2006年01月25日

「聖者と学僧の島」トマス カヒル 青土社

最近、すっかりケルトに関心が偏りつつある私です。今回もケルト絡みの一冊。学者さんが書いた本とは違い、かなり大胆な仮説(想像)も入っているようだが、基本線は正統的にそれなりに資料に基づいて書かれている感じです。何よりもとっても読み易いし、これまで私のほとんど知らなかったアイルランドというものへの理解を深めてくれた本です。

これまでほとんどアイルランドって知らなかった私にとっては、驚くことがとっても多かったです。今までの私の知識では、アイルランドが世界の(しかも学問の)中心であった時が古代であってもあったなんて、大変衝撃的な驚きでした!!

ギリシア以来の西洋古典的知識がローマ帝国滅亡後、西洋から失われ、それがイスラムを経て中世の教会でアラビア語経由でラテン語に翻訳されたのは知っていました。私的にはまさに「薔薇の名前」の世界ですね。

しかし、古典的な知識や写本は、イスラムだけではなく西洋の片隅であるアイルランドでいかにして保持され、継承されてきたのか、まさに眼からうろこの気持ちです。大陸で失われた知識がアイルランドで絶えること無く、またその知識を求めて大陸からもたくさんの人々が渡ってきたのもこの本を読んで初めて意味が分かりました。実に、人類にとって貴重な文化の1頁を担っていたのも分かります。

それらと共に名前だけ知らなかったアイルランドの聖者・聖パトリックがどのような人生を送り(奴隷として過ごしていたこともあるそうです)、アイルランドで何を行ったのか、いろいろ知る事もできました。一人の殉教者も出さずに、キリスト教に改宗させていったのも興味深いです。他にアウグスティヌスに関しての話もあり、とっても話題が豊富です。

お気楽にさらっと読んでみたい方にはお薦めだと思います。結構、勉強になりました。そうそう、聖ブレンダンの航海とか何故いきなり旅に出てしまうのか?その辺のこともよく書かれています。どこまで正確なのかはちょっと分からないですが、ああっそうなんだあ~と納得させられる事も多かったです。
【目次】
序 歴史はどれくらい真実なのか
第1章 この世の終末―ローマ帝国はどのようにして滅亡したのか そしてなぜ
第2章 失われたもの―錯綜する古典の伝統
第3章 移りゆく闇の世界―神聖ではなかったアイルランド
第4章 遠方からの福音―最初の伝道者
第5章 堅固な光の世界―聖なるアイルランド
第6章 見つけだされたもの―アイルランド人はどのようにして文明を救ったか
第7章 世界の終わり―希望はあるのか


聖者と学僧の島―文明の灯を守ったアイルランド(amazonリンク)

関連ブログ
聖ブレンダンの航海譚 抜粋
「聖パトリック祭の夜」鶴岡 真弓 岩波書店
「図説 ケルトの歴史」鶴岡 真弓,村松 一男 河出書房新社
「ケルト神話と中世騎士物語」田中 仁彦 中央公論社

関連サイト
聖ブレンダンの航海 お薦めです!!


posted by alice-room at 00:56| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。