2005年12月10日

「酒の肴・抱樽酒話」青木 正児 岩波書店

高田馬場の古書店で早稲田中学の除籍図書として50円で売っていた一冊。暇つぶしに読み捨てられればと安易な気持ちで買ったものだが、どうして&どうして、中身のある一冊でした。

最近、TVでやっているくだらないグルメ番組には正直飽き飽きしていたし、おいしんぼ系のウンチクもいささか鼻につき、かえっていやらしさを感じる昨今、是非とも酒を愛し、酒の肴を愛す、硬派の士人諸君には読んでもらいたい一冊! 思いっきり俗物で軟派な私が言うのでは信憑性が薄いかもしれませんが、これは酒飲みとして、読んでおいていい嗜みとも言うべき本かとも思う。

最近では、めっきり評価されないものタイプ教養あふれる文章。著者が漢文学系の学者さんというのでそれも納得だが、土地土地の酒の肴を紹介したりしながらも、それをはるか中国の古典籍に由来を遡りつつ、評論していくのがなんとも愉快。塩、鮒寿司、河豚、蟹、酒盗などなど。詳しい作り方や、古の製造法。それにまつわる漢詩なども豊富で、実に楽しいんだなあ~。ただ酒を飲みゃあいいってなもんでもないことを改めて思い知らさせる。

やっぱ、酒は人生の友でしょう。昨日は酒飲んで電車を乗り過ごし、終電がなくなったのでタクシーに乗る羽目になり、3000円も無駄に金を払って泣きそうになりましたが(本が買えたのに・・・)、それでも酒無しにはいられません。悪友と飲むも良し、綺麗な女性に囲まれて飲むのも良し、一人で画集を眺めつつ、飲むのも良しです(満面の笑み)。

話は変わるけど、鮒寿司って下にしいてあるご飯は腐ってしまうので食べないんだってこと、本書を読んで初めて知りました。江戸前の寿司のように、お手軽さがウリの寿司ではなく、本当に発酵させたなれ鮓なのは知っていましたが、食べたことないんですよねぇ~。ダチョウやワニは食べたけど、こういうの食べてみないと!!

この本を読んでふと金沢で食べたかぶら寿司を思い出しました。酒糟に魚を挟んで発酵させたもので私にはすっごく美味しくてお土産にも買ったけど、自宅では独特の匂いと味に両親がパスして一人で酒の肴として食したことを思い出してしまいました。あれに近いのかな?ごり料理も良かった!

ちょっと話が脱線してますが、古代中国での酒にまつわる話などが本書では随所に触れられていて、本当にお薦め。但し、漢文とかの素養というかその手のに関心がある人でないと十分に楽しめないかもしれないです。良くも悪くも、趣味人の通好みのお話かな。

酒を愛し、芸術を愛し、人生を愛する方には是非どうぞ!

そうそう、決して金をかけて高ければ、珍しければそれで良いというような安っぽいことは言わない一方で、古来より美食にかけては、本当に厳選されたごく一部以外全ての食材をゴミとしてしまうような美食の話も出てきて、スケールが非常に大きいのもまた素晴らしい。古代ローマの饗宴サテュリコンを思い出してしまったくらい。読まねば~♪

あっ、絶版みたいです。どっかで見つけて下さいませ。

酒の肴・抱樽酒話(amazonリンク)

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posted by alice-room at 00:27| 埼玉 ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさん、こんばんは
半分言いがかりみたいなものですが、酒つながりということでTBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
面白そうな本ですね!鮒寿司は、もちろん、ダチョウやワニも食べたことがありません。グルメではないのですが、このような本は好きです。(笑)
Posted by lapis at 2005年12月10日 01:19
グルメとは通常の食に飽き足らず、珍味をひたすらに求め、悪食(あくじき)に限りなく近づいていく業の深い人間の性(さが)なのかもしれませんね。
私はそこまで業の深い人間ではありませんが、本としてはとっても楽しいと思います。どっかで見かけましたら、是非手に取ってご覧下さい。まさにlapisさん向きのような気がしました(笑顔)。
Posted by alice-room at 2005年12月10日 22:31
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