以前、ビン・ラディンに関する本を読んだりして中東全般についても関心はありましたが、今回の特集は、いろんな意味でかなりショッキングな内容でした。
アメリカによる管理下にありながらもようやく選挙が実現したイラクで、一歩づつイラク国民自身による政治が行われようとする状況のもと、思いもよらない事態が生じているようです。フセイン体制下においては大多数でありながらも、力によってその言論や権利を封じられてきたシーア派がこないだの選挙で大勝利したことは、私もニュースで読んでしっていましたが、その影響がこれほどまでとは思いませんでした。
良くも悪くもフセインという傑出した人物であったこらこそ、あの複雑な政治・宗教問題を抑えつつ統治していたのが、一気に自由になったことでこれまで蓄積されてきた不満が突如として噴出してきている状況です。フセインの時代には、シーア派とスンニ派が仲良く生活できていたのに、今は同じイスラム教同士で政治的発言権を求めて、血で血を洗うテロ活動が頻発しているようです。
しかもそれには石油という金になる資源を持つ地域を押さえているか否かでイラク国内でも分裂の様相を呈し、これまで一部の人間(主にスンニ派)に独占されていた権利を取り戻すのだという歴史的な背景もあり、混乱以外の何物でもないようです。クルド人は自治権の拡大を図ると共に、石油の独自開発さえ進めているし、選挙で大多数を占めたシーア派は議会を通じて彼らの力を増しています。スンニ派は、全てを失い兼ねない状態で国家としての分裂を避けるべく苦闘しているという状況らしいです。
そんな状況下、よりにもよってイスラム原理主義を標榜するイランがイラクに接近してるそうです。イランの神学校で海外からの留学生を無料で寄宿させ、イスラム教の勉強をさせているそうです。イラクで迫害を受けていた当時、シーア派の人々がイランに避難し、その神学校で学んだ人達が今、まさにイラクでシーア派の宗教的指導者として活躍している。イラクとイランの接近は火を見るより明らかでしょう。正直、背筋が寒くなりました。勿論、そういったことに限らず現在イランはイラク支援の為にたくさんの資金援助なども行っており、今後も両者の結び付きは増していくのでしょう…。
ま・さ・か…、世界がそんなふうに動いているとは知りませんでした、私。NHKえらい!最近、もう駄目かなあ~と思っていましたがたまにいい番組を作ってくれますね。ほんと。シーア派がイラクにおいて国民の大多数にもかかわらず、その発言を封じられ、石油の権益も分け与えられず、迫害され、弾圧されてきた姿を(シーア派寄り?)とも思えるぐらいに番組で紹介しているのは凄いと思います。
またイラクに限らず、シーア派が国民の大多数を占めているのに、少数派のスンニ派が政権を独占し、シーア派を抑圧しているであろう他の中東の国々にも今回のイラクにおけるシーア派の勝利が多大な影響を及ぼしているそうです。イラクにおけるシーア派の勝利が、世界中で迫害され、民主主義の正当な権利を妨害されている各国のシーア派を大いに勇気付けているそうです。番組では親米よりの王家が支配するバーレーンを映していましたが、彼らも本来は少数派のスンニ派であり、大多数のシーア派を無理に押さえつけているのは明らかでしょう。
私が以前読んだ本では、一見すると良心的で平和国家のように見えるサウジアラビアも指導者である王家に敵対する政治勢力には、諜報機関で口に出せないような拷問を今も実施していることが書かれていました。それを読んだ当初は半信半疑ではありましたが、少数派が多数派の国民を抑えるには、そういった非合法な手段によらなかればならないことが改めてよく分かりました。
で、アメリカはいつも通り、親米政権である限り、民主主義国家でなくてもOKだし。口先だけでアメリカが唱える民主主義によってその国の国民多数が支持する反米政権よりは、ずっと好ましいんでしょうし…。
でも、今回の事(イラク戦争のその後は)はアメリカにとっても予想外だったんでしょうね。フセインが倒れたことでアメリカの御し易い政権ができるどころか、イラクが政治的混迷に陥り、あってはならないイラクとイランの結び付きとは、大誤算でしょう!! 更にそれが世界中のシーア派を勢いづかせ、シーア派をこれまで弾圧しながら知らぬ振りをして過ごしてきた中東諸国の存在を揺るがす事態に発展するとは…まさに最悪の連鎖シナリオでしょう。
口先だけの民主主義ではなくて、本当に国民が支持した政党が政権を担う民主主義で生まれようとしているのかもしれませんが、その代償はあまりにも大きく、世界のパワーバランスが一変する可能性がありそうですね。目が放せません。アジアにおける中国のオーバープレゼンスもしかり、世界が変わる時、一部地域のことに限定できない時代です。日本がはっきりと変わりつつあることも実感する日々ですが、それ以上に世界は変革しているのを感じました。
さてさて、私は平和に生きていけるのでしょうか? 竹林の七賢のように隠遁するわけにもいかないし、これからの時代を生きていかねばなりませんね。う~む。
2006年02月12日
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