2009年07月07日

「不機嫌な職場」河合太介、高橋克徳、永田稔 講談社

よくある話ではあるが、自分のところも含めて表面上はさておき、円滑に回っている部署(職場)が減ってきているというのは、今の日本の職場の一般的な傾向なのかと思う。

実際、友人達と飲んでいても思うのだが、昨今の効率化の名の下に、成果主義が蔓延した結果、一過性の利益重視が横行し、自部署さえ良ければ、個人ベースでも自分さえ良かればといった部分最適を求める行動ばかりが顕著なように感じてならない。

目に見えない部分(=業績として評価されない業務)は、誰もやりたがらず、それでいて欧米式の徹底した業務内容の明確化、分担化も進まない為、誰もが自分の決まった仕事にしがみつき、進んで協力し、部署の、あるいは会社全体の仕事を進めていこうとしない職場。

本書では、そのコミュニケーションのとれない職場を指して表題の「不機嫌な職場」と呼んでいる。また、自分の仕事だけに埋没する姿勢をタコツボ化と表現している。

また、しばしば耳に聞くし、目にもするが「つぶれる中間管理職」「人が壊れる」なども実に身近な話題だ。今週、自分自身が壊れかかっていた訳だし・・・他人事ではない。

本書全体を通読して思ったのは、指摘は的確だし、問題点の整理には有用な本書だが、解決策の提示という点では、明らかに足りない。もっともそれぞれの会社、部署といった個別具体的な場面で実効性を挙げることほど難しいものはないわけで当たり前なのですけどね。

そういう意味で現状をまず直視し、その現実を認めたうえで、根気強く時間をかけていくしかないのだろう。だが、そここそが組織運営の面白さであり、一番のダイナミズムでもあるんですけどね。その前に、組織の機能不全で、バタバタ潰れていく犠牲者が出る訳なんですが・・・。うっ、やばい、私も犠牲者になるのか???

気になった点をメモ:
協力を捉えるフレームワーク:
「役割構造」・・・誰と協力するか
「評判情報」・・・協力相手のことを知る
「インセンティブ」・・・協力への動機付け

←ここで私が連想したのは、少し前に流行った「ナレッジ・マネジメント」。まさに、効率化・成果主義の風潮の下で、従来インフォーマルな形で共有されていた情報が、伝わらなくなった組織がなんとかしようともがいたからこそ、注目されたんだろね!納得!
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社会的交換理論:人や組織間の関係を、有形無形の資源のやり取りとみなすこと
  ↓
裏切りの問題解決に必要なこと
 互いに資源を持っていること
 互いに資源のやり取りを最上と考える事

これは基本ですね。ローマ帝国のクリエンテスとか、中世のゲルマン法における贈与関係などもまさに、同じです。人間って時代や空間を越えて、変わらんなあ~。
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協力を引き出す方法・・・感謝と認知
この本では触れられていないが、挨拶もやはり基本でしょう。きちんとした挨拶ができるだけで、本当にポイントが高いです。返事が返ってこなくても、常に誰にでも挨拶をしておくのは、敵を作らないしたたかな交渉術の第一歩でしょう。

海外におけるプレゼンの技術よりも、簡単で効果的だと信じてます。ナニワ金融道とかでも出てたジャン!(笑)
【目次】
第1章 いま、職場で何が起きているのか
第2章 何が協力関係を阻害しているのか―協力関係を阻害する「構造的要因」
第3章 協力の心理を理解する
第4章 協力し合う組織に学ぶ(グーグル、サイバーエージェント、ヨリタ歯科クリニック)
第5章 協力し合える組織をつくる方法―協力関係再構築に必要な姿勢/経営者の責務
最終章 協力への第一歩の踏み出し方
不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
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