2008年11月15日

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」細谷功 東洋経済新報社

少し前に流行った本です。全体から、結論から、合目的的に論理展開し、物事を効率的に思考する。それ自体は正論だし、非常に素晴らしいのですが、やっぱりなんだかなあ~?という感じがしてなりません。

あくまでも個人レベルで思考するならば、確かに効果的な思考方法なのですが、料金だけ高くて一見すると素敵な業務改善案なのですが、実際に実践しようとするとえてして現場に混乱ばかりを引き起こし、かえって企業活力を削ぐコンサルティング・ファームの人の考え方、という感じなんですよ~。

かつて自動車メーカーの中で一番グローバル化が進んでおり、社内にMBAホルダーを何人も抱えた日産が、駄目になったのは、まさにこの思考方法だと思うんですが・・・。

逆にあくまでも自己流(ローカル・ルール)を貫き通し、世界に広がるトヨタとの違いは、はてさて?

そもそも組織の有する最大の利点とは、多種多様な思考をする人々が存在し、それらの中でアイデアがブラッシュ・アップされ、進化していくことだと思うのですが、本書では最初から最後まで自分一人の視点であり、その枠組み内でしか論理展開されません。実にもったいないなあ~。

「TOYOTA WAY」で語られる『現場』や『改善』といった地に足をついた視点ではありません。勿論、上からの視点と下からの視点が相俟って初めて真の価値が生まれるのですが、想像以上に視野が狭いという印象を受けました。

確かに本書で語られる概算的な数値で本質的なものを捉えようとする、問題解決手法は、有用だし、普通にビジネスをしていれば、絶対に使っているはずのことです。意識している、していないは別にして私も当然、心当たりがありました。

ただ、本書を読んでいて最初に「おかしいな?」を思ったのは、私だったらもっとも大切だと思い、一番最初に確認するはずの「明確な目的」の設定がないままに、いきなり現象としての問題が設定されているところが納得いきませんでした。

電柱の数を数えるのを思考実験として、問題にするのはいいのですが、それはそもそも何の為にその数字が必要なのかが、本書では一切触れられていません。

例えば、日本中の空から電線をなくすために数を知りたいのか? 電力会社の設備投資の費用の一要素を知るためのものなのか? 電柱に張る広告数を知るためなのか? 目的によって、設問自体の解釈・捉え方が影響を受けるし、目的に適した仮説を作る必要があるはずですが、本書は相当一方的に、あくまでも思考実験だから、ネットで調べちゃ駄目とか、実際のサンプルを調べては駄目とか制約条件をやみくもにつけているだけで、他方、必要な条件が明示されていない。

正直、フェアな条件ではない中で自分の主張をしたいが為に無理矢理例題を作っている違和感を覚える。

個人的には思考実験をするぐらいなら、哲学の方がはるかに純粋に論理的思考訓練に役立つような気がするし、現実的な制約下での論理的な思考の限界と妥協を考えるなら法律学の勉強とかの方がずっといいような気がします。

理論は確かに面白いけど、企業活動においては、それが実行に移されて利益という形で実現化して初めて価値を持つものであり、会社によくいる口先だけの存在と紙一重になっているような・・・???

以上、いささか否定的な感想を書きましたが、おそらくコンサルティング会社等では常識的な思考方法みたいです。好例として昨今人気の勝間氏の著者によく出てきてる内容に非常に共通する点がありました。フレームワーク思考とか、MECE(mutually exclusive collectively exhaustive)とかね。参考になることも多々あります。
(章毎にまとめがあり、何気によく整理されていて学び易いのも良い点だと思います)

ふと思ったんですが、これってプログラム作るのと一緒ですね。取り得る限りの全てのパターンを網羅し(考慮し)、それぞれに対して処理が完了するように作らないと、ループしたり、エラーを表示して処理が完了しませんから!

そういう意味では、常に全体から考える俯瞰的な視点無しで書かれたプログラムなんてゴミだもんなあ~。昨日も全てのパターンをつぶすのにえらく苦心してた私なんで、ふと納得しちゃいました。

(もっとも、作り始めは個々のパーツに分解して、それぞれのパーツが正常に動く事を確認してから、全体へと組み上げるのが間違いが少なくて仕事が速いんだけどね。その一方で、パーツ部分を作成しているその段階でも、全体からの視点を意識してるのとしてないのでは、最終段階でも完成度が全然違ってくるんだけど・・・。常に全体と部分のバランスが大切なのでしょう!!)

以下、個人的覚え書き:
地頭力とは「考える力」の基礎となるもの。3つの思考力(仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力)とその土台になる3つの力(論理思考力、直観力、知的好奇心)から構成される。
  仮説思考力―『結論から』考える力
  フレームワーク思考力―『全体から』考える力
  抽象化思考力―『単純に』考える力

地頭力とは考えるプロセスと習慣であり、経営者の視点でもある

フェルミ推定とは、つかみどころのない物理量を短時間で概算することで、問題解決の縮図として応用しやすいツール。

仮説思考のポイント
1)少ない情報から仮説を構築する姿勢
2)前提条件を設定して先に進む力
3)時間を決めて結論を出す力

仮説思考とは、
①手元にある情報だけで最も可能性の高い結論(仮説)を想定し、
②常にそれを最終目的地として強く意識して
③情報の精度を上げながら検証を繰り返して仮説を修正しつつ、最終結論に至る思考パターン
・・・【最終目的地から逆算して考える】
    例:「できることからでなく、やるべきことから」

抽象化の基本プロセスは
 ①抽象化
 ②解法の適用
 ③再具体化の3ステップ

抽象化思考力のポイント
 ①モデル化
 ②その為の枝葉の切捨て
 ③アナロジー
【目次】
第1章「地頭力」とは何か
第2章「フェルミ推定」とは何か
第3章フェルミ推定でどうやって地頭力を鍛えるか
第4章フェルミ推定をビジネスにどう応用するか
第5章「結論から考える」仮設思考力
第6章「全体から考える」フレームワーク思考力
第7章「単純に考える」抽象化思考力
第8章地頭力のベース
第9章さらに地頭力を鍛えるために
地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」(amazonリンク)

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posted by alice-room at 09:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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