テーマ自体も今ではいささか食傷気味で、手垢がついた感さえあるイエスの遺骨を巡る争いです。
復活してあるはずのないイエスの遺骨が実在したら、キリスト教は崩壊し、磔刑での死もなかったというコーランの教えに誤りがあることでイスラム教もダメージを受ける。
それにエルサレムという聖地の領有権など、高度に政治的な思惑が絡まり、キリスト教(バチカン)・イスラム教・ユダヤ教(イスラエル)が複雑に関わりながら、熾烈な駆引きが繰り広げられます。
さらに歴史的な各種事実に、伝説が加わり、テンプル騎士団の虚実をミックスしてカクテルしたら、ちょっと興味を惹きますよねぇ~(笑)。
それに昨今ブームだった人ゲノム解析の話題をうまく溶け込ませて、現代風の味付けをしています。ネタは、よく調べたうえで上手に料理していると思います。ただ、私は元ネタ全部分かったけど・・・。
読書をぐいぐい引っ張り、ドキドキさせて読ませるエンターテイメント系の小説ではなく、淡々と読ませるタイプの小説です。一応、アクションシーンもありますが、おまけですね。基本は、静かにストーリーが進みます。
それほど盛り上がりもないのですが、時事ネタを存分に仕込んでいるので、知っている人ならば、それなりに面白いと思います。知らなかったら、どうかなあ~? 微妙?
単なる小説としては、イマイチ。初期キリスト教の事をある程度、知っている人なら、ニヤリとできる部分のある小説です。Q文書とかグノーシス系の話とかね。エッセネ派とか。
著者はよく勉強しているし、翻訳は読み易いです。でも面白さは微妙な本でした。読んでる時は、それなりなんですけどね。よくある系の小説です。
聖なる遺骨 (ハヤカワ文庫NV)(amazonリンク)
ブログ内関連記事
「イエスのビデオ」〈上)〈下〉 ハヤカワ文庫NV
「イエスの古文書」アーヴィング ウォーレス 扶桑社
「イエスの弟」ハーシェル シャンクス, ベン,3 ウィザリントン 松柏社
イエスの兄弟の石棺は偽物 CBSニュースより
「聖典クルアーンの思想」 講談社現代新書
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想1
「イエスの遺伝子」マイクル コーディ 徳間書店
「キリストの墓」発見か――「妻」マグダラのマリアと息子も?
古代ユダヤ王国・ヘロデ王の墓を発見
「死者の季節」上下 デヴィッド・ヒューソン ランダムハウス講談社
「法王暗殺」デイヴィッド・ヤロップ 文芸春秋
「クムラン」エリエット・アベカシス著 角川文庫
バチカン法王庁、テンプル騎士団の宗教裁判の史料を700年ぶりに公開
神秘的なテンプルマウントの人工物がダ・ヴィンチ・コードを惹起させる