ちょい期待してたんですが・・・。本書は世界の有名な国際都市をテーマにして出された企画の一冊で、内容的には都市にまつわるエッセイといったところです。
内容は・・・特に無いです。
都市の住民達の何気ない日常の息遣いを、歴史的な背景を紹介しつつ、伝えようとしているようにも見えますが、全く内容がなくつまりません。最後まで読破しましたけど、基本、時間の無駄かと。
悲しいことに当時の即時性・同時代性を感覚的に伝えようとしたこと、それこそが、もう20年近く前の本だと、致命的にズレを感じさせてしまう。
今年の6月に行った限りでは、あちこち裏通りも歩き回りましたが、著者の感じたものとは明らかに違うことを痛感します。その悲しさを裏打ちするように、著者がパリと比較して語る日本の姿も、当時と今は全く異なり、日本もパリもどちらも、実態にそぐわない描写となり、ますます本書の価値を落としています。
加えて、歴史的な背景の説明も一般向けへの分り易さに重点をおいたが故に、薄っぺらでその点からもわざわざ本書を読む価値を見出せません。
なんか、いろんな意味でとっても残念な本です。出版社の企画が浅はかだったのでは?と思わずにいられないほどです。文藝春秋70周年記念の企画らしいけど、よく持ったなこの企画レベルで70年。別な意味で感嘆せずにいられないほどです。
本書を読んで唯一私にとって勉強になったこと。
中世いらい橋といえば、その上に家屋、とくに貴金属商の家々が立ち並ぶのが、常識であった。その姿はいまでも、たとえばフィレンツェのアルノ川にかかる、ポンテ・ヴェッキオに見ることができる。敵が川の向こう側から攻めてくれば、川のこちら側へ、川のこちら側から襲ってくれば、川の向こう側へと、いつでも貴金属を手に逃げられたからである。本書のこの部分を読んで、長年の疑問が氷塊しました。なんで、フィレンツェのあの橋の上に貴金属店があるのかずっと何年も気になっていたのですが、そういうことなんですね。ふむふむ、納得です。パリ (世界の都市の物語)(amazonリンク)
【目次】
1 着いたその日から、パリ市民―鏡の文化論
2 才子は馬車に乗り、天才は歩く―十八世紀パリの生活文化
3 パリの原風景―中世のパリ
4 十九世紀の輝き―近代のパリ
5 二十一世紀に向うパリ―五本の柱