
山海塾 公式サイト
山海塾「時のなかの時-とき」ダイジェスト映像
先週の『とばり』に引き続いて今週の土曜日(10月11日)も観てきました。2週続きの山海塾です。
この場所で山海塾を観るのは、もう4、5回目だろうか? 数年振りに観てもやはり常に感動を与えてくれるのはさすがという他無い。
「静」と「動」の狭間、静寂の中で表現される脈動感(躍動感ではない!)。人間の肉体がこれほど、表現の『道具』であることを感じたことはなかった。
人は考える葦にあらず、表現のツールではないかと思わず、浮かんだ。
しかし、いつも思うだが、山海塾の舞台道具は決してお金のかかったものでもないし、凝ったものでもない。常にシンプルだ。でも、それが生み出す演出的効果は、想像を絶する! 素人の私がこれほど驚愕するのだから、舞台関係者はもっと刺激を受けるだろう・・・と愚考しちゃうね。ホント。
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【以下、舞台を観たうえでお読み下さい。初見前なら、せっかくの感動を損なう情報が含まれます・・・】
私がまず一番驚いたのは、シーツの端を持ち上げる演出。本当にたった、たったあれだけの事で私は観に来て正解だと確信しました!! 表面的には緩慢な、実は、力を充溢させた動きと相俟って、心が、いや全身が惹き付けられてしまうのですよ~。
呼吸さえ止まってしまう集中力を演者ではなく、観客が持ってしまうあの間、あの空間。他ではまさに味わえない山海塾の魅力、個性でしょう。
一人の人がシンプルな跳躍を続ける、あれってよほどの修練を積んでいないとできないんではないでしょうか? 他の動きもそうですが、ゆっくりと力を溜めつつ、エネルギーをじわりとにじむように表現する、どれほどの基礎訓練をやられているのだろうと思わずにいられませんね。
山海塾で表現される動き、姿勢は一瞬間なら、人間であれば誰でもできそうなのですが、それを継続し、しかも語らずして観るものに何かしら熱いモノを伝える、というのは本当に非凡なことだと思います。
理屈ではなく、観ていて、必ず全身に伝わるものがあります。自分でもよく分かりませんが、興奮したせいか目頭が熱くなっていたこともありました。
そして、そして、あのリング。
リング自体が動くのではなく、棒が出し入れされるだけ。そういってしまえば一言で済む、あれがどれほど観ている人に深く、しっかりと心に食い込んでくることか・・・。演者の動きと相俟って、完全に空間を構成する要素になっているんですね。
出し入れする動きに、ふと『とき』の進行状況を現すプログレス・バーをイメージした私って職業病かな?(笑)
そうそう、モノリスの如く立つ黒い物体。あれが少し傾く。それだけのことなのに・・・いかに空間的に変化していくことか! 演者の動きとの相乗効果、観客のピーンと張り詰めた緊張感、まさに魂消(たまげ)たと言えるのではないでしょうか。意識はあるものの脱魂状態で視線だけが釘付けです。
人とという肉体を通して表現される【モノ】、【脈動】といった【何か】を頭ではなく全身の身体で受容する、そ~んな体験です。エンターテイメントを期待すると期待外れです。そもそもモノが違う。でも、絶対に何かを感じられる価値ある舞台、舞踏、全てですね。
万人向きではありませんが、ある意味分かる人、感じられる人には、絶対に行くべき作品ですね。キャロットタワーでは、今日が最終日ですが、まだまだ全国でやるそうですよ~。
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ここで先週見た『とばり』について。
日経でも好意的な文面をちらほら見た。私も先行予約で本来ならば、相当良い席であろう場所をおさえ、観に行った。しかし、今まで見たS席の中では、最低でほとんど舞台が見れない場所だった。見切れのあるC席で見たこともあるが、あちらの方がはるかに良い。
絶対にS席としては、販売してはいけない席であろう。同席していたツレは全く舞台が見れず、激怒していたのは当然だ!!
彩の国の蜷川氏と天児氏の対談も観ていて、私ともども非常に楽しみにしていたし、対談後の質問で私も直接天児氏に今回のとばりについて見所を聞いていただけにショックが非常に大きかった(号泣&噴飯ものだ)。
ただ、観終わってから、あまりにも酷かったので今後のこともあるし、製作の担当者の方へ状況を伝えた。真摯に問題点を認め、今後は座席について再検討して対処したいとおっしゃられていたので、今後の山海塾には強く期待したい!!
せっかくの舞台です。金は高くてもいいんですが(払える程度なら)、観た人が喜ぶものにして欲しいです。山海塾のファンとして、ファンを裏切らないことは、実際の舞台と同様に大切だと思いました。基本中の基本ですからね!
う~、しかし、とばりは観れなくてストレスが・・・。観たい!観たいよ~!(涙)
今度の再演っていつ? 今度、フランスまで行って観て来ようかな?
『とき』が良かっただけに、『とばり』が観れなかったことが残念で堪らない私でした。悔しくて、ついDVD買っちゃったけどね。
でも、舞台は舞踏は、やっぱり生でしょ、ライブだよねぇ~!!
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