2005年12月07日

「短編小説集」荒俣宏 集英社

tannpen.jpg荒俣氏の短編集である。この本の場合、氏の得意な博識をベースにしたものといささか異なる。博物学者、あるいは翻訳家の荒俣氏ではなく、まさに作家としての荒俣氏の手になるものである。

しかし、本当に荒俣さんって初期の翻訳家の時と比べると、文章が読み易く上手になられたなあ~と実感させられる。下記の目次のうち、福子妖異録から平安鬼道絵巻までなんて、非常にいい味が出ていて結構好きだったりする。氏の博識さは行間から滲み出ているのは隠せないが、それ以上に読みものとしてウマイ!と思う。あとに残る余韻をうま~く生かしていると感じる。

私風情が言うのもなんですが、ストーリーテラーとしても高得点だと思うなあ。逆に、後半のものは、ちょっとパス。いささか毛色が変わったものも面白ければ何でもいいのですが、私には面白いと思えなかったかも? 後半だけ削れば、完成度の高い短編集だったような…。

平安鬼道絵巻は実は、他の本でも読んでいて既に知っていたけど、それでもそこそこ面白かったし、福子妖異録とかは、非常にそそられた。

昔、うつぼ舟に入れて流したとされるヒルコやそれが恵比須とも呼ばれることなど、個人的に調べていたことがあったので、常人とは異なる存在が福の神になる、そういった系の話が大好きなもんで(満面の笑み)。そういった意味でも、お薦め!!

可坊草紙(べらぼうぞうし)も見世物小屋とか、お化け屋敷が好きな私には興味深かった。思わず、江戸川乱歩の一寸法師を思い出しながら、読んでいたりする。

弁天小僧もGOOD! 当時の衆道の様子が彷彿としてくるし、威勢の良さもいい。歌舞伎か何かの演目にでもしたいくらい。ここまでは読んで外れはないと思う。

だ・け・ど・・・。後は知りません。後半までは保証しませんが、読んどいていい一冊かな。
【目次】
福子妖異録
可坊草紙
弁天小僧
平安鬼道絵巻―九つの鬼絵草紙
 緊那羅
 乾闥婆
 夜叉
 摩〓羅伽
 戻橋
 茨木童子
 丑御前
 橋姫
最後の闘い
目玉の熊ちゃん龍動奇談―奇想天外博物館小説
生える悩み―香港ファンタジー・ノベル
長嶋明神縁起
無憂物語―ハワイのカメレオン・ハンターから聞いた話
ホーキング博士の四次元生活
恐怖をふたたび愛する―ホラー小説と現実の恐怖

短編小説集(amazonリンク)
posted by alice-room at 23:28| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック