
今年の夏、ようやく数年振りにシャルトルに行けることになりまして(6月22日より8日間)、嬉しさいっぱいでゴシック建築の本を再び読むことにしました。
そのタイミングで見つけた本です。クセジュにこんなのあったの知らなかったのですが、それもそのはず、今年出たばかりの本でした。
しかし、さすがはクセジュ。新書なのに、その内容の質がなかなかに高い! よくぞこの厚さで、ここまでの内容を詰め込んだものと拍手したくなります(笑顔)。
それっくらい、類書に見られないだけの学術レベルの高さと、昨今の学問の成果を取り込んでいる感じです(もっとも、素人の私の目には、そう思われるという視点なのであしからず)。
実に勉強になるかと思います。
ゴシック建築たる、大聖堂の建築を可能にした社会的・歴史的・経済的背景を初め、そこに描かれた図像学的な意味等、基本は押さえてある一方で、美術史・建築史的なものよりも歴史的な視点の方がより重点を置かれているかもしれません。
シュジュが元にしたディオニュシウス文書(ディオニシウス文書)の光の形而上学についても、きっちり説明されているし、ゴシック建築を可能たらしめた『棟梁』についての説明も過不足無く、なかなか正確だと思いました。
一方、本書の特徴としては、聖堂参事会についての説明に、一章を丸ごと費やしています。
私有財産を保持しつつ、神へ使える集団組織であり、長期に渡る大プロジェクトである大聖堂建築を支え、且つ可能にした重要な要素でありながら、類書によっては全く触れられる事さえなかったりしますが、本書はかなり詳しく述べています。
この章の為だけにでも読んでもいい本です!
あとジュベについても、かなり詳しいです。これも類書にはあまり見られない点ですね。
あとそれほどまでに素晴らしい大聖堂建築を破壊に導いた、その後の歴史についても淡々と、しかし、鋭く記述されています。イギリス人とは違い、皮肉の一つもありませんが、なかなかに手厳しいですよ(笑)。
でも、良書だと思います。
しかし、エッセンスが凝縮されているわけでもあり、本書を堪能するには、是非、類書も読まれることをお薦めします。本書だけ読んで、本書の内容をきちんと理解できる、ということはかなり難しいと思いました。
あ~、この本読んでいて改めて、シャルトル大聖堂行きたくなりました♪
本書で興味を持った箇所は以下で抜き書きメモ:
大聖堂~読書メモ
【目次】大聖堂 (文庫クセジュ)(amazonリンク)
序 大聖堂とは何か
第1章 西暦一〇〇〇年以前の司教とその教会
司教の権能
どのような建物にするか
第2章 聖堂参事会、大聖堂の魂
聖堂参事会の成立
神を讃える仕事
教育事業
慈善事業
参事会境内
第3章 大聖堂の黄金時代(一一四〇~一二八〇年)
隆盛期
聖なる思想家たち
新しい建築術
発展過程と伝播
内部空間
ファサードのメッセージ
建築作業の流れ
資金調達
第4章 傷ついた大聖堂、再発見された大聖堂
大義をかざす偶像破壊者たちの蛮行
ロマン主義時代の再発見
今日の大聖堂
ブログ内関連記事
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「凍れる音楽-シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller Pitkin
「ストラスブール」宇京頼三 未知谷
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
中世思想原典集成 (3)~メモ「天上位階論」「神秘神学」
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「大聖堂」(上・中・下)ケン・フォレット ソフトバンク クリエイティブ
その他、うちのブログ内にはいっぱい・・・(笑)。
それは良かったですね!!!
実はワタクシ、4月半ばに方面的には同じ方へ
行きます。
シャルトルが旅程に入るかどうかは未定ですが。
とにかくその前にこちらで改めて勉強しようと
思っております。
お世話になりまーす!
OZさんは4月中にヨーロッパですか?
いろいろと楽しんできて下さいね。私もフランス国内を少し移動するか、イル・ド・フランス辺りでのんびりゴロゴロして過ごすか、思案中です。
カルカソンヌとかも行きたいけど、旅行中はのんびり街中をうろつくのも好きなので、適当に楽しめればと思っています。
とかいいつつもオペラ・ガルニエでの上演演目をチェックしている・・・そういう奴です(自爆)。
お互い、楽しい旅行になるといいですね♪
日本人にはなじみのない「聖堂参事会」もそうですが、きちんと音楽関係も押さえてあるところが個人的には気に入りました(ちなみにマショーはランスのノートルダム大聖堂の参事会員でもありました)。買おうかなと思っています。また英国ではこの中世以来の参事会組織がかたちを変えつつも国教会組織として引き継がれていて、それゆえ大陸ではすでに見られなくなった、広大な敷地にチャプターハウスや回廊をそなえる中世の大聖堂建築の面影がよく保存されていることにも言及している点も好印象でした。フランスの記述中心なのはしかたないとしても、たとえばサンピエトロ聖堂が「西向き」に建てられているとかはまるで知らなかったので、新鮮なおどろきでした(ふつうは「東向き」ですよね)。
ちょっと脱線しますが、中世英国では「修道院として機能していた大聖堂」というものがあり、カーライル、カンタベリー、ダラム、ノリッジ、ウィンチェスター、ウースターなどがそうです(ノリッジ大聖堂には英国最古の司教座があるとか)。でもこれは英国特有の現象だと思います。
シャルトルに行ったら、「国際オルガンコンクール」でも使われるという、立派なオルガンの音も聴けるといいですね。
さすが、チェックされてましたか(笑顔)。
私も図書館で借りて読んだくちですが、これは購入して手元に置いておこうと思います。
>広大な敷地にチャプターハウスや回廊をそなえ
>る中世の大聖堂建築の面影がよく保存されてい
>ることにも言及している点も好印象でした
私、イギリスにはロンドンしか行ったことがなく、是非、今度はロンドン以外のところもいろいろ回ってみたいと思っています。
当初、BAに乗って、ロンドンにも寄る予定でしたが、別のエアラインになってしまい、そこだけは残念です。
>ばサンピエトロ聖堂が「西向き」に建てられて
>いるとかはまるで知らなかったので、新鮮なお
>どろきでした(ふつうは「東向き」ですよね)。
おお~、そういえばそういった記述がありましたね。うかつでした!
太陽が出てくる方向に向かっているんでしたっけ?
シャルトルのオルガン、そうなんですか。
よくシャルトルで録音された音楽コンサートのCDとかも見かけますが、今度、もっと注意して聞いてみます。
世界的な大会の会場にもなりますものね。いやあ~、あまり物を知らず、少々お恥ずかしいです。
せっかくの機会ですし、楽しんできたいと思います(笑顔)。地下のクリプトも行ってみたいなあ~。