぶった思慮の足りない発言をする人も多いが、予算的制約もさることながら、法は杓子定規で運用することではじめて権力の抑制としての意義があり、法治主義の価値があるのだが、法が柔軟且つ適宜の解釈なんてことを全面的に認めていたら、そここそ言論の自由なんて、名目だけでいっこうに実効性のないものとなるでしょう。即、潰されるって!
良い意味で悪い意味でも、一定の硬直性を有してこその法の縛りであり、行政側が恣意的な運用や消極的抵抗(怠慢)などを排除する為にも必要なのだが・・・『法律』の限界と有用性を知らぬ発言が蔓延するのも今に限ったことではなく、普遍的な現象なのがつくづく悲しい。
まあ、そういった観点も分かったうえでそれを踏まえて本書は書かれていると感じた。平易な表現でさらりとしか書かれてないが、実に読み方によってはいろいろなことを想起できる文章である。
本書は見かけのチャラさとは裏腹に実に、骨太の世界観(現実認識)を根底に持っており、登場人物はそれぞれ普通なんだけど、普通故の魅力をたぶんに持っています。そして、その普通の割りに、一本筋の通った熱い思いを胸のうちに秘めた人達が多く、読んでいてもジ~んときちゃうところがあったりします。
単純に言うと、感動することができる本です!
読んで楽しいラノベであると共に、考えさせられるところも大の小説です。こういうものこそ、良書でしょう。
読むなら、是非、こういう読み応えのある小説をお薦めします。最も、良書であろうと悪書であろうと、読み比べてこそ意味があるものであり、情報を制限すること自体が、とにかく悪だと思うけどなあ~。
つ~か、イージス艦の情報漏らした組織の人間を、普通に生かしておく国家もなんだかねぇ~。公安とか何してんだか???
どこでもそうだが、建前と本音は別物なのは、仕方ないし、それはそれで意味があるんですけどね。必要ならば、果断たる手段をとるのも止むなしだと思いますけど・・・。原則論を支持しながら、あまり綺麗事を言う人も大嫌いな矛盾の塊のような私???
まあ、とにかくアニメも観たい~。原作の良さが題無しになっていないことを強く期待しちゃうね♪ 本書を読んでいて、カフカの作品をイメージしちゃいました。さて、どうしてなのやら?
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最初の方、特に1巻目はすごくおもしろかったです。
でも、間隔があくうちにわたしの熱が冷めたのか、最後の巻になるとなんだか気分よく読み進めなかったです。
主人公が泣いたり笑ったり忙しいのに疲れたし、大甘口ラブストーリーに食傷。アニメは見ていないのに、登場人物の声が甲高いアニメ声となって頭に響くのも・・・
そのときの気分にもよるのでしょうね。有川浩はわたしはしばらくお休みです。
シリーズが続き過ぎると、やっぱり無理が出てきてしまうのでしょうか? 続きも読みたいですが、段々辛くなってしまうのも残念ですね。
複雑な気持ちになってきました。とりあえず、機会があれば、続き読んでみようと思います。あまり辛くなったら投げ出してしまうかも? ですが・・・。
最初は、少し抵抗感がありましたが、見ているうちに慣れました。(笑)
『イノセンス』や『攻殻機動隊 S.A.C.』のプロダクション I.Gの製作なので、作画的には標準以上だと思います。
ただ地味な作品なので、『コードギアスR2』や『マクロスF』を見る時ほどはワクワクしません。
思ったよりも地味なんですね。原作の思い入れがある分、それがいい方向になるのか、逆なのか分かりませんが、私的にはますますそそられました。
情報有り難うございました。