2008年08月03日

「解読! アルキメデス写本」ウィリアム・ノエル、リヴィエル・ネッツ 光文社

arukimedes.jpg

うちのブログの常連さんならお馴染みになってるかもしれませんが、羊皮紙は丈夫で軽くて長持ちし、非常に高価な為、古代からずっと通常は使い回しをされてきました。羊皮紙に描かれた写本は不要になると、表面を削られて新しい文字や絵が描かれます。

しかし、科学技術の進歩した現代では、な、なんと消されたはずの文字を復元することができたりするんだそうです!!

昨今では、長い歴史の中で失われた(とされた)貴重な文献が、その技術によって再発見され、目覚しい成果を挙げ、注目を浴びる技術だったりします。

現在でもバチカンでその為のプジェクトが推進されており、日本では 凸版印刷がバチカンに協力してそれを進めているのは非常に有名ですね。そういやあ~バチカン図書館は一時的に調査の為に、閉鎖が決まっていて世界中の研究者が慌てて閲覧申請出してる、な~んてのも海外のニュースでは出てますね(日本のマス・メディアでは流れませんけど)。

まあ、そういったことは楽しくて、話が飛びまくるので置いといて。
(うちのブログでも時々採り上げてるアレです!)

本書はまさに、その失われたはずのアルキメデスの知られざる『知識(発見)』が中世の祈祷書であったものから見つかったというノンフィクションのお話です。ニュートンでさえ、あのアルキメデスの創造した思考法路線の継承者であり、アルキメデスの延長線上に出るべくして出たというのは、本書を読んで初めて知りました。

また、それこそ本書の内容は、世紀の発見として世界中を騒然とさせたニュースであり、つい最近世界中で騒がれていた話題だったそうです。調べてみたら、すぐにBBCとか大手のメディアで見つかりました。日本で新聞読んでるだけで何にも知らないままでした私(恥ずかしい、というよりも悲しいな、うん)。

う~ん、もう少しそういうの頑張って欲しいですよね、日本のマス・メディア。海外のニュースがパリス・ヒルトンがどうとか、ネバーランドがどうしたとか個人的にはゴミのようなニュースばかりではなくてネ。

さて、本書の内容です。
ササビーズのオークションに出品された中世の祈祷書の写本。既に先達者がいて、祈祷書以前に書かれて写本の内容は発表されており、もうほとんど新しいものは見つからないと思われていたそうです。

しかもその写本には、権利関係を巡る紛争がおまけ付き。誰もがためらうような状況でのオークションでした。それを最後まで名前が明かされないパトロンが、かなりの高額で落札後、とある研究者に写本の調査を依頼してきたところから物語りは始まります。

多くの研究者が自らの時間を割いて、自主的に調査に参加すると共に、必要な調査の為の資金については、覆面のパトロンが適宜、惜しみなく援助する事で今回の世紀の大発見はなされたそうです。

今までは全く知られていなかったアルキメデスの真の『天才』の名にふさわしい科学史に燦然たる業績を、新たに確定した共に、本書はアルキメデスだけに限らず、他にも長い歴史で失われた貴重な古代の文献資料が多々見つかったそうです。そして、それは現在も進展中とのこと! いやあ~読んでいてワクワクしてしまいますね。

そして本書の中では、それらの調査の経緯や意義の他、アルキメデスの考え出した業績についてもたくさんの図形を使用して説明をしています。これはこれで面白そうなのですが、白状しちゃいますと、私は読みながら考える時間は無くて、ざっと流し読みしてましたこの部分。人によってはここがもっとも面白いかも? あるいは、幾何学系苦手の人なら、無理して読まない方がいい箇所かも? でも、論理的な思考できる方なら問題なさそうです。

アルキメデスが行っていたのは、何もないあの当時ですから、純粋な思考実験であり、古代であっても人間の思考能力は変わらないと思う以上に、よくぞそこまで思考を極めていったものだと驚愕することしきりです。確かに、非凡というのはこういうことを指すのでしょうね。昨今、論理的思考などと言われているものと比較すると、現代の水準の低さにアルキメデスは失望するかもしれません。それとも自分の思考を理解できる人がいることに素直に喜ばれるかな?

本書は、読む人の関心や能力によって、いくらでも読み方・楽しみ方が変わっていくタイプの本だと思います。実に興味深いです。私の関心があるゴシック建築には、当然、数学的知識「比」の概念なども必須なわけですが、まさに建築家達が持っていた知識は、アルキメデス譲りであったわけなんですね! うっ、うっ、人間ってやつあ~実に凄いし、素晴らしいです。同じ人間なのに、これほど違いがあるってのも、また別な意味で不思議ですが・・・・。

とにかく、エセインテリさんは是非読んどきましょう。知らないとそいつは無知ですぞ! 新しい発想には、こうしたスケールの大きいお話が大切です。一見、面白くて為になりそうな安直なビジネス書ばかりではなくて、こういう本こそ、ブレイクスルーを生み出すものでな・・・な~んて思っちゃいます!!


あとさ、本書内でもビル・ゲイツが買ったんではなくて良かったと書かれていたが、古文書漁りで名を馳せてますが、教養の無い人は駄目なんですかねぇ~。今回のプロジェクトが成功したのもいちいち審査を通さないと予算が下りないような公的資金などの学術予算ではなく、真に理解あるパトロンがいたおかげだと述べてますが、一方でこの本当に貴重な写本を台無しにしてのも、つい最近の個人であることも書かれていて、現代の抱える問題を考えさせられます。
【目次】
アメリカのアルキメデス;
シラクサのアルキメデス;
大レースに挑む第1部 破壊から生き残れるか;
視覚の科学;
大レースに挑む第2部 写本がたどった数奇な運命;
一九九九年に解読された『方法』―科学の素材;
プロジェクト最大の危機;
二〇〇一年に解き明かされた『方法』―ベールを脱いだ無限;
デジタル化されたパリンプセスト;
遊ぶアルキメデス―二〇〇三年の『ストマキオン』;
古きものに新しき光を

解読! アルキメデス写本(amazonリンク)

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posted by alice-room at 09:55| Comment(0) | TrackBack(1) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
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ドラマチック! 「解読!アルキメデス写本」
Excerpt:  リヴィエル・ネッツ/ウィリアム・ノエル著の『解読!アルキメデス写本』(吉田晋治
Weblog: 壺中水明庵
Tracked: 2009-06-03 20:22
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