本国フランスにおける、ジャンヌ・ダルクの話題がこれほどまでに活気のあるものとは知りませんでした。
歴史上の人物、悲劇のヒロインといった枠を超えて、既に伝説上の(ある種実体のない虚像の)人物になってしまったが故に、時代を超え、立場や主義主張を越え、誰でもが自分の見たい姿を映し出す便利な存在になってしまっているかのように感じました。
まあ、いろんな説を唱える人がいるのは別にジャンヌ・ダルクに限った事ではありませんが、学者の方々がお好きな、こまごまとしてややもすれば矮小になりがちな話題で、それぞれが派閥を作って争うかのような部分の記述は、本書のような新書で書くのもどうかと思うが、ある意味面白いことは面白い。
本書を読んで、へえ~と納得したり、改めて知ったことも多かったので私には読む価値のあった本でした。本当はフランス行く機内で読むつもりで買ったんだけど、「狼と香辛料」の2期を一気に見てて読む暇なかったりする。
さて、最初になるほど~と感心したのは、ジャンヌが英国側の宗教裁判で異端と認定され、火あぶりにされた理由ですが、私はずっと単純にシャルル7世に負けた腹いせとメンツの問題だと思っていたのですが、とんでも間違いですね。
ランス大聖堂で戴冠式を挙げて正式の王となったその事実を無効にする為、その実現に寄与したジャンヌが異端者であるという別な事実を作り上げようとしたとは、思ってもいませんでした!
そうすることで、そもそも群雄割拠して国家としての枠組みも定まらぬ当時のフランスでの支配権を一旦ひっくり返し、再度、確保しようとしていたとは・・・・。実にロジカルな思考ですね。ふむふむ納得。
だからこそ、高い金でジャンヌを買い取り、性的圧迫を加えて男装をさせたり、異端としての外形的証拠を積み重ねていたとは・・・。
こないだ某国がやっていたことと重なるなあ~。
サダム・フセインを薬漬けにして、わざわざみすぼらしい恰好で臆病者として捕まるように演出し、それを世界中のメディアに流していたりとかね。
某満州で、特務機関が移住していた日本人に危害を加え、あたかも現地住民による暴動であるかのように仕組んだこととか、いつの時代も政治権力が絡むと人のやることは愚劣になるもんです。
まあ、そちらはおいといて。
田舎者の村娘が、王族や貴族等高位の人達の前でも、ものおじすることなく堂々とし、馬を駆り、戦場を駆け抜ける姿は、あまりにも非日常過ぎる訳ですが・・・、その理由として、ジャンヌがそもそも王女であった、な~んて説もあるそうです。
故あって、村人に預けられたが、さる筋からきちんとして教育を受けさせるべく働きがあり、またそういった助力無しに「神の奇蹟」で村娘が、とてもではないが王族に謁見し、軍隊の指揮を任せられることなど有り得ないというのです。
しかもしかも、ジャンヌが王室の血を引く私生児であるという証拠は、過去の裁判で残されており、その調書がバチカンの秘密書庫に残されているのを見つけた!という人物まで後に現れてきたりします。
出た~、出ましたよ!
バチカンの秘密書庫と言えば、何があってもおかしくないからね。この手のネタ好きな人、多過ぎぃ~(笑)。
もっとも、あれだけ騒がれたテンプル騎士団の裁判の判決文がついこないだ見つかった、なんてことを平然と言ってしまうぐらいだから、何でも有り得てしまうのだけれど・・・。『事実は小説より奇なり』を地でいく場所ですから。
そうそう、更に凄い事も本書には書かれていて、ジャンヌ・ダルクは火刑後も生き残って、地方の領主と結婚して墓まであるとか?
おいおい~、イエス・キリストの墓のある青森ですか? それとも大陸に渡ってジンギス・カンになった義経でしょうか?
まあ、ヒットラーはエバと死んではおらず、生き残って第三帝国再興の機会を狙っているとか・・・いやはや???
みんな好きだなあ~そういうの。
私も嫌いじゃないけどね(笑)。
確か、部屋のどっかにジャンヌ・ダルク裁判の邦訳があったはずなんで、今度探して読んでみよっとどこにあったかな?
そういやあ~こないだも海外のニュースでジュンヌ・ダルクの骨とおぼしきものの鑑定で騒がれていたけど、まだまだホットな話題のようです。
著者は大真面目で書いてますが、私のようないい加減な人でも楽しく読めますので暇な方どうぞ! 絶版みたいだけど、どっかで売ってますよ。
【目次】ジャンヌ・ダルクの神話 (講談社現代新書 (642))(amazonリンク)
プロローグー現代に生きる乙女ジャンヌ
1オルレアンの少女
2ジャンヌ・ダルクの謎
3変容するジャンヌ
4四つの裁判
5第五の裁判ー新しい神話の誕生
エピローグー歴史に生きる少女
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