
中世の建築家は、単なる技術者以上の存在であり、神の棲家である天まで届く巨大な大聖堂を設計し、現実化するその技術は、当時の人々の想像を絶するものであった。それゆえ、ある種の魔術師(マギ)と同等に位置づけられたのも故なきことではない。また、当時の建築はその本質が哲学と数学にあると見做されていたことが本書の中でも述べられています。まさに、エリートのお仕事だったんですねぇ~。本書を読んでその事が実感できました。
建築の概念に「オーダー」というものがあり、オーダーとは円柱とそれが支える水平材からなる建築の最も基本的な構成部分なんだそうです。このオーダーはギリシア人によって普遍的な美の規範にまで高められ、現在の建築にはこのオーダーの造形原理に従う系統(古典系)とロマネスクやゴシックに代表される中世建築の造形原理に従う系統の二つが大きくあるんだそうです。
即ち、ギリシア建築の「柱」の論理に対し、ゴシック建築の「壁」の論理があり、前者が重力感にあふれる立体的な柱の建築を特徴とし、調和や均衡といった普遍的な美を目指す一方、後者は線状要素による重力感を喪失した壁の建築を特徴とし、神秘的・超越的な空間の美を目指す違いがある。実に、的確でなるほどと首肯される指摘です。建築を学んだ人達ならきっと常識なんでしょうけど、私は本書で初めて知りました。改めて自己の無知を認識させられましたが、非常に刺激を受けました。もっと&もっと勉強せねば、強く思いました!!
来年はゴシック建築に関する本を重点的に読みたいなあ~。ホントにいい刺激を受けれて良かったです(笑顔)。口で言うほど勉強するのは簡単ではないと思いますが、何よりも面白いし、もっと&もっと知りたいです建築のこと。建築って奥が深いですねぇ~。
そんなふうに思えただけでも価値ある一冊でした。ヴィトルヴィウスの「建築書」が単なる建築関係の書を越えて、後世に広く読まれたのもそこに描かれた世界観が素晴らしかったからなんですね。ふ~む、古典が広く学ばれた意味についても本書では説明されています。興味深いなあ~。
こういう本を読んでから、ヨーロッパに旅行に行くとまた楽しさが倍増しそうです。シャルトル大聖堂やサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂、サン・ロレンツォ教会等々、私が知っているところも一部は出てきますが、それこそ無数の建築物が紹介されていてあれも観たい、これも観たいって思ってしまいます(苦笑)。
一読してすぐ理解できる本ではないですが、建築物を観たり、訪れたりするのが好きな方には一度目を通しておいて損はない本です。おっと、この本のレビューを書いているうちに年を越してしまいました。
今年も読書三昧で終わりそうですね。このブログを訪れてくれた皆さん、昨年中はどうも有り難うございました。本年も宜しくお願いします。皆さんにとっても良い年でありますように!!
【目次】
第1章 様式の二つの流れ(二つの世界様式の二つの系統 ヨーロッパ建築の流れ ほか)
第2章 古典系建築の流れ(ギリシア建築 ローマ建築 ルネサンス ほか)
第3章 中世系建築の流れ(キリスト教建築の始まり ロマネスク建築 ゴシック建築 ほか)
図説 西洋建築の歴史(amazonリンク)
ただ、構造的なことや歴史、風土によっても
いろいろな工夫がされていることが
わかって、私も勉強になりました。
いつもながらalice-roomさん は知識が豊富なので、
レビューを読ませていただくととても
勉強になります。
建築物もながめるだけてなく、構造的なことや歴史、
風土によってもいろいろな工夫がされていることを
知るとまたより興味深く見ることができますね。
でも、この本は面白かったですよね。いろんなことを知ったうえで建築もみると、今までとは違って何倍も楽しめますね♪