2009年05月06日

「ウェブ進化論」梅田望夫 筑摩書房

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ちょっと前にだいぶ流行っていた本。タイトルがタイトルだけに、更に流行りモノに踊らされるのが嫌いな(時々、思いっきり踊っていたりもするのだけれど・・・苦笑)私としては、ほとぼりが冷めるまで読むまいと思っていた本です。

正直この手のIT系の本って、ゴミが多かったから・・・ネ。

もう、今なら誰も読まないだろうし、本書で書かれたことをさめた視点で眺められる時期だと思い、暇つぶしに読んでみました。

amazonの書評を見てたら、批判やマイナス評価が多かったですが、私には信じられません。私は、本書は読むに値する価値があるし、時代の、技術の転換点を本質的に捉えた素晴らしい啓蒙書だと思います。お薦めでぇっす。

技術屋さんが視野狭窄的に、こんな本、意味ねえよ~的なことを言わんとする気持ちも分からないでもありませんが、現在進行中で変革していく社会を、これだけ的確に表現している本は滅多にないと思いますよ~。こちら側とあちら側というのは、まさに今のクラウド的なものに繋がるわけだしね。

既存の規制の枠の中で、既得権益として無能な方々が利益を得ている仕組みが壊されるので、圧力かけてつぶそうというのは、いつの時代でも見られる反応だけど、確かに徐々に壊れているのを実感しますね。

失われる素晴らしい伝統や価値観も確かにあるけど、それよりは新天地の可能性にこそ、かけたいものです。IT系を含めてベンチャーをはしごしてきた私ですので、そりゃ楽天主義でなければ、とてもじゃないが、生きてこれませんって。何から何まで自分でやる苦労してきたしね。

マーケティング、メインのはずが事業計画立案やったり、バイヤーやったり、何故か弁護士と裁判の打ち合わせや資料作成してたし・・・。何でもやったので、何でもできる自信はついたけど・・・専門性ってなに???

それはおいといて。
本書では、googleをITの持つ潜在的な革新性、既存の枠に対する超越性の象徴的体現者として高く評価しているので、なおさら一般社会の反応としては、賛否両論になるんだと思う。でも、私もやっぱり凄い会社だと心の底から思います。

そもそも私、ヤフーや楽天、使っているけど、嫌いだしね。google万歳!の工作員だし・・ちゃうって!

だって、日本でyahooや楽天に人が集まるのって、自分で何事も判断できず、老舗の名前やブランド、雑誌に出ていたから・・・レベルで物事を決める日本人の寄らば大樹つ~か、人に頼り切った甘えた性根が見え隠れして、大嫌い!!

wikipediaの件もあれに書かれていることをうのみにする人ってどうよ? マジ、そんな人にアレコレ言って欲しくないですよね。つ~か、ネットは使い方を分からない人には、猫に小判、豚に真珠以外の何物でもない!

性善説に基づく究極の理想主義、一つのテスト結果としては素晴らしい想像以上の出来だと思いますよ。ネット利用者、参加者数が増えるに従い、利用者・参加者のボトムレベルが低下し、性善説が揺らぐことはあっても、ゼロよりははるかにイイ。

そもそも私自身もネットで検索して調べたりするが、wikiの場合は、まずざっと見て、関連書籍や関連リンク先をチェックする。政府機関等の公的サイトや企業系のサイトは、比較的正確だと思われるのでそれらを参照しつつ、できる限り本でも確認する。

本は、しばしば言われるように出版されるに当たりコストが発生し、著作者・出版社側の名誉もあるので、その筋できちんとした名の通った(大手の出版社という意味ではない? どうしょうもない本ばかり出している大手も多数ある)ところから出ている本を読み、そこで紹介される関連書籍を当たれば、概ね一通りの内容は、分かるだろう。

この作業をどこまでやるかは、調べたい項目の利用目的や利用レベルに応じてケース・バイ・ケースだが、ネットで調べたものは、ある程度疑ってかかるのは常識だろう。

その意味では、ある程度分かっている人には有用だが、何も知らない人が初めて調べるのは、相当意識してやらないと駄目だろう。その辺を勘違いしている人が実に多い。

wikiに書かれている内容は、私は大変有用だと思っているが、せいぜい7割の真実があれば御の字と思っている。物事を調べるとっかかりになれば、いいぐらいでなければ、無知の再生産になるかもしれないのがネット検索だろう。

ふと以前知ってた機械翻訳ソフトの会社のことを思い出した。モノを知らない人は、翻訳ソフトは、外国語ができない人が使うものと勘違いしているがそんなことはない。一番使うのは、実は翻訳のプロなのである。

彼等は、外国語の意味は分かるが一から日本語の文章を書く手間を省くためにソフトを常用し、語学が分かるからこそ、機械翻訳の欠点を熟知してその部分だけを効率的に、自分で翻訳して成果を挙げるのである。

外国語を知らない人が翻訳ソフトを使うのは、どんな誤訳をされるのか想像さえできず、いくら見ても判断できないので正直これほど恐ろしいものはないのですが、できない人ほど、安易に翻訳ソフトや無料の翻訳
サービスを使うので無知のうえに無知を重ねてしまったりする・・・。

また脇にそれたので本論に戻します。

日本の新聞記者とか、よおっく注意していると外国の記事を誤解して分かったようなこと書いている場合を散見します。出典が記されていれば、英語とかなら原文で確認しないとおや?って思ったりします。

常に情報は、確認しなければいけないのですが、しない人がほとんですねぇ~。逆にそれをする前提で考えれば、ネットの有用性は、まさに革命的だと私は思っています。

googlebooksearchやgooglescholarとかって、夢の実現に他なりません。勿論、著作権者への正当な代価として金銭や評価をないがしろにするのは論外ですが、そういったものがクリアされる限り、人を人たらしめているのは、まさに知の共有だと私は思うので心の底から感激しちゃいますねぇ~。

(ただ、web2.0とかマーケッターが好きそうな用語は、実のない虚飾のイメージを持っていますけどね! そんな言葉遊びには付き合わない主義です。セカンドライフも以前、速攻でアカウント取ったけど、一週間で辞めたし、twiterも暇人以外やってらんないと思っています。ずいぶん前に私も登録したけどね)

本書では、リアル世界で発生するコストがネット世界では限りなくゼロに近い水準にまで低減できる場合があり、それによって、自由な社会(理念上有り得ても実現できなかったイデア的『民主主義』)が生じつつあることを示唆している点も興味深いです。

有象無象の意見も多々あるのを承知の上で、従来、表現するには、一部のマス・メディア組織に属するか、しかるべき制度に則ったり、社会的認知を受けなければ表現できなかったが、現在の状況は、発言者の絶対数の増加に応じて、しかるべき発言をする(能力・見識)に値する人で従来発言する機会が無かった人が発言することが可能になった点を指摘していた。

そして、俗にいう『プロフェッショナル』がプロの既得権益にあぐらをかいていた状況に、常に素人の意見が並列して比較されることでプロは名目ではなく、実質でプロであることを常に立証し続けることを要求されるのが現代だと述べている。

情報の爆発的増大の中で、究極的民主主義の下、評価されないものはドンドン切り捨てられていく。その際、最後まで残れるプロはそれほど多くないと思えるのは、私だけでしょうか?

私も含めて人々はほとんどTVを観なくなり、友人は新聞さえ読まなくなったらしいが、それでも情報そのものは増大の一途を辿っている。日々に流されるのではなく、一歩引いた視点から日常の現象を見直す契機になるかもしれない価値ある一冊が本書だと思います。

私はもう10年近く前にブラジルのホテルから日本の友人にe-mailを出して、それが届いた事に感動したが、今では普通に海外の古書店に注文して、送料さえ出せば、国内で購入するよりも安く、早く入手できる時代です。

これも結構前になるが、ロンドンのher majesty theaterでのphantomのチケットを日本の大手旅行会社経由で取ろうとしたら、正規料金に手数料込みで、高い値段を提示されたうえ、おまけに席が取れるか確認してみないと分からない、しかも座席も特定できないとふざけたことを言われたことを思い出します。某○TBさんとかね。

直接、ネットで劇場のチケットオフィスで席を選んで予約したら、シャンデリアの落ちてくる席やドレスサークルの最前列センターをかなり安く取れました。

こういったことは、今ならもう常識になっていますが、当時は震えるほど感動しました。技術の素晴らしさと今後の無限の可能性に!

本書は、その感動をふつふつと呼び起こします。本書だけ読んでも実感できないかもしれませんが、リアル体験のある方なら、きっと共感してもらえるでしょう。

本書が出て時点で、これだけ的確な予想と方向性を提示していたのは、IT業界では立派だと思うんですけどねぇ~。今、読んで現状を再認識していいと思います。私的には、大いに人に薦めたい本です。

勿論、どんなものにもつきもののマイナス面への指摘は甘いかもしれませんが、新しい事をする際、人は必ず不安になります。リスクがつきまといます。

しかし、性善説と楽観主義、問題が起きた時点で必ず解決できるという強い意思で進まなければ何事もできません。私はそう信じています。本書の著者もそうお考えのようです。

あげあし取る暇あったら、とにかくアイデアを実行しろ! そう思える人には、是非お薦めしたいです(満面の笑み)。
【目次】
序章 ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
第1章 「革命」であることの真の意味
第2章 グーグル―知の世界を再編成する
第3章 ロングテールとWeb2.0
第4章 ブログと総表現社会
第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
第6章 ウェブ進化は世代交代によって
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)(amazonリンク)
ラベル:IT 書評
posted by alice-room at 19:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
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