
久しぶりに物語らしい物語を堪能した。私のイメージする『日本』というものに近しい感じを覚えた。
吉野葛は、南朝が歴史上では終わった後も実は続いていたという由緒ある(?)地を舞台にしている。古代が現在に連綿と引き継がれるその土地でのありそうな・・・お話が訥々と語られていく。
私の関心を引いたのは、五鬼継。
正確には大峰山脈の釈迦岳の東南にある前鬼山中腹にある集落に、五鬼熊・五鬼童・五鬼上・五鬼継・五鬼助などの家が、修験道のために宿坊を営み、案内役を勤めていたことを指す。思わず、八瀬の鬼を思い出してしまう。奈良の地は、相も変わらず鬼が棲まう土地かと久しぶりに思いを深くした。
彼等は、七世紀末に活躍した修験道の開祖・役行者が打ち負かし、服従させたと言い伝えられる前鬼・後鬼のうち、前鬼の子孫とされる。
なお、山上ヶ岳(大峰山)山麓の天川村洞川には、後鬼の子孫と伝えられる人々があり、結婚は彼らの中だけで行われていたという。
来月行きたいけど・・・ツレの希望で別な場所になりそうだな・・・。
まあ、それはいい。夏休みにローカル電車を乗り継いで、観光客も寄り付かないような辺鄙な土地を放浪する際、こういった文庫本を持っていきたい。電車の乗り継ぎに2時間も次が来ないときに、読むにはうってつけだろう。途中下車の旅には、このうえもない友になりそうだ。
一方、盲目物語は、お市の方をヒロインにその側に仕えた者(盲目の座頭)からの視点で描かれている。太閤殿下(秀吉)との確執、因縁は有名だが、知っていても読んでいて面白い。
当事者から微妙な距離に位置する者からの視点で、人の心の機微を見事に描いている。文体もなかなか味があり、素敵で魅力的な物語です。人には、生き甲斐が必要ですね。
これはお薦めしてよい小説でしょう♪
吉野葛・盲目物語 (新潮文庫)(amazonリンク)
谷崎が取材する頃には、より特別な雰囲気があったものと想像します。改めて読んでみたい小説です。
谷崎の『吉野葛』を読まれたのなら、花田清輝『室町小説集』もお薦めです。
第一話「『吉野葛』注」は、谷崎の小説を材料に使っています。
ご存じかも知れませんが、花田清輝は、澁澤龍彦のお気に入りの作家で、
澁澤の小説のスタイルに影響を与えています。
後南朝つながりで、TBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
おはようございます。
小説の舞台を実際にご存知でいらっしゃるんですね。おお~凄い! 洞窟にテントとは、子供時代でなくてもワクワクするシチュエーションですね!
そうですか、そんなに不便な場所なんですか・・・おっしゃられるように、当時の取材時だったら、その雰囲気たるや格別のものだったんでしょうね。
貴重な情報を有り難うございます。 奈良は桜井を基点にたまにうろうろする程度なので、機会があれば、もう少しあちこち彷徨ってみたいです!!
lapisさん>
いつも本当に素敵な情報有り難うございます。花田清輝『室町小説集』ですね、ばっちり読書リストにメモしました(笑)。
>花田清輝は、澁澤龍彦のお気に入りの作家で、
澁澤の小説のスタイルに影響を与えています。
おおっ、そうなんですか。名前は聞いたことがありますが、読んだ事のない作家さんで知りませんでした。
枕元にある積読本が少し解消した段階で、読んでみたいです♪ TBも合わせてどうも有り難うございました。