しかし、書かれている内容は本質的にポイントを押さえており、決して侮るべきものではないと思います。下手な解説本よりは、はるかに本質を突く素晴らしい内容を分かり易く表現しています。
たとえば、教会の中にある井戸のこと。その水には病気を治す効力があるとされ、たくさんの人を呼び寄せるようになったとか、同様に教会にあった黒い聖母像は、ドルイド僧が祭ったものだとか、さりげなく書いてあって、私的にはびっくりしました。
そう、一つは「聖なる井戸」でケルト信仰の名残りであり、地母神を祭ったものをそのまま聖母マリアにすり替えたのが、現在のものに続く黒い聖母であり、感慨深いです。
聖遺物たる聖母の御衣をかざして敵を退けた話などまで紹介されています。
また、ゴシック特有の建築や彫刻、ステンドグラスに至るまで簡にして要を得た記述は、なかなか子供向けとは思えないものがあります。だって、普通にゴシック建築に関心がない大人のどれほどの人が、ここに書かれた内容を知っているでしょうか? 私も数年前の状態だと、この本を読んだ子供に負けますよ、きっと!
シャルトル大聖堂に行ったことのある方、厚い本を読むのが苦手なら、本書をお薦めします!! ちょっとこどもっぽいに抵抗を覚えますが、それを我慢するだけの価値がある本です。
最後に本書を読んでいて強く共感した部分を引用:
シャルトルの大聖堂はまたたいへんふしぎな場所なのです。そこで生活し、そこで働いている人は大聖堂にほれこんでいます。ある人々は偶然に足を踏み入れたのですが、次の瞬間、彫刻や柱頭やステンドグラスや石がかれらをその場にくぎづけにしてしまいました。まるで魔法にかかったとしか思われません。大聖堂を案内するガイドはそのような人たちなんです。私が行ったことのある世界遺産の中では、ここが一番かもしれません(二番はアルハンブラ宮殿)。実際に、日本語でシャルトル大聖堂に書かれた本の著者は、おしなべてこの魔法にかかった人達であることが分かります。
あのナポレオンの言葉を引くまでもなく、シャルトル大聖堂で『神聖さ』や『聖域』を感じられない人は、ちょっと私の友達ではいて欲しくないなあ~。
私も未だにこの魔法からさめておりません・・・。
シャルトルの大聖堂 (フランスのくらしとあゆみ)(amazonリンク)
ブログ内関連記事
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂の案内パンフ
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店
「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller Pitkin
「大聖堂ものがたり」アラン・エルランド・ブランダンブルグ 創元社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「Cathedral Of The Black Madonna」Jean Markale Inner Traditions
「シャルトル大聖堂」アンティークポストカード
他にも中世哲学やゴシック建築関係まで広げると、相当数の本を読んでますのでご興味のある方は、当ブログ内を検索してみて下さい。