先日、古書店で全集をバラにして売っていたので面白そうなのだけ、数冊選んで購入してみたもの。6巻は副題に「18世紀の女」とあり、娼婦や遊郭に関する章がある。
そうだねぇ~、まずは想像以上に読み易い本でした。18世紀における貴族から庶民に至るまでの、生活の中における性風俗を紹介してくれます。貴族にとって自分の妻や娘を領主に差し出すことがいかに自慢になる名誉であり、金銭的な利益や役職によって報われる投資であったかなどを説明してくれます。
また、生きるだけで精一杯であった庶民がかりそめの憂さ晴らしに野獣の本能の赴くままに性欲の発散を行い、お祭りなどの祝日には処女があらかたいなくなった。などという記述も少しは関心を惹くものの、いかんせん、小市民的な枠を出ず、どうもイマイチ。
個人的には古代ローマ帝国のような奴隷制に支えられた爛熟且つ退廃した性風俗の方が興味深かったりする。どうにも本書の視点は、薄っぺらい感じがしてならない。庶民の乱れた(というよりも止むを得ない点も多々ある、混沌とした)風俗は、目新しいものでもなく、以前読んだ紀田順一郎氏の「東京の下層社会」においても夏に戸を開けて寝ていると、誰だか分からない者が侵入してくるので妊娠しても父親が分からない、などといった記述があったのと実質的に差がない。
現在を中心に考えると、特別なものに思えるが歴史的にみるとなんでもなく、それ以上の深い考察もないので、どうも私などには「だからなに?」としか思えなかったりする。本書で描かれる風俗は、今でも幾つかの外国に行けば、普通に見られる光景であり、むしろ裏観光案内的な俗っぽいアングラ情報誌の方が、庶民的な風俗資料としてははなはだ興味深いと思う。
そんなわけで、私が発禁になった雑誌などを大切に保管(?)しているのも貴重な資料というわけなのである…誰に対するいい訳なのだろうか???
まあ、そういった方面の禁書図書館も面白いのだが、このブログからは路線がそれてしまうのでここでは触れないでおこう。変なサイトからのTBばかり増えるのも困るしね(苦笑)。そのうちに「叡智の禁書図書館 別館」とかいった名称で別ブログを作ってみたいかも。
と、いつものように話がそれているが、本書は図書館で読めば十分。図版が多いのが救いだが、それほどいい絵でもない。かさばるのが何よりも怖い私には、全巻購入しなくて良かったと胸をなでおろしている。
風俗の歴史 6―完訳(amazonリンク)
東京の下層社会(amazonリンク)