
ベルギー王立図書館所蔵「ブリューゲル版画の世界」展 公式サイト
元々、この手のは大好きでしたが、今までブリューゲルというと「農民のブリューゲル」というイメージが強過ぎて、今回の展覧会を見るまで誤解していました。
いやあ~、想像してた以上に素晴らしい!! 公開初日の土曜日に行ってきて大正解でした。

作品の解説にボス風とかコメントされていたものがありましたが、非常に近しいものを感じる作品もあると共に、いかにも中世末期の時代背景が濃厚に反映した宗教的なテーマを扱った作品などもたくさんあり、実に&実に楽しい!!
グーテンベルクの印刷術が広まり、印刷物がすごい勢いで広がる時代、まさに宗教改革と重なっていく時代でもあり、いやあ~風刺がこのうえなくピリリと効いて絶妙の味わいを出してます。
なんとも楽しい♪

「ルターの首引き猫」を彷彿とさせる作品もありましたねぇ~。
解説にもありますが、当時のアントワープを中心とした国際的な商業ネットワークに組み込まれて、当時としては相当大規模に流通していたことが分かります。
今回の展示作品にあるブリューゲル周辺の作品というのは、それだけ知名度の高くなった彼の模倣者・追従者達のことでしょう。当時は著作権とかないですからね。人気があるとすぐパクられたんだと思います(笑)。

エミール・マールの本でも触れられていましたが、宗教的な寓意やシンボルなどを現す意匠(デザイン)等は、共通且つ共有されるべきものであり、そもそも個人がどうこういう筋合いのものではなかったりする。
ルネサンス的な個人的才能の発露という概念自体が、却下されていた時代を引きずってますからね。
マールの「中世末期の図像学」とかに、ブリューゲルの作品も重なるところがありますね、やはり。
あとね、個人的には「阿呆船」とかあの系統の作品の流れを引くものが、今回の展示にたくさんあって、すっごくドキドキして堪能しちゃいました♪
そういやあ~稀覯本フェアで売ってたな、「阿呆船」は。改めて欲しいなあ~。

上の作品なんかもそうですが、大きな魚が小さな魚を全て飲み込んでいる姿は、強者が弱者を虐げていることを現した当時の諺とかだったそうです。
時代は変わっても、人の世界に変わりはないですね♪
今も搾取されるのは、庶民ってことでしょうか?(ニヤニヤ)
他にも実にたくさんの当時の世相や教訓・諺などを現した作品は、読んでいて共感でき、絵柄も繊細で興味深くて、印象に残ります。
今の人が見ても十分楽しめますね。
もっとも、教養がある人が見れば、それ以上に深~くジワジワと楽しめそうです。これは強くお薦めしますネ。
個々の作品につけられている説明も、結構詳しく、みんながそれぞれの作品の細部にまで目を凝らすので、行列がなかなか進まないのが残念ですが、これは必見です。
行ける人は、絶対に行っておくべきでしょう!!
あとね、図録が更に解説詳しくて超・楽しい♪ 印刷も良い図版が多数載っていて、結構詳しい説明がたくさんアリ。これで2500円なら、買っとくべきでしょ。普通のこの手の本よりは、ずっと良いです。
但し、読んで楽しめる人ね。ノリで買う人はもったいないと思うなあ~。
余計なお世話ですが。
あとあと、この展覧会のパンフ。
これは絶対に持って帰るべき。強調しておきます。これ金と手間隙かけてるよ、絶対に。広げて部屋に飾っておけば、十分にポスターになりますもん。
Bunkamura、名前に負けず、しっかり文化してるねぇ~。以前のモロー展もここのは良かったけど、いや、西武があっけなく文化事業をたたんじまったのに比して、今、このご時勢にこういうのをきちっとやっているのは、本当の意味で大変だと思いますが、今後も期待しちゃいますね。本当に。
いやあ~、もう一度ぐらいは行っておきたいな、これならば。
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