2008年09月20日

「生き残った帝国ビザンティン」井上浩一 講談社

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ローマ帝国大好き&聖遺物大好き&キリスト教美術関心有り、の私であるので読んで当然の本と思い、読み始めました。

初めて知る事も確かに多かったのですが、『通史』であるが故に、どうしても物足りなさが残るのも事実です。個人的に大変関心があった聖遺物については、聖遺物の宝庫であった都市にもかかわらず、言及が全然足りないし、キリスト教図像学的にも多大な影響を及ぼした(by エミール・マール氏の著作)聖像破壊運動やローマ法の維持・整備などの点への言及もちょっとねぇ~。

紙面の制約を考慮しても、もう少しなんとかして欲しいでしょう!! というのが私の感想でした。

読み易いのはいいのですが、歴史的事件の生々しさが全然伝わらず、臨場感に欠け、心を動かされる場面が大変少ない。教科書的過ぎて、そんなもんじゃないでしょ、とか絶叫したくなった。

まあ、安手のTVでもあるまいし、ドラマチックに仕立てれば良い訳ではないが、歴史の面白さや多方面に渡るビザンティン帝国の影響を十分に解説、紹介しているとは言い難いように感じた。不満足。

面白い歴史を読みたい人、ポイントを絞ってビザンティン帝国の歴史上果たした役割を知りたい人には、お薦めしません。悪い本ではないんですが、なんかどっちつかずで物足りなくてしかたありませんでした。

しかし、建前のローマ帝国を最後の最後まで意識の中で保持しつつ、徹底した実力主義で皇帝の地位にも、一介の農民から出世して成り得たことなど、全く知らなかったことも書かれていました。

他にも帝国のノミスマ金貨が国際通貨として流通していたが、財政悪化の際に、金の含有率を落とす改鋳を行った結果、信用を失い、ますます財政悪化を進ませることになったとか。

財政赤字の穴埋めに官位売買を積極的に行っていたことなどが説明されています。

読んでいて私が強く感じたのは、本家のローマ帝国もそうでしたが、ビザンティン帝国も初期においては、兵役を負担しうる自立した農民市民が軍の主役として活躍していたのにもかかわらず、晩年に至ると、社会の階層分化で兵役を負担できず、結果的に傭兵に委ねられて没落する、この過程は普遍だということでした。

必ずしも兵役の負担だけではありませんが、税負担に耐え得る良質な市民層の存在が国家の存続に必要不可欠であることを痛感しますね。日本史を学んでも、農民が逃げてしまったりして、土地が荒廃してしまった時代の政権は、潰れますもんね。興味深いです。日本が現在の政権を維持できるのは歴史的に見てあとどれくらいなんでしょう?

そういう見方で新聞読むと面白いです♪(ひとごとならね)
ギリシアの火:
生石灰・松脂・精製油・硫黄などの混合物で、液体状のもの。ポンプによって筒から発射され、火を噴きながら飛ぶ。
火は水をかけても消えず、かえって燃え広がり、海戦で効果的だった。
<コンスタンティノープル建設の伝説>
1、コンスタンティヌスが都の建設を始めたのは、ボスフォロス海峡のアジア側に位置するカルケドンであった。その建設工事中に山から鷲が飛んできて、工事道具や材料をつかみ上げると、対岸のビザンティオンへ運んでいった、という。

2、コンスタンティヌスは夢の中で皺だらけの老婆にあった。その老婆は突然若く、美しい乙女に変身した。不思議な夢をみたと戸惑っていた彼の夢枕に、数日後ローマ教皇故シルヴェステルがあらわれ、その女はビザンティオンの町であって、コンスタンティヌスによって若返らせてもらいたいと言っているのだと説明した。

3、コンスタンティノープルの町の城壁をここに築くようにと、コンスタンティヌスは自ら槍をもって地面に線を引いていった。あまりにも長い城壁となるのに驚いた従者が、どこまでゆくのですかと尋ねたところ、皇帝は「私の前を歩いておられる御方が止まれと命令されるまでゆくのだ」と答えた。
【目次】
プロローグ―奇跡の一千年
第1章 ローマ皇帝の改宗
第2章 「新しいローマ」の登場
第3章 「パンとサーカス」の終焉
第4章 栄光のコンスタンティノープル
第5章 苦悩する帝国
第6章 ビザンティン帝国の落日
エピローグ―一千年を支えた理念
生き残った帝国ビザンティン (講談社学術文庫)(amazonリンク)

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「コンスタンチノープル征服記」ジョフロワ・ド ヴィルアルドゥワン 講談社
「イスタンブールの大聖堂」浅野 和生 中央公論新社
posted by alice-room at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史B】 | 更新情報をチェックする
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