2009年09月14日

「神の子(イエス・キリスト)の密室」小森 健太朗 講談社

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正直なところ、もうちょっと面白いかと期待していたんですけどねぇ~。

イエス・キリストが十字架にかけられても死んでいなかった。復活は、仕組まれた陰謀だった・・・というストーリーの小説は、欧米では吐いて捨てるほどあるわけで私も何冊も読んだことあるのですが・・・。

それを密室になぞらえて、解明するミステリー仕立ての小説ということですが、お粗末な結果で終わっています。

ネタバレも何も、この手の話は知っている人は誰でも知っている話を書いて、気にせず、ずばずば書きますので、これから読む方は以下、見ないほうが宜しいかと思います。



でもって・・・。
後書きとかに書かれてますが、「イエスのミステリー」は面白いけど、あれ、まともな本ではないです。さも、根拠のある学説のように著者も語ってますが、冷静になって読めば、あれこそ小説以外の何物でもないです。

っていうか、本書を読むなら、あちらの数倍どころか数百倍、面白いです。自分に都合のいいところだけをつぎはぎしているものの、一見すると大変論理的な展開で、うっかりしていると騙されてしまいますもん!

まともな研究者だったら、つ~か、本当に論理的思考ができれば、そんなこともないかと思いますけどね(笑)。

イエスが東方(インド)で修行していたとか、十字架刑から生き延びてインドへ渡ったというのは、まあ、義経がモンゴル行ってチンギス・ハーンになったとかいうレベルの話で、有名でまともな人は採り上げません。

その手の題材を扱った小説もありますが、本書はいろんな意味で弱いし、論理的な説得にも失敗しています。何よりも面白くないんだもん。

ナグ・ハマディとかトマス福音書、とかもったいぶった割に理解が非常に薄っぺらで、中身がないし、エッセネ派とかに勝手にするな!ってね。まあ、かなり近そうで元エッセネ派では?という説は、よく見ますが、なんの根拠も示さずに、あれはないでしょう。つ~か、笑止!

英語の本も挙げられてましたが、残念ながら私読んだことないですが、おそらく他の本からしても、同様の適当な資料っぽいです。

そんなのだったら、まんま、コーランの記述でも引用した方が良かったかもしれません。

本書以外に「クムラン」とかもっと面白いキリストを題材にした小説がありますので、このレベルで満足しないでそちらをお薦めしたいです。

やはり日本人にキリスト教を扱った小説で、知的好奇心を刺激するだけのものを求めるのは無理なのでしょうか? 少しぐらいあってもいいのにねぇ~。ちぇっ。

げっ!
今、自分のブログ内を検索していて、本書を以前に読んでいたことを発見! 前回も散々否定していたのに全部読み終わっても気付かない、この愚かしさ。

自分で自分が嫌になるなあ~(号泣)。まあ、いいや、書いちゃったから一応、消さずにおきます。一番の愚か者は私自身でした(ガックリ)。

神の子(イエス・キリスト)の密室 (講談社文庫)(amazonリンク)

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エルサレムで発見された「イエスの墓」
「イエスの墓」リチャード アンドルーズ、ポール シェレンバーガー 日本放送出版協会
「隠された聖地」ヘンリーリンカーン著、荒俣宏訳 河出書房新社
日本のイエスの足跡(BBCのイエスの墓の記事による)
「キリストの墓」発見か――「妻」マグダラのマリアと息子も?
イエスの兄弟の石棺は偽物 CBSニュースより
「イエスの弟」ハーシェル シャンクス, ベン,3 ウィザリントン 松柏社
「イエスの王朝」ジェイムズ・D・テイバー  ソフトバンククリエイティブ
「聖典クルアーンの思想」 講談社現代新書
「キリストの遺骸」(上・下)リチャード・ベン サピア 扶桑社
古代ユダヤ王国・ヘロデ王の墓を発見
「クムラン」エリエット・アベカシス著 角川文庫 
「イエスの古文書」アーヴィング ウォーレス 扶桑社
ラベル:小説 書評
posted by alice-room at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説B】 | 更新情報をチェックする
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