
基本的に章毎に独立したものと考えて良い。個々に雑誌 harvard business review に掲載した記事をタイトルでまとめて本形式にしたものです。
harvard business reviewは学生時代によく読んでいたが、確かに一昔前の科学的管理手法の王道であり、いかにもアメリカが得意そうな方法論ではあるが、正直実効性はどうなんでしょうね?
外資系の経営コンサルさん辺りが、さも論理的に滔々と語る姿が目に浮かびますが、分析のクリテリアとしては一考に価するものの、実際にそれをどう導入し、費用以上の効果(利益)を挙げられるのかが疑問。
(本書内でも、その点は素直に認めているのが良心的)
あくまでも一つの見方として、こういう物の見方もあるのかあ~と思いつつ、現場や実情に即して応用できるか、それが一番大切なのでしょう。視野を広げたり、視点を変える契機として読む分には悪くないかもしれません。
ただ、幾つか興味深かったこともあったので、適宜メモ:
時間的プレッシャーの中では、創造的思考は生まれない。
・・・集中力を妨げる種々の細々とした雑事は、価値ある仕事の達成を困難にする(今日の私の仕事がそれに当たる! 意図的に内線電話がかからない場所に隠れて仕事してたよ)
リターン・マップ
・・・R&D及び製造にかかる投資、売上、利益を時間と金額との関係で追跡するもの。製品プロジェクトの評価基準として用いる。
実は、これ知りませんでした。時間を要素として取り込んで、損益視点と合わせて進捗状況の把握をするんですね。これは面白そう。どの作業がボトルネックになっているかも把握できそうですね!
病院での投薬や治療指示の際に、自動的にその指示に関連した情報が提供され、日常業務の中にナレッジマネジメントが前提として組み込まれたシステムが実際に運用されているのは、大変驚き、また感動を覚えた。
ナレッジ・マネジメントの素晴らしさと大変さが、実に素敵に紹介されている。
ナレッジベースの作成及びメンテには、多大な労力がかかるうえにそれを利用し、十分に活用するのも実は相当なエネルギーを消費するのが普通だ。
この点、外資系企業はまさに企業文化故か、その点は日本のはるか先を行っていると思う。外資系ソフトウェア会社のテクニカル・サポートをしたときにまさにこのナレッジベース(KB)の凄さと面倒臭さを痛感したが、大昔コンサルティング・ファームで働いていた友人から聞いた研修用ケース・スタディもまさにこのKBに相当するのだろう。
本書では、その利用を業務の中に組み込む事で意識せずに、利用を促す仕組みにまで作り上げているのが、実に素晴らしい!!
今の会社でも、違う人から類似の質問を何度も受けるたびに、それらをKBとして作成しようと思うが、面倒臭くて使用しないことが目に見えているのであえて着手していない。
作成に非常に手間と時間がかかるのだが、マニュアル同様、なかなか人はそれを見ないものだからネ。社内制度として強制する一方で、それを利用する事による明確なメリットを提示できない限り、死蔵されてしまうのが目に見えており、使われないシステムは愚の骨頂であり、独り善がりでしかない。だから、状況が揃うまで着手しないんだけれど・・・。
話は変わって、本書では矢継ぎ早に新製品を投入するようなタイムベース競争の功罪的な話をしているが、根本的なところが間違っているように思えてならない。タイムベース競争は、絶対的に『正』だと思う。人間の人生が有限である以上は、それは当然、肯定されるべき要素に他ならない!問題なのは、顧客のニーズの無いところでのタイムベース競争であり、ニーズがある限り、『早い』ということはそれだけで一つの価値のあるサービスだろう。
論者は、それを完全に見逃しているのでないだろうか? 日本の企業が幾つか挙げられているが、過去の一時点の特定観点からの評価でしかなく、私は現在時点で見ているので公平ではないのを差し引いても、やっぱり違和感を覚えてならない。
レクサスの成功は、確かに海外の経営の教科書にはよく出るけど、日本の場合、知ってるのかなあ~。顧客管理をしているのは、トヨタ本体じゃなかったはず・・・。まあ、何も知らない人が自分の都合のいいように引用している気がしてなりません。
他にも多々納得がいかない部分が多く、日本で導入したら、コストばかりかかって現場から総スカンをくらい、かえって効率落ちるんだろうなあ~と思うものが多いですが、知らない視点が確実にありますし、他山の石としてもいいので、もし自分の問題意識と重なるものがあれば、見てもいいレベル。
基本的にたいしたことはないです。実務へ落とし込みの方がはるかに大切なのは、実務者がご存知の通り!!
【目次】いかに「時間」を戦略的に使うか(amazonリンク)
第1章 マネジャーが陥る多忙の罠
第2章 時間を浪費する人々
第3章 時間的制約は創造性を高められるか
第4章 リターン・マップ:時間対効果の最適化
第5章 時間主導型ABCマネジメント
第6章 ジャスト・イン・タイム型ナレッジ・マネジメント
第7章 日本企業に迫られるタイムベース競争の再検討