
『中世』大好き、『ゴシック』大好き、『写本』大好きの私が読まないわけにはいくまいと思い、読んでみました。
採り上げられているテーマが非常にバランスが良く、説明もそつないのですが・・・読んでいて全然面白くないのですよ・・・トホホ。
教科書的とは言いませんが、悪い意味で、新書らしく読み易さやとっつき易さを大切にしたせいで、薄っぺらい印象が拭えません。
具体的な土地(都市等)を出しての説明は、知らないところもあり、興味を惹くのですが、あまりにも淡々とした記述に想いが伝わってきません!
中世の本物の魅力を伝える意思があるのなら、やはり、感想や想いも含めてそれを伝える術(すべ)も強く意識して欲しかったです!!
後は、ほとんど知っている話ばかりでしたし、知っている内容ももうちょい表現の仕方があるのでは・・・と感じるものが多数ありました。木俣氏のあの熱い思いの幾分かでも表現されていると、また読み手の感じも変わるのですけれど・・・。
トータルの印象は、教科書とガイドブックの中間であり、あえて読む価値を見出せません。
本当に中世の真の素晴らしさを伝えるなら、著者は役不足でしょう。著者の独り善がり的な自己満足ではなく、(独り善がりでもいいのだけれど)中世への熱い想いが文章から伝わりません。
ルネサンス礼賛なんてのは、世間に踊らされているモノを知らないだけ人でしかなく、中世の一部が顕在化しただけジャンとか思っている私のようなひねくれ者には大いに不満が残る本でした。
やっぱり積読状態の英語の本を読もうか。本書ではなく、エミール・マールの著書を読めば、もう中世礼賛に転向するでしょうね、絶対(笑)。
ちょいメモ:
名古屋の古川美術館 「ブシコー派の時祷書」・・・以前、見つけたアレ。
ニコラウス・ペブスナー「ヨーロッパ建築序説」
【目次】ヨーロッパの中世美術―大聖堂から写本まで (中公新書)(amazonリンク)
1中世美術とキリスト教
2古代から中世へ
3王国の夢―ラヴェンナ
4市民たちの信仰
5聖堂の壁画
6聖遺物
7イコンと祭壇画
8中世の町
9巡礼
10修道院
11写本
12中世の建築家―カンタべりー
13中世からルネサンスへ
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「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「中世彩飾写本の世界」内藤裕史 美術出版社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「ヨーロッパ中世美術講義」越 宏一 岩波書店
「中世ヨーロッパの書物」箕輪 成男 出版ニュース社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「十二世紀ルネサンス」伊東 俊太郎 講談社
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「中世末期の図像学〈上〉」エミール マール 国書刊行会
「中世末期の図像学〈下〉」エミール マール 国書刊行会
他、多数。