2009年01月27日

「書物迷宮」赤城 毅 講談社

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いやあ~銀髪が唯一の特徴というプロの稀覯本ハンターを主役とした小説のシリーズ二作目です。単なる貴重な本ではなく、その書物の有する価値が国家の存亡にも関わるような特殊な本を対象にして、各種諜報機関などを相手に活躍します。前作も結構面白かったのですが、本作の方が私は好きかもしれません。

相当マニアックなビブリオマニアに捧げるような内容になっています。勿論、きちんと説明がされていて、予備知識無しでも十分に理解できるようになってはいますが、読者をかなり選んでしまうかもしれません。

説明を読んでようやく分かる水準では、本書の面白さはイマイチ伝わらない可能性があります。

かくいう私も前提となる部分で恥ずかしながら知らなかったことがたくさんあったのですが、それでもスペインにおけるフランコ将軍の右派独裁政権や、バチカンとの共同プロジェクトであるキケロ・プロジェクトぐらいは知ってました。

本書の巻末にある参考文献も読んだ事あるもの、そこそこありましたしね。

いわゆる『本』好きのレベルを超えて、書痴に近い水準にまでいくと自覚症状のある方、かなりお薦めです。本好きであれば、あるほど、本作品の面白さは倍増するかも?

本作品は、読み切りの短編集でそれぞれの作品は独立しているのですが、よく調べられていて、著者がきちんとした資料調査のうえで書かれているのが感じられ、それがますます関心を惹きます。

そうそう、本自体をテーマにしながら、それを取り巻く環境としての歴史や国際政治などへの常識がないと楽しめないかもしれません。象牙の塔向きの話ではありませんが、あちこちに学究的な雰囲気が散りばめられているのもまた魅力の一つです。

著者は、以前留学して図書館や公文書館に通い詰めていたクチらしいですよ~。一作目では気付きませんでしたが、本作ではその傾向が色濃く出ています。

まあ、役に立たない教養のある方にお薦めします(笑顔)。一作目よりはこちらが私の好みです♪

書物迷宮 (講談社ノベルス)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説B】 | 更新情報をチェックする
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