2008年11月10日

「きみとぼくが壊した世界」西尾維新 講談社

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病院坂黒猫さんが恋しくて、愛しくて、ついつい読んでしまった作品です。

思いっきりネタバレになってしまいそうなんで、それを恐れると何にも書けなさそうなので直接的な表現は避けようと思いますが、念のため、未読の方は以下、読まないように・・・!


【忠告はしました。ネタバレの責任持てません・・・悪しからず】





率直に言おう、私は素直なのですっかりこの小説の構成に騙されてました。どれがどれやら、どれが真実でどれが架空の話なのか・・・章毎に変わる視点に翻弄されながら、読み進めました。

そうですね、今時としては面白い試みだと思います。嫌いじゃないです。ただ、キャラ萌えとして読んでいる私的には、特にそれは評価ポイントになりませんでした。ミステリーの推理に至っては、ミステリーファンには大変申し訳ないとは思いますが、全然興味が湧かなかったです。

逆に一番期待していた黒猫さんの魅力が足りません!! そりゃ胸絡みのフリはありましたが、もうちょっとなんとか・・・傷物語の20%ぐらい微妙なエロ(!?)が欲しかった。

黒猫さん、ただの変な奴で終わっていて哀愁が漂ってないんですが・・・普通にいそうな変わり者になってしまうんですけど・・・(涙)。

まあ、それでも面白いし、好きなのですが、本作はあくまでも「きみとぼくが壊した世界」のファン向けの余技的な作品であり、単独の作品としては良心的にもお薦めできないだろう。その点はご注意を!

前作のファンであっても、本作への評価は相当分裂しそうな気がしてならない。私はOKですけどね♪

なんせ私の大好物の「ドグラマグラ」が出てくるんですから・・・♪
何度も読み返してますが、一度として発狂した覚えはありませんが(自覚がないだけで既に発狂してる?)、そうかあの作品『妹萌え』なんだ。

そういった視点で観たことが無かったので、本書を読んでいて大いなる共感と驚きに見舞われました。モヨ子は萌え子だもん(笑)。あれこそ美少女愛にして、ご先祖様以来の伝統の下での近親愛だけにいやあ~最高です!(力説)

とまあ、ドクラマグラが出てきただけでご機嫌だったのですが、ロンドン・ダンジョン出て来ましたねぇ~。私も女性に誘われてついていきましたが、全然怖くなかったりする。切り裂きジャックのがたくさんありましたが、黒猫さんと是非ともご一緒したかった、と思いました。

普通の女性は怖いもの好きな人多いんですけどね。いささか意外だったりするが・・・。

そうそう、忘れてならないのがファントム(「オペラ座の怪人」)。しっかり出て来ましたねぇ~、私はマチネとソワレの両方で観たし、ドレス・サークルからボラボーを叫んでたことを思い出しました。

でも、Her majesty theatre にそんな柱ってあったっけ? 5番のBOX席はあったかもしれませんが・・・(分かる人には分かる話です)。英語で聞いてもファントムは大いに泣けましたもの。

でね、一緒に見に行った人にマイ・リトル・ロッテとかほざくの。懐かしいなあ~もう~。でも、黒猫さんの呆れる顔が目に浮かびます。とまあ、本作品自体がたぶんに妄想に彩られていますが、読んでる読者としての私も大いに想像の世界で楽しむことができました。

でもね、本好きの二人がなぜチャリング・クロスに行かないのか? そこは大いに疑問でもあるのですが・・・行けよ、お前ら! 腐っても読書好きの設定なんだから、是非とも行って欲しかった!!

段々、書評というか感想からもかけ離れてきましたが、かなり特殊な思い入れを持って読まれば楽しめますが、ノーマルで予備知識無しでは、どこまで楽しめるか疑問です。

謎解き関係は、個人的には蛇足かな?とさえ思えてしまうのですが・・・。病院坂の鬼気迫るような、精神的な危うさにこそ、魅力があるのですが、それが物足りなかったです。それが残念でした。

もっと残念なのは、いとしの妹の夜月が全く出てこない事でしょうか。回想シーンでもいいから、少しぐらい出てきてくれたら嬉しかったなあ~。

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス ニJ- 22)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 21:58| Comment(4) | TrackBack(1) | 【書評 西尾維新】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
読書するには、その読み方が三通りあると聞く。 一つは、ただストーリーだけを追って読む。 二つには、時代的背景、社会情勢を考えながら読む。 三には、作者の思想、意図など、作者自身の人間を、洞察して読む。なかでも、とくに大事なのは三番目で、そうでないと、作品を十分に理解することはできない。 すべての著作は、これを読む人との対話であり、著者と読者との共同作品でもあると、自分は思う。

Posted by 智太郎 at 2008年11月11日 16:26
智太郎さん、こんばんは。

読書には、おっしゃられるような読み方を含めて読者の数だけ読み方があるように思います。
また、同じ人でもその本が扱う対象に応じて、知識や情報を得る為の読書やストーリーを楽しむ読書、暇つぶしの読書など多様に変化するものかなあ~と思います。

その意味でも、このブログではどんな意図で読んだか、その辺も意識的に書くようにしています。読書意図によって、同じ本でも見方が変わりますので。

そして、私の感じたものというバイアスがかかった見方ではあるものの、他の方の読書にももしかしたら、参考になれば嬉しいな♪という気持ちで書いています。

コメント有り難うございました。
Posted by alice-room at 2008年11月11日 20:39
alice-roomさん、こんばんは
『傷物語』に引き続いて、西尾維新特集ですね!西尾ファンとしては、うれしくなります。(笑)
>本作はあくまでも「きみとぼくが壊した世界」のファン向け
僕も同意見です。楽しく読める作品なのですが、できるなら、上下2巻にして、もっとキャラクター&ストーリーを掘り下げて欲しかったと思います。
>今時としては面白い試みだと思います。
メタフィクションは、面白かったですね。ただ、ミステリーにおいては、中井英夫『虚無への供物』、そしてその影響を受けた竹本健治の『匣の中の失楽』、『ウロボロスの偽書』等この手法を使った作品はそれほど珍しくはありません。
西尾維新は力量のある作家なので、もっと凝った構成の作品ができたのではないかと、考えてしまいます。ファンという者は、身勝手な者ですね。(笑)

Posted by lapis at 2008年11月12日 23:44
lapisさん、こんばんは。
なんだかんだ言ってもファンには、読まずにいられないものがありますね♪
おっしゃられるように、いっそのこともっとコアなファン向けにディープな展開もアリ、というのも面白いかもしれませんね。

>この手法を使った作品はそれほど珍しくはありません。

そうなんですか、私あまりミステリーは読まないこともあり、初めて知りました。単純に気付いてないだけかもしれませんが・・・。

プロットにポイントを置くのもいいですが、それが読者をうならせるぐらいの魅力につながったら最高ですね。今後に期待したいですね♪

とりあえず、病院坂黒猫さんが元気で良かったです。でも、もっとイチャイチャというかツンデレして欲しかったなあ~。個人的希望ですが・・・。

Posted by alice-room at 2008年11月13日 23:01
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