2008年06月25日

「サンチャゴ巡礼の道」イーヴ ボティノー 河出書房新社

サンチャゴの巡礼を描いた本は、紀行文的なものになるか、歴史的なものになるか、どちらかに分類されるタイプが多いが本書はより包括的な視点で描こうとしている。

実際、本書で説明される「黄金伝説」からの聖ヤコブ伝説や「巡礼所案内」など、本書が出た当時には、日本語訳がなかったり、絶版になったりで大変貴重な情報源となる本だったと思う。

今でも情報的には盛りだくさんだと思うが、それぞれ本が再販されたり、日本語訳の本が出たりするに及んで、相対的な価値はだいぶ減少している。それぞれの部分を見る限りでは、より詳細に説明された本を読むほうが有用なのも事実だろう。

しかし、本書は類書にはない多角的な視点がある。読んでいてうざくなるのも事実だが、その視点の多様性だけでも読む価値のある本だと思う。

そうそう、本書を読んでいて驚いたのは、非常にしばしばエミール・マールの言が引用されていること。今まで読んだ本の中で、一番の引用度かもしれません。何気にエミール・マールのファンである私としては、嫌な気がするわけもありません。著者に共感を覚えます。

ただねぇ~、Ⅲの「旅の覚書」にはほとんど読む価値を認められないなあ~。時間がなければ、そこは飛ばしてもOKだと思います。
【目次】
Ⅰ巡礼の歴史
聖ヤコブの2回の発見
中世聖ヤコブ伝説
巡礼の繁栄と衰退
さまざまなルート
巡礼者・旅・歓待
フランス人と「道」への入植

Ⅱ巡礼の文化的諸問題
大司教テュルパンからジョゼフ・ベディエまで
大勢の聖者のなかでの使徒サンチャゴの図像学
サンチャゴへの道とロマネスク建築
サンチャゴへの道とロマネスク彫刻の誕生
生地彫り七宝の発端について

Ⅲ旅の覚書
サン・ブノア・シュル・ロアール
ヴェズレー
ル・ピュイ
コンクのサント・フォア
トゥールーズとピレネー山脈のほうへ
ル・ソンポールからプエンテ・ラ・レイナへ
ロンスヴォーからプエンテ・ラ・レイナまで
プエンテ・ラ・レイナからブルゴス、レオンへ
ガリシア、そしてサンチャゴ・デ・コンポステーラへ
サンチャゴ巡礼の道(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「サンティヤーゴの巡礼路」柳宗玄 八坂書房
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「スペイン巡礼の道」小谷 明, 粟津 則雄 新潮社
「スペイン巡礼史」関 哲行 講談社
「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「星の巡礼」パウロ・コエーリョ 角川書店
posted by alice-room at 23:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久しぶりです。

日本から戻ったら、日本より真夏日。
いいかげんばててるOZです。
とはいえ、夕べ夕立があって、今日は多少
しのぎやすいので嬉しい。

ところで友達ご夫婦が行くそうです。
奥様は60代半ばの日本人。
毎日4,5時間歩いて足慣らしをしているとか。
ワタシも一部だけでも歩いてみたいですねえ。
とはいえ、泊まる場所がちょっと・・・・
軟弱なワタシ。
Posted by OZ at 2008年06月27日 03:30
OZさん、お久しぶりです。
そちらも結構、暑いんですね。体調など崩されないようにご自愛下さいませ。

おお~、実際に歩かれる方、いらっしゃるんですね。夏場でないと、ピレネー越えは凍えて大変そうですが、やっぱり挑戦したいです♪ 最近、いささか運動不足ですし、ヤバイです私(アセアセ)。

泊まる場所は教会とこの宿泊所ですよね。確かに、いろいろな意味でタフでないと・・・辛いでしょうし。私も普通のビジネスホテル以下は泊まったことないから、難しいかな? ユースホステルさえ泊まったことないし・・・口先と違い、思いっきり軟弱な私です。
つ~か、ノートPC持参でネットやりたかったりして・・・(苦笑)。現代社会に毒されている私です。でも、絶対に一度はやってみるつもりです。

いつなのかメドが立ちませんが・・・? 

それ以前に今年はあまりにも航空券に追加される給油サーチャージが高いので海外自粛を考えています。その分、四国でも行こうかと思案中だったりします。石油下がって欲しいなあ~!
Posted by alice-room at 2008年06月28日 08:24
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