2009年10月02日

「中国に負けていられない!日本発・最先端“生産革命”を見る」野口 恒 日刊工業新聞社

日刊工業新聞社ですからね。そりゃ、いい加減なものや的外れなものではありません。ただ、あくまでも2003年時点での現状分析としては、妥当ではあるが、10年経たずして、現実認識は全く違った次元に達しているのを感じぜずにはいられません!

日本に最先端の開発を残して、普及品は中国で作る、な~んてこと言ってられたのは、ずいぶん昔の時代のように思えます。

基本的なパラダイムが日本で開発して陳腐化(美しく・・・コモディティ化と呼んでもいいですが)したものを、新興国に持っていって売るなんて・・・ねぇ~。実際、売れてないし・・・。

地産地消ではないが、現地でマーケットインして、現地の人の求める機能を持った製品を現地で企画し、売れる価格で生産し、販売する。じゃなきゃモノは売れません。

斜陽国家として、日々世界の中央から転げ落ちていくこの国では、セル方式とかモジュール化とかいうレベルの話でいいんでしょうかね?

デルが圧倒的な一位の座から転げ落ちたのは、この本の書かれた当時では想像できなかったことでしょうね。それぐらい、世界は動いていますから。

まさに教科書って感じの本ですかね。著者が典型的なジャーナリストさんなのを考慮すれば、出来が悪いとはいいませんが、やっぱり表面的なことしか見えて(見て?)いない気がします。

何よりも生産の現場で働く人のたゆまぬ向上心! これこそが、持続的なモノづくりの強さだと個人的には思うのですけどね。

ややもすると体育会系で(一面では合理性がないように思える)精神論に堕してしまうのを恐れてか、本書ではそこへの言及がほとんどありません。

新しい生産技術の導入に、どんなにトップが精力を注いでも、最終的に現場がそれを自律的に継続して行う組織になれなければ意味無いでしょう。

トヨト生産方式とかを導入して、一時的に生産性を向上させた後、あまたの失敗を繰り返す無数の企業は、まさに「仏作って魂入れず」に他ならない。

そこは常に、ややもすれば、強迫神経症的に生産性を向上しないではいられない意識こそが、何よりも大切だと思うのですが・・・。

そして、その意識の具体的発露の為に、合理性の尺度が一番生きてくると思うのですけれどね。その順序が逆になっているように思えてなりません。

逆に言うと本書で書かれているようなやり方なんて、現場が常に一生懸命考えて努力してれば、それが合理性の基準の下にある限り、ある程度は期せずして同じような方向性を辿るのは当然でしょう。

むしろ、他社が後追いでマネできるのは、所詮、そのレベルでしかなく、どうやってもマネできないレベル(常に改善していくスピードが速くて追いつかない等)までいって、差別化であり、競争優位だと私は思います。

まあ、ざっと一通りの復習にもなったし、時代が以前とは確実に違う段階にあることを理解できただけでも良かったです。

ソフトウェア開発などでも、応用できる普遍性のある話もあり、古くて新しいモジュール化もいろいろと思うところがあって、勉強になりました。自分の知っている範囲の仕事と照らしあわせると、面白かったです。

でも、本書はどうだろう? 読むほどのものではないです。いつも思うのですが、もっとも大切で価値のある事は、継続的に改善していく(=言い換えれば、より完成度を求めていく)情熱ではないかと思います。

どんなに元々の能力があっても、情熱の無い人は、やっぱり向上しません。しても、一定以上にはなりません。能力が一見すると無そうに見えても、この情熱のある人は、時間を経過するごとに着実に向上する為、一定期間後、比較すると歴然とした差があることに気づきます。

まあ、私自身もその差をつけられた方かもしれませんが、それに気づいて以後は、可能な限り、自分も差をつける側になりたいと思っています。悪い意味で、偏屈な職人気質では意味ないですが、どんな仕事であれ、自分の仕事に誇りを持てるぐらいの情熱は維持していきたいなあ~と改めて思いました。

まずは、勉強せんといかんなあ・・・・(自戒の念を込めて)。
【目次】
プロローグ 中国シフトが突きつけたモノづくり経営・二つの選択
第1章 分業システムからセル生産方式へ―世界をリードする日本独自の生産方式
第2章 脱コンベアで垂直立ち上げを推進―松下電器テレビ工場のセル生産革新
第3章 部品の出庫から梱包までを完全一人一台で―ローランド・ディージーのデジタル屋台生産
第4章 現場にもリアルな経営感覚を徹底―ソニー白石セミコンダクタのダイヤグラム生産
第5章 メインラインを身軽にしてスピードを向上―日産車体グループの「モジュール化」方式
第6章 二十一世紀モノづくりの主流になるのはBTO―顧客からの注文がすべての起点
第7章 国内の製造企業が生き残るための条件は何か?
モノづくりニッポンの再生〈1〉中国に負けていられない!日本発・最先端“生産革命”を見る―セル生産/モジュール生産/ダイヤグラム生産/BTO生産 (B&Tブックス)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスB】 | 更新情報をチェックする
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