
表向きは、短編ホラー集。
だけど・・・そこは牧野氏、やっぱり単なるホラーではない。つ~か、確かにエゲつなく&グロく&救いようがない、のだけれど、そういった表面的な感情とは別次元で、これは極めつけの『SF』というか実験小説なのだと思う。
自称電波系の薄っぺらな方々に是非、読んでもらいたいものだ!本書内で描かれる毒電波(←本当に、文中に出てくるのだ)の異様さ、それでいて失われる事のない現実感。
違和感を通り越して、まさにトリップ感があると言えるだろう。
最近、仕事でも私事でもノーマルな枠内に収まることが多く、薄っぺらな現実感という『枠』内でのうのうと惰眠を貪る自分を感じていたのでしばし衝撃を受けた。
なんか全て捨てて、どっか旅に出たくなってきた。うっ、ヤバイ!
新しい事を積極的にやっていないと、本当に駄目になるなあ~。
たかが一小説ですが、ちっぽけな日常生活に疑念を抱かせ、忘れていたあのハイな感覚を呼び起こすだけの起爆力のある価値ある本です。
でも・・・間違っても人に勧めはしないけどね。拒否反応の方が強いと思うし。安易な気持ちでは手を出す事は危ないです。脳が共振するとヤバイ本です。
しかし、日本の誇るドラッグ文学の先生は、サブカル系を飛び越して、あちらの世界でも大先生みたいですね。いやあ~よくモノを知っています。似非(エセ)○○とかとは違いますねぇ~。
分かっていて、あえてやるあざとさもなかなか狡賢いです、ホント。普通に生きていることが、ふと辛くなってしまう。いやはや困ったもんです♪
読んでいて筒井康隆氏の実験小説を思い浮かべましたが、あの不条理感覚(?)とはまた違っていてこちらは毒があるんですよ、更に加えてね。
「我ハ一塊ノ肉塊ナリ」に至っては、戸川純のYAPOOSを口ずさみながら、読んでしまった私ってナニ? ソフト・バレエとかコーザ・ノストラとかマイナーのしか聴かないし、古いのしか知らないなあ~私。
【目次】忌まわしい匣(amazonリンク)
忌わしい匣
おもひで女
瞼の母
B1公爵夫人
グノーシス心中
シカバネ日記
甘い血
ワルツ
罪と罰の機械
蜜月の法
翁戦記
工場
電波大戦
我ハ一塊ノ肉塊ナリ
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