高貴な血筋を引くトリスタンが運命に翻弄されながら、ようやく叔父である王に仕える騎士として認められる。勇猛な武人として、王の良き相談相手として、宮中で活躍するがとある運命の過ちから、愛の魔法薬を飲んでしまって王妃となるべき女性と許されない恋に落ちる。
王に対する忠誠心から苦悩しながらも、それ以上に強い恋の炎に身を焦がす騎士トリスタンと王妃イズー。やがて二人の秘められし、恋は宮中に救う悪しき側近達の知るところになる。何度も密告をし、王を疑心暗鬼に陥らせる側近達。
やがて、恋する二人は全てを捨てて追われる身の上になる。そして二人の行き着く先は・・・?
いささか甘ったるいことはしかたないですが、いかにも騎士的精神とはこういうものなのか、と思わされることも多く、西洋中世史に関心を持つ方だったら、読んでおいて損はないでしょう。読んでいてそこそこ面白かったです。こういう背景的なものを知らないと、ヨーロッパを旅行した時に楽しくないもんね。知れば知るほど、面白い♪
そうそう、この話はケルト的な伝承を色濃く受け継いでいるそうです。読んでると、いかにもと思う箇所を何度も気付きました。トリスタンが愛しいイズーと離れ離れの時に、その悲しさを忘れさせてくれる魔法の鈴をつけた小さな犬。この鈴と犬は、アヴァロンの島の仙女から送られたものだそうだが、聖杯物語の読者にはピンときたはず! そう、アーサー王は最後に傷付き渡った島がそのアヴァロンに他ならない。
他にも気をつけていると、聖杯物語やケルト伝承に絡むことがたくさん出てきます。知っていればいるほど、読んでいて楽しいかも?
美しい恋愛物語、高貴なる女性に捧げられた騎士道的誓いなど、御興味のある方にもお薦めします。
そういえば余談ですがケルト神話で有名な「ブランの航海」って翻訳出ているんですね。ちょっと高いのでまだ買ってないですが、また買ってしまいそうで怖い・・・(涙)。
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