
一定水準の満足感をもたらせてくれる小説でした(笑顔)。まずまずというところでしょうか。
ただ、かなり厳しめに言うと、普通の水準での解決でしょうか。驚くような結末ではないです。ああっ、あのパターンね。と推理小説をある程度読んだことのある方なら、すぐにフフンっと頷けてしまうのがちょっと残念かも? 貴種流離譚とでもいうべき話だと、似たようなものをそれこそたくさん読んだことあるからなあ~。前巻が結構な勢いで独自世界に突っ走っていきそうだったので、別な意味で期待していたんですが…。その点については、せっかくの著者の博識が生かし切れていなかったように思えてしまうのですが…なんかもったいないです。
面白いことは面白いんですが、やはり徳間書店さんのノベルズの域を出ていないのかあ~とも言えるかもしれません。ここまでせっかくドロドログチャグチャ系の日本の粘着質的な地方風土を舞台にしながら、思ったよりはサラっとしているし、新青年のようなシニカルに人間の内面を捉えるような側面もない。まして、夢野久作のような完全に、全く新しい独自の領域に突っ込んだ天才の作品でもなかったです。
で、段々冷静に読んでいるとグノーシスの理解の仕方にもいくつかの間違い(?)が散見され始め、当初の博識さも薄っぺらな感じがしてきてしまったのは悲しかった。これは謎解きの進展と共に、相乗効果で私のテンションが下がってしまっていくことにも拍車をかけた。
とまあ、あまりに期待して読むとガッカリするかも? 通常の小説として読む分には、十分に楽しめるし、並以上だとは思います。但し、歴史に名を残すような傑作ではないなあ~。面白いけど、新鮮な感動を伴わない作品でした。図書館で借りて読めば十分でしょう。ブックオフで購入した割には、想像以上に面白かったんだけどね。
悪くはないので、ちょっとした異世界で遊ぶにはいいと思います。ある程度の読書家には、最後の最後で物足りなさが残りますが、それは無い物ねだりかもしれません。ちょっと生意気な感想を私もいっていますが、最初に期待していただけにちょっと惜しい!! でも、最近の中では、面白かったのは確かです。
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「黄泉津比良坂、血祭りの館」藤木 稟 徳間書店
こちらが前巻です。