2008年08月21日

「週刊 金融財政事情 2008年7月7日号」

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暇つぶしに会社にあった雑誌を眺めてみたら、ちょっと面白い記事を見つけた。『中小企業向けスコアリング貸出の失敗に学ぶ』というもの。

それなりの期間、通販会社で販促企画や顧客管理をやってきた私にとっては、あれだけ金と人と時間という資源に恵まれた金融機関では、当然とっくの昔に活用され、当たり前のツールだと思ってたのですが、違っていたようです。

やっぱり規制に守られていた金融機関って、『ゆとり』世代だねぇ~(笑)。昔GE capitalで面接を受けた時に与信管理で経験を生かしてみないか・・・的なお話を頂いたことがあったが、今になってようやくその意味が分かった私も、結構間抜けなんだけどね(自爆)。

まあ、それはおいといて。
今回の記事では、東京都が税金を浪費して大問題になった官業銀行の最低レベルの新銀行東京(だったっけ?)の失敗について書かれていて興味深い!

モデル作成時にサンプルを取った時と前提となる経済状況が異なっている点や、他の銀行が融資を断ったところがそもそも審査の対象となっている点で負のバイアスがかかった集団への融資となり、ここでも前提条件が違ってしまっている点などの指摘には、なるほど・・・と頷かされる。

また、融資担当者への誤ったインセンティブの与え方で、本来はデフォルトしない企業に融資した割合など当然考慮されるべき要素が一切無視され、単なる貸出金額だけが基準となった為、融資を受ける企業と担当者の悪意による共謀(そこまではいかなくても、あえてマイナス面を無視して融資)などがまかり通っていたことが指摘されている。

十分な監査などもなされない中小企業故、財務情報の粉飾等についても指摘されている。まさに、もっともな話だ。

実は、なんでそこまで石原氏主導の銀行が税金の浪費を今もなお進めているのか不思議に思っていたのですが、本論を読んで納得がいきました。然るべくして、駄目な銀行だったわけです。

もっとも、民間の金融機関ならば、そんな状況が生じてもすぐに問題が顕在化し、早期に軌道修正也、貸し出し手法の停止也が行われたでしょうが、お上のやる事は怖いですね。みんな見てみぬフリか、あるいは本当に気付かないほど駄目駄目だったのか・・・まあ、どちらか知りませんが、公共事業と相通ずるものを感じずにはいられません(涙)。

久しぶりに面白かったです(笑顔)。

でもって、もっと知りたいなあ~と思って探してたら、以下に上記の内容を更に詳しくしたものを発見! 無料のpdfとして読めるので一読をお薦めします。

そちらの方が、雑誌の記事よりきちんとモデルも提示されており、勉強になります。

クレジット・スコアリングと金融機関経営~日本経済研究センター~
クレジット・スコアリングと金融機関経営
―第1世代の中小企業信用リスク計測モデルを用いた検証

【要旨】
本稿では、この数年で急速に一般化してきたスコアリング貸出の定量的な情報を用いて、金融機関経営とスコアリング貸出市場の今後の拡大の可能性について検証する。金融機関の貸出行動をモデル化し、Moody’s モデルを使った貸出のシミュレーションを行ってみると、単独の財務指標に頼って貸出の可否を判断するよりも、高い収益性を実現することが確認される。

 ただし、個々の企業レベルでみると、高いスコアを得ていた企業がデフォルトしたケースも少なからず存在している。この事実は、スコアリング貸出を小口分散化させ、スコアリング貸出債権を一つのポートフォリオとみなすべきであることを示唆する。

 モデルの特徴に関してもいくつかの検証を行うと、説明力の高い変数へのモデル内でのウエイトが不十分である可能性が示唆された。そして、財務諸表の信頼性が、スコアの精度を押し下げているインパクトも、無視し得ない。審査コストの削減はモデル適用の大きな利点であるといわれるものの、スコアリング貸出をより採算のとれるビジネスにするためには、小野[2007] が指摘するように、事前の面談やモニタリングなどのコスト負担は避けられない。
しかしさあ~、この手の手法は、理論的には相当前からあったわけで、それなのに、未だに十分なデータの蓄積がなされず、実際に運用して改善したモデルの構築などがされていないのって、怠慢のような気がしてならないのですが・・・。

通販会社に限らず、他の業種でもたくさん使用されているはずで、それらの実例を貪欲に漁って、流用できるところは、流用してもいいと思うのだけれど・・・。日本の金融が地に落ちたのも、むべなるかな・・・ですね。ふむふむ。
【目次】
特集 政策金融改革へのカウントダウン
日本政策金融公庫は縦割り・民業圧迫懸念を払拭できるか
地方公営企業等金融機構のリスクウェートは10%で変わらずか
新・政投銀のビジネスモデル
日本政策投資銀行・室伏稔総裁に聞く
〈商工組合中央金庫〉完全民営化後も株主資格制限付きメンバーシップ制を維持

ワンポイント・レク:
資源・食糧価格の高騰はどういうプロセスで日本に影響を及ぼしますか?

論考:
中小企業向けスコアリング貸出の失敗に学ぶ 法政大学 平田 英明
銀行ALMを抜本的に改革せよ 

解説:
15年変動利付国債の価格付けを考える
オペリスク管理高度化に向けた外部データの活用

ゲーデルの貨幣 ―自由と文明の未来―(10)
<自由篇> 半世紀周期で循環する格差

営業店コーナー:
上川徹のゲーム・コントロール術(6)
笛を吹くのはみえたものだけ
私の支店経営論
山口銀行 矢儀 一仁氏の巻(上)
支店長室のウラ・オモテ
<信用金庫編> 顧客接点を深める
地域金融マーケティング 事始め(6)
安売りよ、さようなら
現場で伸ばそうCS力(12)完
サービスの「目的」を意識する

■時論
地方分権こそが日本の生きる道

■視角
社長直轄マーケティング部署の設置を(信託銀行)

■豆電球
消費者金融ばかりが犯行動機か

■オンレコオフレコ
市場に押されて? ムーディーズが国債格上げ

■新聞の盲点
7年ぶり普通社債デフォルト
スルガコーポレーション民事再生の波紋

■NEWS SQUARE
地銀協、指定金担保制度の見直しを要望へ
金融庁、海外ファンドの「独立代理人」の定義を明確化
貸金業協会員の3割が財産的要件を満たさず

■マーケットを読む
私はこうみる
資源・食糧高騰による損失で生産増でも所得は減少へ

■書評
『世界のプライベート・バンキング [入門] 』 米田 隆 著
ピクテファイナンシャルマネジメントコンサルタント 湯河 元恭
『雇用,利子および貨幣の一般理論』 J.M.ケインズ 著/間宮陽介 訳
佐賀大学 米倉 茂
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「まぐれ」ナシーム・ニコラス・タレブ ダイヤモンド社
posted by alice-room at 22:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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