岩波文庫のアラビアン・ナイト全13巻を読破した(ちょっと自慢♪)私としては、正直予想していた範囲内でしたが、サラっと読めて悪くはなかったです。ちょっとした時に軽く目を通すにはいいかなあ~。
当時の治療法が現代においても通用する高度な医療知識によって支えられていたのは面白かったです。番外編ではないですが、恋わずらいは、脈をとって意中の人とおぼしき女性の名前を他の女性の名前と混ぜて、呼んだりすると脈が早まり、すぐにその相手が分かるとかは今の嘘発見器みたいですね。それ以外にも長寿を保つ健康法に、食事を粗食にして夜の生活を控えることというのは、現代でも良く言われてますもんね! 私は贅沢三昧に快楽三昧で寿命は短くてもいいけど(笑)。
そうそう、ありがちですがちょっと興味深い話がありました。イランの地理学者アブー・ヤフヤー・ザカリーヤー・カズウィニーの本「諸国の名所と人間の物語」よりその部分だけ引用。
珍しいものの一つに『ピーシュ』がある。これはインドにしか産しない植物で。致死の毒物であり、これを食べたものはたちまちに死んでしまう。ただし、ピーシュ鼠という動物だけは、その下で生まれ、この植物を食べているがなんの害も受けない。聞くところによると、インドの王たちはなにびとかを裏切ろうと思ったときは、生まれたばかりの女の子を探し、その揺り籠の下に、ある期間だけこの毒草をまいておく。それからまたある期間、その子の蒲団の下に毒草を敷いておく。さらにまたある期間、その子の衣服の中に毒草を入れておく。次に乳の中にまぜて、その子に飲ますのである。こうしているうちにその子は成長し、かの毒草食べるようになるが、もはや何の害も受けはしない。そうなったとき、この娘に贈り物を付けて裏切ろうと思っている相手の王のもとに送り届ける。相手がその娘と共に眠ったら最後、すぐに死んでしまう。
これに類する話は、あちこちの本で読んだことがあり、先日読んだ聖骸布血盟にも出てきたが(まあネタバレでもないのでここで触れてもいいでしょう)、古来より頻繁に使われてきた手ではあるもののそれ故に効果が大きいのでしょう。かの英雄アレキサンダー大王が若くして急死した理由に、このいと美しき贈り物が原因であったと噂されるのは故無きことではなさそうです。
絶世の美女となるべきあどけなき幼児に毒と慣れさせ、毒への耐性を持たせたうえで音曲や舞踊や教養を身に付けさせ、生娘のまま貢物とする。男である以上、これに溺れぬ者などいないでしょう…英雄が色を好むかどうかはさておいても。なんとも恐ろしい贈り物でしょう。まあ、私はただでくれるものは何でも頂きますけどね(笑)。18日は誕生日ですし、誰か誕生日プレゼントくれないのだろうか? こういう恐ろしいものではなくても…。
とまあ、冗談はさておき、この毒物『ピーシュ』というのは実はとりかぶとのことだそうです。最近の日本ではカレーに入れるのが流行りみたいですが、ちょっと芸がないような?軽く読むには、悪くない本でした。
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私が読んだのは中公文庫なのですが、見つからずに代わりに平凡社で出ているみたいです。