2009年04月01日

「エロマンガ・スタディーズ」永山薫 イーストプレス

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読む前から想像していた通りの本でした。ありがちの解説にもならぬ、個人の思い付きを並べ立てた文章です。
本書は、不可視の王国を眺め、越境し、探索するための手引書である!!

な~んて、ご大層なことを冒頭の表紙裏に書かれていますが、笑止の一言に尽きます。

ネットで知り合ったオタもどき(=オタクはその分野で相応の知識がある人だと思っていますのでそこに至らぬ人)の人が、飲み屋でグダグダ熱く語っているとこの手の文章になります。

まあ、パンピーの常識人の邪魔にならない範囲なら、酔ったうえでのことで笑ってすませられるレベルですが、ご大層な用語を並べ立て、根拠らしい根拠もなく、完全に個人の思い込みを元に、トレンド分析や背景分析もどきなどをされても、心ある方が見たら、なんだかなあ~と思ってしまうことでしょう。

う~ん、文章を含めて発想が古過ぎる。端的に言うと、高度経済成長期で止まってしまったレベル。もっとも著者のお生まれになった時代を見て、納得してしまいましたが・・・(合掌)。

そもそも肩書きの漫画評論家というのが、既に私的には小首をかしげてしまうのですが・・・・。元来、規格外に置かれていることにレーゾン・デーテルがあるはずの漫画が一番嫌うであろう評論を自称するとは、はてさて???

おそらく本書をもって漫画入門にするような、特殊な方はいくら世間が広くても一人もいないとは思いますが、文章自体には全く価値が無いし、案内にも何もなりません。

但し、本書には唯一有用なものがあります。とにかく時系列的に捉えられる膨大な作品名・作者名の列挙。これだけは、私評価します。

勿論、網羅的などとは言えませんが、とにかくこのジャンルをまともに扱ったものがないうえに、取次店ルートにものらない自販機本やせいぜいが3号雑誌の為、国会図書館でさえ(全ては)現物がない。そんな世界のモノなのです。

私も小学生ぐらいから、それこそ無数に(千冊は軽く越えるでしょう)読んでおり、今でも一年に50冊以上は確実に読んでるだろうし・・・(先週だけで10冊読んだ馬鹿な私)。
昔も今も、サブカル系の人だからなあ~私(自爆)。アングラっぽいの大好きだし・・・。

ベタなところでは、森山塔の「とらわれペンギン」には、カルチャーショックを受けたもんなあ~。確か、今でも全作品初版で持ってるんじゃないかな? 山本直樹になっても少し買ってたけど、段々つまんなくなって離れちゃったけどね。

「漫画ぶりっこ」も何冊か手元にあるなあ~。白倉由美や藤原カムイ好きだったしね。時代が飛ぶけど、時代錯誤感アリアリの山本夜羽も未だにスキ!

本書でも指摘しているが、往時のエロ漫画は何でもありで、一般に受け入れられないモノ(物・者)が寄せ集まった、一種の治外法権みたいなところがあり、それが完全に社会から疎外されてアングラ感漂う雰囲気が、現実逃避として最大の魅力であったのですが、今はそういうのないですよねぇ~。

思考停止で規律が崩壊した現在の社会制度の下では、自分以外の世界を誰も見ない反射的利益(?)で、結果的に他者に足して寛容(=単なる無関心)になったからねぇ~。

アングラ自体が存在しえなくなった感じでしょうか。抑圧してくる「共同幻想」としての社会さえ存在しない今は、エロ漫画は単なるマイノリティーによる性的趣味の発露でしかないので、刺激がないんでしょうね。

まあ、かくいう私もまさに同時代人として、それを地でいってるっていうのが情けない話なんですけど・・・。

うだうだしたしょうもない話は、どうでもいいですね。とにかく知っている作品がたくさん&たくさん出てきて懐かしいです。完全に忘れ切っていた名前をあまりにもたくさん見つけたので、それに伴ってかつての想いを思い出してしまいました。

少~しだけ20代で夭折すると決めていた頃を想い、感傷にふけってしまいました。赤面もんです。

それよりも最近の作品でもかなり知っているのがある、そちらの方が赤面ものだったりして・・・。冗談で何度か思いついたことがあるが、このブログでは採り上げてこなかったエロ漫画専門の書評ブログでも立ち上げようかな? 別な名前で・・・。

そちらの方が評価されてしまいそうで怖い(苦笑)。
【目次】
第1部 エロマンガ全史
前説 ミームが伝播する
第1章 漫画と劇画の遺伝子プール
第2章 三流劇画の盛衰、または美少女系エロ漫画前夜祭
第3章 美少女系エロ漫画の登場

第2部 愛と性のさまざまなカタチ
前説 細分化する欲望
第1章 ロリコン漫画
第2章 巨乳漫画
第3章 妹系と近親相姦
第4章 陵辱と調教
第5章 愛をめぐる物語
第6章 SMと性的マイノリティ
第7章 ジェンダーの混乱
第8章 浸透と拡散とその後
エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門(amazonリンク)

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posted by alice-room at 23:08| 【書評 本】 | 更新情報をチェックする