2008年08月06日

「聖女の島」皆川 博子 講談社

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読み始めた時は、かなりイライラした。主人公の口調が単純に大嫌いだったからだ。駄作の予感がして、どのタイミングで読むのを辞めようか・・・ずっと頭の片隅に考えながら読んでいました。

プロット自体はありがちなもので嫌な予想が最終的に当たってしまったものの、本書はプロットで読ませるものではなく、あくまでもスタイル、狂気を軽く漂わせるスタイルで引っ張るタイプの作品です。

読んでみれば分かりますが、確かに力強く読者を引き込む力があります。だからこそ、最後まで読んでしまったのですが、読了後、あまりにも何も余韻が残らなかった、哀れな私が残されました。

読んでる途中は、確かにひっぱるスタイルも読了後には、その感触がのっぺらぼうに感じられます。いろんな意味で何にも無い感じです。

基本的には人間心理の葛藤や推移、あるいは『狂気』と評すべきものを描こうとしているようなのですが・・・冷静になって読後感はと言われると、それほどの狂気には思えないのです。別に事件らしい事件があったとも思えませんし、少し変わった日常に毛が生えた程度かと・・・。

同じ狂気を描くなら、より日常の中での親密且つ濃密な狂気や、全く世界観を一変するような『狂気』をこそ、私は熱愛し、渇望します。

ミルボーの「責苦の庭」や西尾維新の「きみとぼくの壊れた世界」とかの方が、私には甘美で幻想的で心惹かれてなりません。まあ、「ドグラマグラ」のような絶対的至高の狂気とは、比べるべくもない、おままごとですね。

でも、こういうので小説になるんですねぇ~。需要があるんだ。へえ~としか言いようがありません。何でもいいから心を揺り動かすような物語を読んでみたいなあ~。ただ、それだけを思いました。

本書はお薦めしません。勿論、ホラーとかサイコとかでもないと思います。

一応、ストーリーも。
閉鎖された島で、幼くして数々の犯罪を起こし、矯正が必要とされる少女達が暮らす宗教施設が舞台。表面的には唯々諾々と指示に従う子供達、突発的に生じる問題、それらに翻弄される大人たち。

何かがありそう、起りそうと暗い期待がみなぎるものの、何にもありゃしませんぜ! 木戸銭返せ!ってなカンジでしょうか? 

以上。

聖女の島 (講談社ノベルス)(amazonリンク)

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ラベル:小説 書評
posted by alice-room at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説B】 | 更新情報をチェックする
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