2006年01月30日

「黒田如水」吉川 英治 講談社

kuroda.jpg元々歴史物も好きで、結構いろいろと思い付くままに読んではいるのだが、たまたま目に止まって購入したもの。秀吉の参謀として、前半は竹中半兵衛で後半はこの黒田官兵衛が陰にひなたに支えたことは有名ですが、参謀役って目立つものではないし、直接の話としてはほとんど知らなかったので新鮮でした。

久しぶりにこういう読み物を読むといいね。いつ死ぬとも知れぬ人生故に、常に緊迫感と共に必至に生きていくという切実な真剣さ、一途さが結構グッときたりします。人は本当に追い込まれてみないと、分からないもんだと思うんですよね。自分の命も惜しいし、家族や身内の者達も守りたい。と同時に、成功して名を成したいという様々な欲求や生存本能に駆られつつも、人がとる行動はあまりにも違い過ぎる。

動機は一緒であったとしても、主君や同士を裏切って一族の生存を願った行動の結果、かえって裏切り者として一族郎党までもが全滅するかと思えば、その裏切りによって出世への糸口をつかむ者もいる。一瞬の判断で、天国にも地獄に変転する不確定性の世界。

誰もが己の信ずるところを貫き通したいと思いつつ、ほとんどのものがそれを為し遂げられずに消えていく戦国時代。その時代においてちっぽけな自分であることを受け入れつつも一個人にとらわれない広い視野から、人生を行き抜く姿には共感とともに憧れを禁じ得ない。

あくまでも主人に忠誠を尽くしつつ、最善の努力をしてもうまくいかない時も多々あるわけでそれでも腐らず、自棄にもならず、世のせい・人のせいにすることもなく、ただ淡々と受け入れていく。あるがままでの自然体でありながらも、なすべきところを為していく。安っぽい人生相談や占い、流行のスピリチュアルなんとかよりもはるかに学ぶところも多いし、人生を生きていくうえでも参考になるように思う。

経営者が歴史物を好きな理由に、そこに描かれる人間性や人間関係が実は普遍のものであり、人の心を知り、部下を使い、組織を動かし、目標を達成すべく決断をしていく。その姿は、まさに歴史による教科書だったりする。人を使って何事かをした経験のある人ならば、すぐにピンとくることが随所にあふれています。

物語としても面白いし、ちょっとした息抜きに読んでもいい本でした。但し、本書では如水の全生涯を扱っているわけではありません。晩年、秀吉による天下統一後、戦時においては貴重な智謀・策略も平時においては、むしろ危険な存在となりかねず、やがて秀吉から敬して遠ざけられていくような場面までは扱っていません。個人的にはその辺りの経緯も興味あるんですけどね。ベンチャーの創業時において型破りの社員が業績を伸ばし、役員になっても企業規模が大きくなるにつれ、社内秩序を乱し、むしろ組織的にはマイナス要因になってしまう、いかにもよくある話だったりします。身近にも見てきたしね…。

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posted by alice-room at 01:03| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
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