
「The Toyota Way」を読んで大変感銘を受け、こりゃ絶対にトヨタ生産方式の生みの親、大野耐一の本著を読まねばと思い続けておりました。ようやく読めました!(笑顔)
しかし、「The Toyota Way」の華麗な、というかグイグイと人を惹きつけてやまないほとんどエンターテイメントじゃなかろうかと思うような文章・内容と異なり、本書は実に淡々と書かれています。
最初、もしかしてコレつまんない本?とか失礼ながら思っちゃいました。でもね、だてに版数を重ねてベストセラーになっていません。決してうまい文章ではないし、さらっと読み進めていけますが、徐々にどんだけの情熱と苦労をして、この画期的な生産手法を開発し、それを定着させたか、ひしひしと伝わってくるものを感じます。
半端じゃない情熱を注いでます。
しかも、自分の与えられた権限の範囲内で根気強く少しずつ実績を積み重ね、信頼を得て、自分の昇進とともにそのやり方を徐々に広げて、最終的にトヨタ全体から、取引企業に到るまで浸透させていくその様は、非凡としか言いようがありません。
どっかの会社のようにトヨタ生産方式を導入して、すぐに結果が上がりました、な~んて言ってるところは、同時にすぐにそれが機能しなくなって、効率が低下して元に戻るのは火を見るより明らかでしょう。
著者が試行錯誤しながら、トヨタ生産方式を広めていく過程では、10年・20年のスパンで物事を捉えてその間、継続した熱意と情熱でそれを改良しつつ、広めていった訳です。同じことがトヨタ生産方式入れた企業でできたとは、私にはとても思えません。
だから、他社はみんな形だけ入れて失敗するんでしょう。
言わずとも当然のこととして、理解され、骨肉化するまでには、エヴァンジェリストの存在が必要なんだと思います。同時にそれを理解し、サポートしてくれる上司(経営陣)の存在がそれを可能にする為の必須条件です。
現在の日本の企業で、そういうのがどこまで出来るのか甚だ疑問ではありますね。私的には。
逆に、そういう意味でトヨタは凄い企業だったんだと思います。
著者を評価し、現場から猛烈な批判や反対が挙がっても、著者の行動を支持し続けた上司・経営陣があったればこそ、トヨタ生産方式は生まれたとも言えるでしょう。トヨタ生産方式は、トヨタが環境に適応して生き残るべく後天的に身につけたものであり、尊重すべきはそれを生み出すことを可能にし得たトヨタの企業風土、トヨタのDNAそのものでしょう。
最近の工場管理としては、一人で多工程を受け持つセル生産方式から、単工程を受け持つ方式へまた戻ったりすることもあるようですが、環境変化に応じて、変わっていけることこそが大切なのでしょう。
本書を読むと、そういうことを痛感します!
そうそう大量生産で有名なT型フォード開発者、フォードに関する言及が大変気になりました。今度、フォードの本も読まなくっちゃ。
なんか面白いですよね。海外で書かれたTOYOTA WAYを読んだら、大野耐一の本が気になり、それを読むと今度はフォードの本に向かうというのは・・・・不思議な連関関係?
でも、最初はつまらなさそうだった本書を読んで、初めてTOYOTA WAYではよく理解できなかった「段取替え」とかの意味が理解できました! そうか、生産量の平準化の為に、小ロットの方がいいというのがやっと腑に落ちました!
普通、どこでも工業製品は、ロットを大きくして大量生産することで原価低減するのが普通の為、ちょっと意外ですね。100円ショップなんて、まさに教科書通りの原理原則でやってますからね。(もっとも、それだけではあの値段にならないので、裏技を使っているわけですが・・・)
工場での生産管理に比して、どこの会社でも事務部門の管理というのは、定量的に処理できず、難しいものですが、だからと言ってそれを考慮しないのは怠慢なんでしょうね。
業務量の平準化と、ツール(機械等に該当)の使用に際してニンベンの知恵を付け加える。まだまだ私も十分にできていないもんなあ~。勿論、エラー時の対応はエラートラップ設定してあるものもあるけど、まだ一部だし、統一的にそういった仕組みを考えて、ミスの発生を極力防ぎ、発生時にすぐに止まるというのも、是非、取り込みたいアイデアですね!
まずは、自分の出来る事から始めていきましょう。
本書は、なんだかんだ言っても有用です。但し、出来上がったトヨタ生産方式そのものよりも、それを生み出す動機や過程、それを浸透させていく情熱と根気こそが一番学ぶべき事柄かと思います。
個人的には「The Toyota Way」を読んで、それから本書を読むほうがベターだと思います。
あとね、本書と同時に読んだ「動かないコンピュータ」とも共通する点が多々あるように思います。新しい技術に飛びつくよりも既に手元にある道具を改良して徹底的に使いこなす方が、生産性向上にとって有用であるというのは、ソフトウェアにおいても当てはまるような気がしてなりません。
勿論、セキュリティとか他のソフトウェアへの影響等、一概に即断はできませんが、レガシーシステムはバグがほとんど潰されてますからね。情報も巷に出回っており、必要な情報収集コストも非常に小さいものになります。
とは言ってもなかなか難しいのですけれど・・・・?
なお、本書は実際は別に書いた人がいるようですね。勿論、大野氏が全面的に関与して書かれているのは確実だと思いますが。余談まで。
【目次】トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして(amazonリンク)
第1章ニーズからの出発
第2章トヨタ生産方式の展開
第3章トヨタ生産方式の系譜
第4章フォード・システムの真意
第5章低成長時代を生き抜く
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「The Toyota Way」Jeffrey Liker McGraw-Hill
「トヨタ」日本経済新聞社
「トヨタモデル」阿部 和義 講談社
「トヨタ流最強社員の仕事術」若松義人 PHP研究所