
そして中を読んでみると、おまけ的なものと全然期待していなかったはずの文章が実にイイ!非信者としてまた一人のジャーナリストとして淡々とした語り口ながら、必要以上に偏らず、事実を並べてながら紹介していくこの文章には、非常に好感を覚えた。
以前、法王を扱ったNHKを見た時にもその真摯な姿勢と現実に行動する姿には、かなり胸を熱くした覚えがあるが、その時には知らなかった事実もこの本で知り、再び感動した。どんな人であっても賛否両論があり、まして行動する人物には当然批判もつきものだが、それらを考慮してもやはり亡くなられたヨハネ・パウロ2世は、ひとかどの人物であったと思う。いろんな意味で影響力をもった偉人の一人であったと感じた。
野暮ったいようであまり口にしたくはないのだが、苦労をしてもそれにくじけることなく、正面から立ち向かってきた人のみが有する人間としてのギリギリの強さを持っているのではと感じた。率直に、そういった生き方に対して強烈な憧れを覚える。と同時に、憧れだけでそれを実行にうつせていない自分に対するもどかしさも強く実感させられた。
信念、それは行動によって生かされ、行動の伴わない思いは信念になり得ない。
いろいろと考えさせられる本であった。と、同時にいささかの懐疑も浮かんだ。確かにこの本では私も知っている限りでは事実が述べられている。但し、それは別な意味でいうと都合のいい事実であり、宗教が現実社会において行動する時に政治的なものから無縁ということはありえない。バチカンが抱えるとされる資金問題(バチカン銀行等々)など、闇に隠れた部分に関しては一切触れられていない。もっとも著者もその点ははっきりと自覚があるようで、そういった問題に触れられていない点を自分で書かれていたのは、逆に良心的とも言えるかもしれない。
本書は非常に興味深く、読んで正解だと思うが、ここに書かれていることだけが全てだと思うのはあまりに軽率であり、また短慮のそしりを免れ得ないだろう。奥歯に物がはさまったような言い方しか出来ないのは残念だが複数の情報ソースを持つ、その為の一つとしては有用です。素直に感動するのは感動しても、どこかで冷ややかにそれを見つめる自分がいないとバランスを失うかも? う~ん、うまく言えませんが良い本であり、写真もGOODです。他の本とも比較して読んでみるのも良いかもしれません。
ヴァチカン―ローマ法王、祈りの時(amazonリンク)
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ところで、ヨハネ・パウロ2世が亡くなれる2ヶ月ほど前に少女時代にあのファチマで聖母マリアの出現を受けたルチア修道女が98歳でなくなられました。ファチマの聖母マリアとヨハネ・パウロ2世はとても密接なつながりがあるだけに、聖母マリアに選ばれた人が次々と召されていく昨今の状況にいよいよ世も末だなあという印象をもたざるを得ません。
おまけに・・・わたしのオススメとして、奇跡の聖地ルルド(講談社)と10人の聖なる人々(学研)があります。よかったら読んでみてください。さわやかな気分になりたいときにどうぞ。
ファティマの聖母により、暗殺を免れたというのも確かに現代の奇跡なのかもしれませんし、実に浅からぬつながりですね。仰られるとおり。
お薦め本、今度探してみます。面白そうですね。情報有り難うございました(笑顔)。