2009年01月17日

勝間式「利益の方程式」 勝間 和代 東洋経済新報社

元コンサルティング・ファーム出身の著者が、絶大なる人気の中で書いた『利益』を扱う本としては、はななだ期待外れで陳腐なことこのうえない。

全面的な勝間崇拝者ではないものの、これまで読んできた本は、著者独自の切り口や何かしら新しい手法などがあり、大変学ぶべきことが多かったのだが、本書は、数多くある本からのサマリーにしか感じられない。

最近、急激に増えた著作量に反比例して、明らかに質が低下し、読む必要のないレベルにまで達したように感じられてならない。

但し、誤解がないように言うと、内容が間違っているのでは?とか、主張がおかしいという意味ではない。あまりに当たり前過ぎて、それをご大層に主張されるだけで著者独自の視点がないのが、本書独自の価値を見出せないと思うのです。

(もっとも、著者ご自身も当たり前の話だが・・・と書かれているので分かったうえでのことなのでしょうが、著者の狙うターゲット層とは別に、実際に読者層も興味深いです。)

勝間氏が書かれている万能利益の方程式は以下の通りです。

利益=(顧客当たりの単価ー顧客当たりの獲得コストー顧客当たりの原価)×顧客数

これを変形した形でしょうが、私が通販でデータベースマーケティングをやっていた際には、以下の式を使ってました。

利益=客単価×(1-0.5)ー販促費/顧客数

ここで使用している0.5というのは原価率(運用上は固定費を含む間接費等を加えている)をおおざっぱにしたもので、ほぼこれで間に合う。また、式から分かるでしょうが、ここでいう私の利益は損益分岐点近似の指標として使ってます。利益の総額ではありません。

ハウスリスト(顧客群)に対して、一定の属性及び購買履歴より、類型化したグループを作成し、それぞれに対して、上記の利益が黒字になる部分を抽出し、この部分がコアとなる。

それだけでは、当然ながら縮小均衡になるので、いわゆる見込み客も含めて、利益が黒字にならない部分に対しても販促費をかけていく。

その際に、販促費全体の15%~20%が計算上は赤字になるグループに割り当てるが、その部分でいかに赤字幅を縮小するか、レスポンス率を上げるかがまさにマーケッターの腕の見せ所となる。

また、そこで購入につながった見込み客は、ロイヤリティーの高い客へ成長していくグループであり、アクティブ顧客のコア拡大、直接的に利益をもたらしていく顧客のパイの拡大につながり、長期的に見て、非常に大切でもある。本書では直接的な表現としては出てこないが、それを念頭においていることは伺える。いわゆる生涯顧客価値(life time value)こそが、企業が最重要に考える点でしょう。

(ちなみに・・・
見込み客の選定だが、会社に最も利益を与える優良顧客群を選び、そこの顧客に共通する属性を選び、それらの属性を有する or 有するであろうグループを見込み客として選定する。この部分は、仮説・実行・検証のサイクルの中でいかに効果を最大化するか、個人の裁量が利益と直結してくる面白い部分だったりもする。・・・成果挙げられなくて外された人が何人かいたけどね)

ただ、短期的な利益を何よりも大切にするコンサル系の人らしく(彼らの評価基準がまさにそれだから)、正直、その点の言及が足りなかったり、利益式にその観点が盛り込まれていないのは片手落ちの感が否めない。

いうならば、著者がメインにおいているのが、時系列的な軸でスライスした、瞬間的な指標である。私は、これと同時に獲得した顧客がリピーターとして成長する視点まで含めた指標を併用していたものです。

ここのプロジェクトだけではなく、長期的な経営戦略の視点から見た企業の価値の最大化を図りつつ、その枠内で個々のプロジェクトでの利益最大化を図るのが仕事でしたからね。

あえて詳細をここには書きませんけどね。(興味のある方は、直接会った時に聞いてね。)

私だけでなく、普通に成果を挙げる仕事をしていたら、本書で書かれた内容は知っていて当然であり、直接的に同じ表現をしなくても、それに類する事は意識しているはずです。

でなかったら、その人は管理職としての能力に大いに疑問(?)を呈することでしょう。反面、知らなかった人が本書を読んだだけで、身に付くのかなあ~?とも思います。

知っているのと体験し、生かすことは全くの別物ですし、本書の例は、あまりいい例とは思えません。ネットに関するお話も、私も自分で勉強する為に、オーバーチュアやアドワーズ使ったり、いろいろやってますが、本書は正直、まったくの素人向きには、分かったような気がして面白いかもしれませんが、少しでも知っている人には、相当辛い感じがします。内容が希薄過ぎです。

以前、著者の書かれた本は結構、面白くていろいろ読んでいたんですけどねぇ~。正直、熱が冷めた感じです。もう、この方の本は読まないだろうなあ~。

原価が安いというので儲け易いという粉もの屋関係の話も本当に有名な話です。笑える事に私が以前いた会社も本業は手堅くいってたのに、この手の馬鹿な話にのって、実際に粉もののチェーン店を始めてました。
とりあえずは黒字のようですが、チェーンを大きく伸ばすような事態にはなりません。誰でも始め易く、参入障壁が少ないわけで、その分、パイを競い合う商売であり、ブルーオーシャンとは似ても似つきませんけどね・・・?

散々批判的なことを書きましたが、個人的にはお薦めしません。本当に知識を得るなら、面倒でもきちんとした本を当たるべきだと思います。

今更ながらでもデータベースマーケティングの分厚い本をしっかり読んだ方が、きっと役立つと思います!! きっかけにするつもりなら、悪くはないと思いますが、やっぱりこつこつ地道に学んだ方がいいなあ~と思う私でした。

安易な効率化は、回り道をする過程で身に付けられる根本的且つ、普遍的な底力の切捨てにつながります。そろそろ、それを再認識するタイミングのような気がします。思いっきり自戒の念を込めて!
【目次】
第1章 なぜ、利益の概念が必要なのか
第2章 利益はどう計算するのか
第3章 利益を上げる方程式の解き方
第4章 原則1 どうやって顧客単価を上げるのか
第5章 原則2 どうやって顧客獲得コストを下げるのか
第6章 原則3 どうやって顧客原価を下げるのか
第7章 原則4 どうやって顧客数を伸ばすのか
第8章 明日からできる行動習慣
勝間式「利益の方程式」 ─商売は粉もの屋に学べ!─(amazonリンク)

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ラベル:ビジネス書 書評
posted by alice-room at 08:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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