
私が初めて『セレンディピティ』という言葉を知ったのは、今も大いに影響を受けている羽根拓也氏の講習を受けた時のことです。知らぬ間にいろいろな本が出ていたんですね。
本書は、まさに『セレンディピティ』一点に絞って、その内容と具体的、且つ応用範囲の広い事例で大変分かり易く紹介されています。
ポストイットやトヨタ生産方式など、非常に有名で知っている事例も多いのですが、小柴さんのカミオカンデ、そこに至るまでの非凡な行動力までは知らなかったのでちょっと感動しちゃいました。情熱とそれが支える行動こそが、幸運な偶然を引き寄せるというのは、納得です!!
セレンディピティ自体をご存知でない方には大変良い入門書となるでしょうし、知っている方でもそれを更に掘り下げて構成要素レベルまで還元して応用水準を広げているので、本書は十分に読む価値があると思います。
昨今のビジネス書にありがちな大きな活字でスペースが多い体裁ですので、1時間もかけずに読破できます。しかし、ここから汲み取ったポイントを本当に生かすことができれば、大いに得るところのある本だと思いました。
以下、読書メモ。
セレンディピティ:メーカーあるいは技術者の発想は、得てして独り善がりになり易い。技術的に水準が高いことがマーケティング的に価値が高い事には繋がらない。私の経験で言えば、通販会社で商品コピーを書く際には、その商品を使った時、消費者にとってどんな価値があるか、その価値をピンポイントで絞り、それを効果的に伝える言葉(=イメージできる単語)を厳選する。そのプロセスに重なると思った。
偶然を捉えて幸運に変える力
セレンディピティを遠ざける「玄人発想」
《前提条件まで含めた》過去の経験の知識化がされていないと、発想の芽を摘んでしまう場合が往々にしてある
「素人発想」プラス「玄人実行」が有効
既存の枠に囚われず、自由な発想が大切だが、生まれたものを形にするには、実現に向けた徹底した執念・情熱とその為の適切な行動がなければ、単なる『思い付き』で終わってしまう。
偶然のひらめきをモノにするためには、まず専門的な言い回しを、具体的な顧客の言葉に翻訳することから始めてください。顧客が正しく理解できて、初めて偶然が偶然でなくなり、成功への道筋がつながるのです。
【アイデア作成の原理と方法】(「アイデアの作り方」ジェームズ・W・ヤング)本文中では「小人さんが来た」という表現があるが、誰でも経験があるのではないだろうか? 一生懸命仕事をしている人ならば、誰でも。私もたびたび経験した覚えがある。夢の中や電車の中でぼお~っとしていてふと思い付く時が多いかも?
原理Ⅰ
アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない
原理Ⅱ
既存の要素組み合わせて新しいアイデアを生む才能は、物事の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きい
STEP①情報の収集(得ようとする特定情報&すぐに必要でない一般情報)
STEP②集めた情報を頭の中で咀嚼する
STEP③問題を放棄する=無意識化での作業
STEP④ふとしたきっかけでアイデアが生まれる
STEP⑤論理的な思考を駆使してアイデアを育てる=玄人実行
ある処理をさせたい時にどうしてもうまくいかず、しばしば行き詰る事がある。そういう時は、しばらくアレコレ試行錯誤しても駄目だったら、一旦やめてしまうのが良い!
別なできる部分だけ先にプログラムを書くとか、全く違う仕事をしたりしていると、ふっとアイデアが湧く。すると、どうやっても出来なかった処理が一瞬にして解決するんだからなあ~。この瞬間がたまらなく嬉しいし、楽しい♪
顧客の購買履歴データベースで分析をしていて、ふっと思い付いた手法を試してみる。すると・・・非常に高レスポンスの顧客を効果的に選別できたりする。で、次回の販促企画に反映し、その結果が予想通りになる。これも同様の高揚感を与えてくれる仕事だよねぇ~。
まあ、私の場合は大きな成功には繋がっていませんが、とりあえず身近な範囲では結構評判いいですし、まずは地道に経験値を上げていきたいですね! 将来の大きな飛躍へつなげる為にもネ!
そうそう、巻末の参考文献が結構、有用です。忘れないようにメモっと。
エヴァン・I・シュワルツ 「発明家たちの思考回路」ランダムハウス講談社
金出武雄「素人のように考え、玄人として実行する」PHP研究所
マークブキャナン「複雑な世界、単純な法則」草思社
【目次】成功者の絶対法則 セレンディピティ(amazonリンク)
1章 「セレンディピティ」って何だろう?
2章 誰にも訪れる「セレンディピティ」
3章 「無関係なもの」を関連づけてみる
4章 「素人発想」プラス「玄人実行」が有効
5章 「想定外」を考えておくことの重要性
6章 「偶然のひらめき」が生まれる瞬間
7章 「論理的思考」とセレンディピティ
8章 セレンディピティが訪れる組織
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「PRESIDENT (プレジデント) 2007年 3/19号」プレジデント社