古書といったら、まずこの方でしょう。神田神保町を舞台にした小説を書かせたら右に出る者がいないでしょうね、きっと。
さて、いつものように舞台は神保町。本の探偵を自称する古書店主の元に持ち込まれる人探しの依頼。混沌とした戦後の古書業界、神保町界隈をある程度知っているなら、妙な親近感を覚えつつ、謎のある過去を持つ男に徐々に惹かれていきます。派手な殺人事件等とは無縁ですが、切ないまでの人間の人生が描かれています。
特にここでは、猥褻本の印刷が絡んできたりします。もっとも猥褻本と言っても、内容はピンからキリまで。私の所にも大正の頃の法律書があるが、あくまでもアカデミックなもので用語にはラテン語まで使われているのに、売淫(売春)についての箇所がなんと、伏字になっている。×××って。こんな本にまで猥褻という概念を見出す当時のお役所の姿勢には、ある種の狂気に近いような執念を覚えますね。現代のヘアーが見えた、見えないなどという即物的な次元ではないのがまさに時代を感じさせます。
一時は卒論のテーマに考えたもんなあ~、「売春」か「賭博」かと。どちらも取り締まる為の根拠がはなはだ恣意的で、国家による建前論的なものが鼻について毛嫌いしてたもんなあ~。根っからの自由主義者だったし、私は。統制経済も大嫌い!! それでいて官僚を目指していたのは…(苦笑)。大いなる矛盾って奴ですね。話がそれた。
読んでる最中は確かに興味を惹くんだけど、冷静になってみるとどうなんでしょう? ラストはある意味しっかりと解決しているんだけど、探偵の役周りがちょっと…。あまり意味がないような気もしたりして…。
いつも以上に読者を選ぶ本でしょう。古書マニアでも一部の人だけが面白いと思うかも?私自身もそれほど面白いとは思わない。時間のある時にちょっと読む分にはいいかな? 古書に興味のない人には、つまんないだろうな~この本。絶対に読まない方がいいと思う。かなり特殊な本かも。全体としてあまりお勧めしません。
アレレ…amazonにもないのかな?そんなに古い本でもないんだけど。
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「古書街を歩く」紀田 順一郎 新潮社
2006年02月28日
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