2010年04月11日

「ドグラ・マグラ」夢野久作 社会思想社

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実は今回読んだのは、iPhoneの豊平文庫で青空文庫にあったものを読みました。本としては、このインパクトのある表紙の現代教養文庫と沖積社の復刻版持っていて、それぞれでも読んでるし、三一書房かな? あそこのシリーズも部屋のどこかに転がっているはず・・・。

都合5、6回目ぐらい読了しているでしょうか?

最初に読んだ時の衝撃(3日間部屋に閉じ籠り、読みまくってました)はもう薄らいでいますが、何度読んでも心というか頭に、何がしかの謎を・・・、不思議な感覚を抱かせます。

しばしば言われるような、『奇書』という感じはない。逆に読めば読むほど、その論理的で巧妙なプロットに驚嘆させられる自分がいます。

ただ、誤解を恐れずに言えば、巷に氾濫するようなあざとい技巧的な類いのものではありません。

むしろ、芥川の「藪の中」のように、同一の現象・事実も個々に異なる『人』という媒体を介して把握・認識される際、その『人』に由来する独自の解釈があり、その個々に異なる解釈を通してしか、その現象を知り得ない以上、見方次第でどうにでも取れるのはごく自然なことです。

本書の素晴らしさは、その当たり前のことを最大限活用し、日常の生活で『事実』は揺るがない、などと誤解している人にその誤りを否が応でも納得させうる説得力を有するのが非凡なのだと思います。

日常の常識等が、あっというまに音を立てて崩れていく、その過程で普段、それを認識していない人には、自己の拠って立つ基盤の脆弱性の怖さに気づき、う~んとうなって倒れてしまう。・・・そ~んな感じのように思われます。

たぶん、ちゃんと本書を何度か読み返している人なら、同意してくれるような気がします。

途中でやめた、1回しか読んでない、等々。
たぶん、上記のことを気づいていないかもしれないです。

勿論、そんな感想なんかよりも、読んでいてこのゾクゾクする感覚は、久しく他の小説では味わえないからなあ~。この「エロ・グロ・ナンセンス」というなんともいえない俗っぽさやチョンガレ節等々。

個々の人々の真摯な生き方と相俟って、なんとも言えない対照性が際立つうえに、人間の屈折した心理をえぐるように、明快に分析し、秩序立てて説明していくその過程がまたたまりません!

電車内で読んでいて、読むのを途中で止めるのが惜しくて、会社を休もうと思ったことも多々ありました(笑顔)。

それに歴史怪奇趣味などもこれでもか&これでもか、とまぶされていて、劇中劇とかそ~んな簡単なレベルではありません。本書の中に、ありとあらゆる読み物が混沌として入り混じり、それがよくよく考えてみると、全部が全部、伏線であり、本編であり、個々に完結していたりする。

個々の内容が相互に作用して、益々、作品全体の深みを増していくその有り様は、確かに類をみないと思います。

でも、読者を選ぶのも確かでしょう。

それなりに頭の訓練(本質的な意味で考えて生きている人)をしている人でないと、辛いと思います。常識で判断せず、常に自分の中での価値尺度に基づいて行動を決めている人、いける人なら、OKかと♪

映画も観る人によって、だいぶ評価が異なるようですが、映画で衝撃を受けて、本書を読み、更にしばし茫然自失に陥りそうになった私としては、本も是非、読んで欲しいですね。

年齢は問いませんが、精神年齢は問われるかもしれない作品かと思います。小説としては間違いなく、日本で最高だと私は信じています。外国の作品で私が読んだ中のものと限定するなら、世界で一番の推理小説でしょう!!

うん、数年に一度は思い出したように読んでしまう作品です。何度読んでも素晴らしいと思える作品ですね♪

ドグラ・マグラ (現代教養文庫 884 夢野久作傑作選 4)(amazonリンク)

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posted by alice-room at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説B】 | 更新情報をチェックする
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