
これっ、ジャンル的にラノベなんだと思う。舞台が微妙にパラレルワールド的な中世西欧の自治都市だったりするので、ファンタジー的なウリをしているので、それほど期待していなかったりする。
まあ、「狼と香辛料」のように最近は、ラノベでも想定外の面白いのがあるのですが、レアな例ですから・・・。
しかし、しかし、本書はそのレアな方の一例になりました! うん、実に面白い。ファンタジー的なウリ方しちゃ駄目なのになあ~。むしろそれで失敗していると思う。
じゃなかったら、私が知っていて当然の作品だと思いますもん。
舞台は、現代の日本でも中世の日本でもOKだし。外国のどの時代でもOK。そういったものを無視しても、物語としての完成度の高い、しっかりした普遍性のある作品です。
本物の法廷劇ですね。逆に、どこぞのゴミのような推理小説や法廷劇に飽き飽きしていた方には、是非お薦めしたいほど♪
非常にオーソドックスではあるものの、しっかりと読ませ、謎解きに引き込み、変な小細工無く王道で結末に持っていくのは、なかなか著者の力量を感じます。しっかりと最後の最後でも、ひっくり返しますし、飽きさせません。
いやあ~こういうのが読みたかったんです。満足&満足。
安易な舞台設定に溺れることなく、むしろ、状況設定を淡々とうまく活用する事で人間の有する素晴らしい可能性や普遍的な価値観といったものを表現できていると思います。
現実の中で妥協しつつも、その限界の中で絶望することなく、絶えずより良い一歩を目指して努力する。今の日本が一番忘れていることかもしれませんね。
う~ん、我ながら年寄りのような意見だこと(苦笑)。
でもね、暗黒の中世などという馬鹿げたことを未だに信じている無知蒙昧の輩もいますが、中世のあの知的活動の成果を知って欲しいですね。
物語の背景にある深い人間性への讃歌は私、共感できます。
単純に美貌の主人公の活躍としてみるのは、薄っぺらでもったいないです。むしろ、主人公は外見的に駄目駄目君でも、良さそうですが、まあ、客がついてこないかな?
ラノベとしては、ちょっと読者レベルがつらいかもしれませんが、通常の法廷劇としては実に良質の作品ですので、好きな方、是非読んでみてね(笑顔)。損はさせません!
数々の紛争を解決する裁判制度の素晴らしさで、評判を高め、自治権をも有する自治都市の法廷士(=弁護士ってところかな?)が主役。
突然、飛び込み客の依頼で都市一番の権力者市長の息子の殺人事件に巻き込まれます。誰もが市長に逆らえない圧倒的不利の状況下、そのままなら100%死刑の評決を覆す事が出来るのか?
どうやら続編も何冊かあるようなので、今後も主人公の活躍が楽しみです。勿論、本書は一冊で完結してますので、ご安心を。
いや、面白いシリーズ見つけた。続きも読まねば!!
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