2009年12月30日

「聖フランシスコ・ザビエルの首」柳広司 講談社

zabierunokubi.jpg

当然、タイトルからして聖遺物関係を扱ったものかと思ったのですが・・・。本の装丁はちょっとセンスいいかと思ったんですが、中身が酷いです。

本の内容はというと・・・。
とあるオカルト雑誌のライターが主人公。隠れキリシタンの村で発見されたフランシスコ・ザビエルの首。あることないこと、でっち上げる「ムー」のような雑誌のライターさんが取材に行くと・・・。

何故か、サビエルの時代へタイム・スリップ。但し、ライターの意識だけで当時の関係者の身体の中へ入り込み、テイミング良く事件発生。すると、ザビエルの思し召しか、ライターは関係者の意識を乗っ取り、三文小説よろしく謎解きをします。

そして謎解きが終わると、意識は現代へカムバックと相成ります。

もうご都合主義を通して、安易なSFですらなく、読んでいて情けなくなります。

まあ、小説なんで面白ければ、状況設定等どんな突飛でも甘受するぐらいの度量はあるつもりですが、これはいけません。

だって、著者の意図は、なんの予備知識もない無知な読者を想定し、歴史的な背景を説明しつつ、ミステリー仕立ての謎解きをしようとするもので、無知な人向けの笑止な歴史解説と、現代人的価値観で薄っぺらな歴史や宗教を解釈して、独善的な解説をするので読んでいてむかつきます。

謎解きをする以前に、思いっきり、その探偵役の登場も無理があり、説明の仕方もくだけ過ぎて、周囲から浮きまくっています。いきなり別人格が出て、現代風の解釈で現代的視点から、周囲への説得力もないままに勝手にしゃべり、解決したと言っても、なんだかなあ~。

近来稀にみる、お粗末さです。

ミステリーにもなってないし、SF以前で、同人作家さんレベル。コミケでは売れないだろうなあ~。ファンジンとかでやり直した方が良いかも?

題材は面白そうなのに料理するだけの力量が無かった感じです。もったいないなあ~。小手先の奇をてらわず、文体やプロットで読ませる読み物が読みたいなあ~と思う私でした。

これ外れです。

ザビエルの首 (講談社ノベルス)(amazonリンク)
ラベル:小説 書評
posted by alice-room at 19:13| Comment(4) | TrackBack(0) | 【書評 小説B】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今、泣いています、ワタクシ。
>>近来稀に見る、お粗末さ・・・

秋の帰国時に買ったんですよね、この本。
キャッチコピーと表紙(文庫版ですが)、それに
わが町はそれなりにザビエルとは縁があるもんで。
もちろんブックオフでの購入とはいえ、貴重なダンボールの場所をこの本で一冊分ふさいでしまった後悔の涙です。

でも、ま、ワタクシは管理人さんのような広大な
知識があるわけでもないので、無知勝ち(?)
になるよう祈りつつ読み始めてみましょう(苦笑)
Posted by OZ at 2010年01月06日 21:23
買われましたか、コレ!
私も思いっきり期待して読み始めたのですが・・・。う~ん?

期待が大き過ぎなければ、そこまで悪くないかもしれません。私は期待が大き過ぎてどうも騙された・・・的な感じがして、かなりきつめな感想になっていますので。

読む前から、期待感を削いでしまったら、すみません(お辞儀)。

読む人によっても、その時の気分によっても感想は変わりますから・・・・と軽く逃げ腰で語る私(笑)。

思ってたよりも、面白いことを願っていますね(笑顔)。
Posted by alice-room at 2010年01月06日 21:50
わはははは。
読み終わって思っていたよりは楽しめました。
ワタクシの場合、ここで酷評(笑)を読んでいたせいで(?)
ハードルが思いっきり低かったせいでしょうか。
ま、知識もあまりありませんしね。
他方alice-roomさんの怒りは多少なりともわかったような気もしました。

謎解きのいい加減さに関しては、主人公のキャラが軽佻浮薄なんで
それなりに見合っていて、あまり抵抗なかったですね。
だって、あれできっちり解かれたら、それこそ不自然って気もするんですよ~。

ダ・ヴィンチ・コードと同列に並べるのはさすがに気もひけますが、
エンタメとして史実にかかわると言う意味として。
そこからさらなる知識を求め「叡知の図書館」の扉を開ける・・・そんな
きっかけになってくれればそれだけで大成功なのではないでしょうか?!(笑)
ダ・ヴィンチ・コードはそういう鍵になりましたし・・・
これがなるかどうかは判断できませんけど。

ならないかな、やっぱり(苦笑)
Posted by OZ at 2010年01月14日 20:19
OZさん、こんばんは。
思ったよりも楽しめた感じで良かったですね。せっかく購入した本が、楽しくなかったら悲しいですもんね(笑顔)。

SFっぽくせずに、そのまま架空の歴史物にしちゃえば、かえって面白かったのでは・・・?という思いが強かったですね。

そうそう、歴史物もお好きでしたら「エルサレムから来た悪魔」ってのが宜しいかも?英国で歴史ミステリ取った作品らしいです。あまり賞自体を知らないのですが、これは結構楽しかったです。

後ほどブログにも書評を書くつもりですが、舞台は12世紀の英国が舞台。差別されながらも確固たる存在を示していたユダヤ人社会が子供の連続猟奇殺人の疑いをかけられます。

不穏な空気の元で探偵役として現れるのは、シチリアからやってきた女性医師(死体解剖等の権威)。

当時の時代背景的には、無謀っぽいようでいて、実によく調べられていて歴史的に有り得そうな形になっているのが素晴らしいです。

これはきちんとした歴史を理解していないと書けないのでは?という作品です。

登場人物もなかなか理性的であり、同時に俗っぽくていい意味で中世人らしく、興味深いです。

もし機会がありましたら、どうぞ! 英語が原書みたいです。そちらの方がお得意でしたら、原書でどうぞ(笑顔)。でわでわ、明日はキャッツ観劇で楽しみ♪
Posted by alice-room at 2010年01月15日 23:31
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