2008年09月27日

「神君家康の誕生」曽根原理 吉川弘文館

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こないだ久しぶりに日光東照宮に行ってきたので、ふと目についた本。
いわゆるカラーバス効果でしょうか?(笑) でも、読んで正解! 知らない事が実にたくさんありました。

川越の喜多院や仙波東照宮、寛永寺なども時々行くものの、それらの占めた役割や歴史的経緯など目からウロコのものがいっぱいありました。楽しいなあ~♪

天海って、喜多院にいたんですねぇ~。それが江戸から遠いからと寛永寺に呼び寄せられて・・・というのは、新鮮な驚きでした。だから、川越って江戸との関係が深いんですね(春日局はおいといて)。あるいは、深いからこそ川越にいたってのもありでしょうが、納得です。

それと・・・
かつての歴史の授業で習った記憶だと、天皇制との関わりから言うと、江戸幕府が政権を担う正当性の根拠として天皇から委任されたと江戸時代当初は説明されていたのものが、幕末には、天皇から委任されたのだから、本来のところに戻すのが正統だと逆に江戸幕府からの政権奪取の理論に用いられたというのがありました。

本書を読んでいて、その辺の記憶がふと浮かびました。本書では、豊臣から徳川家への政権移行を正当化する根拠(『天道』)と、徳川家内での血筋による世襲の政権維持の根拠といったある意味矛盾する論理を整合しようとする点を説明しています。
天道思想:
主宰者として天を把握する点は共通するものの、宗学が天を非人格的な存在とみなすのと異なり、天道思想においては、天は自らの意思を持ち、人間に道徳的行為を要求する。
天道は、儒教の徳治主義の立場を基本とする為、徳を欠く上位者の打倒を正当化する一方で、自らが、または子孫が徳を欠いた場合、より道徳性を持つ下位者に打倒される道を用意しているのである。それ故、政権を握った者は、獲得した時とは異なる、血統を要件として人格神という根拠を必要とする。
また、家康を桓武天皇の、天海を最澄の再誕とみなす主張というのも興味深いです。
日吉山王権現が人々を救済するため、東照権現として再び現われました。それにあわせて、天台宗の祖師である最澄も、末世の人々を救うため天海大僧正の姿となられたのです。
~叡山文庫本『東照宮堅義表白』

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以下の東照宮の彫刻について。

龍は中国では皇帝を現す動物で、その彫刻はもっとも格の高い箇所に置かれるが。東照宮では、トラが中央に置かれ、龍はその左右に配置されて次の位置である。その理由は家康が虎年生まれで、家光が辰年生まれだからって。
権現様が生前に仰っていたのは、自分は虎年、秀忠は卯年、家光は辰年の生まれであるから、もし家光が辰年に嫡男をもうけ、その子に天下を譲れば、徳川家は代々天下を保つことができるであろう、とのことでした。~英勝院書状
「眠り猫」
猫の裏側に雀の彫刻があり、それと組にして解釈する。
猫が眠り、弱い雀も安心して暮らせるという寓意。猫が寝ているのは、ネズミ(世を乱す悪者)がいなことを示し、その平和をもたらしたのが、家康ということだそうです。

陽明門の「唐子遊び」の彫刻。
二十人の子供たちが、安心して遊んだり勉強したりしている彫刻は、天下泰平となったことを示す共に、そうした社会が理想であることをも示している。

その中でもっとも重要な正面中央の彫刻は「司馬温公の瓶割り」を主題とする。水瓶に落ちた友人を助ける為、大切な瓶を割ったという故事で、物よりも人命が重要である事を示す。

唐門の正面には、「許由(きょうゆう)と巣父(そうほ)」、その下に「舜(しゅん)帝朝見の儀」の彫刻。

中国古代の聖王「堯(ぎょう)」が自分の子ではなく徳のある人物を後継者とするため、まず許由、次に巣父に政権移譲を頼んだが断られ、舜にも一旦は拒まれた、という故事を踏まえたものだそうです。

能力の有る者に政権を譲る(禅譲)こそが、政権交代の理想と示しながら、家康は舜に比すべき聖人であり、徳川家は豊臣家を一方的に滅ぼしたのではなく、基本は禅譲であったという公式見解も示しているだって。

日光に行ったきたばかりなので、家康が何故『神』として祭られねばならなかったのか、その理由と必然性が分かり、大変面白い本でした。歴史好きなら、読む価値がある本だと思います。

一般向きの本ですので、結構読み易いし、お薦めです。まあ、一部、王権論は、個人的に興味が無いし、どうでも良かったのですが、天台宗の本覚思想(徹底的に現実肯定的であり、一部は現世の実力者へ媚売りまくり?!)など、大変勉強になりました。

凡夫の私と致しましては、やっぱり現世利益を追求して参りたいですね!(笑顔)
【目次】
人が神になること―プロローグ

神格化の時代
  天下人と神格化/豊臣秀吉の神格化/天道思想と戦国武将たち

徳川家康と天海
  家康と天海/家康晩年の御前論義/家康死後の動向

徳川家光と天海
  家光と宗教/『東照社縁起』の基礎知識/天海撰『東照社縁起』を読む/『東照社縁起』の広がり

東照宮信仰の展開
  浄土系徳川神話の形成/家康像の作成/東照宮信仰の諸相/神君家康

神を作り出したもの―エピローグ
神君家康の誕生―東照宮と権現様 (歴史文化ライブラリー (256))(amazonリンク)

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posted by alice-room at 07:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史B】 | 更新情報をチェックする
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