2006年04月14日

「肝盗村鬼譚」朝松 健  角川書店

最近小説やらホラーやら、読み物系のものを読んでなかったので久しぶりに読んでみました。軽~い気持ちで読み始めたありがちなホラー物だったんですが、どうして&どうしてなかなかしっかりした骨太の構成。読み易いけど、しっかりとしたスタイルを持って読者を惹き付ける文章力は侮れません。

角川のホラーっていくつか読んだことあるんだけど、薄っぺらな現代生活の表層的なちゃちな怖さが多くて、暇つぶしにはなっても読書した満足感がないんだけど、これは違っていました。ちゃんと小説を読んだという満足感がある本でした。

私の嫌いだけど、何故かねちっこくて惹かれる日本固有の土着的な風土と地方の深い精神性に根差した宗教的な遺風や建築物、慣習などなど。八つ墓村とは言わないまでも基本だね、基本! 

地元にある大きな神社の神主を代々務める一族とか、その一族に伝わる風習や一族間の明白且つ歴然とした序列とかね。お約束だけど、まさにこれなくして何の日本かってね! 冠婚葬祭と来た日には、本家を代表しまして・・・とか挨拶しちゃうし。あっ、これうちの実家の話ですが、都会に逃げて根無し草になると忘れてしまいますが、社会共同体って大変です、マジに。

そういった北海道の忘れ去られた村が舞台。怪しげなその土地にだけ伝わる真言宗の寺の跡取りが急遽、都会から数十年ぶりに村に戻ってきたことを発端に、次々と不可解な出来事が・・・。

正統派のホラーなんですが、描き方がうまいのと背景に盛り込まれた知識が非常にリアルな感覚を呼び起こして、自然だったりする。おまけに村の隠された歴史や、眉唾ものの古文書など、道具立てもバッチリ! かなり楽しめるんじゃないかと思います。

ネタバレになっても困るので、ポイントには触れませんが、先日私が行った埼玉の高麗神社、なんとそこの地名と神社名が出てくるのは奇遇といおうかなんといおうか、ちぇっ私が使おうと思ったのに・・・先にとられたか。な~んて思ったりして、でもいい線行ってると思います。

スプラッターとか、ああいうホラーが嫌いで正統派のじっくりと精神の底からじわじわくる、怨念とでもいうべき粘着系の怖さが好きな方なら、是非!!

あとね、読み終わってあとがき読むまで知らなかったんだけど、この著者って国書で「ラブクラフト全集」や「アーカム・ハウス叢書」「世界魔法大全」を担当していた編集者さんだったらしい。なんかおおっ~知らなかったぜ、と思っちゃいました。

紀田順一郎氏にも師事してたそうだし、こやつもどこからどうみても、そういう人なんだね。ふむふむ、思わず納得しちゃいます。そりゃ、そこそこのものを書かれて当然ですね(えらそうな私)。

しかもしかも、この著者の名前もあのアーサー・マッケンからとったとは・・・こりゃ、もう参ってしまいました(笑)。今まで知らない私がモグリですね。今後は、ちょっと注意して著者の本を読んでいってみたいと思います。まあ、ほどほどに期待しつつってとこでしょうか。

素直にこの本は面白かったです。正統派ホラー好きなら、楽しめるでしょう、きっと。

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posted by alice-room at 22:38| 埼玉 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>・・・先にとられたか。
 地形や怨念も良いですが、、やはり、alice-roomさんには、ダヴィンチーコードに対抗して、絵画、彫刻に千年の謎が仕込まれてるというよな話を創っていただきたいです。私は小額ですが株や外為投資してまして、相場の格言は古今東西問わず、オカルトめいてるなと思います。日本のは、山と潮、修験道絡みが多いですね。日光東照宮はお猿さんを始め、相場の謎が色々と仕込まれているそうで。

国書刊行会、公式サイトを見ると、「前衛出版社」とありますねえ・・
私は、歴史とオカルトの会社と思ってましたが、元々は左派なんですね。サブカル系は左派の方が運営されてるのが多いですが、反キリスト教社会ってので一致するんですかねぇ・・
Posted by 印南野きつね at 2006年04月16日 09:40
印南野きつねさん、こんにちは。すみません、口先だけで創作活動は、学生時代以来やったことないんです。いくらでもやろうと思えばできるはずなのに、自分に対して言い訳ばかりしています(苦笑)。

でも、日光とか修験道とかは確かに素材として面白そうですよね。まつろわぬ民でもありますし、漂泊民的な側面も魅力的ですね!

国書って、そうなんですかあ~。学生時代から読んでましたが、ぜんぜんそういうの気付きませんでした。もっとも、おっしゃる通り、サブカル系ってかなり左翼崩れ(?)の人が多いみたいですね。私は、サブカル系好きなんですが、どちらかというと右系っぽいかも? 
既成のものに捉われるのは嫌ですが、何でも反対っていうのもアレですし・・・。

それはおいといて、何かプロットぐらいはまず考えることを実行してみます。何か行動しないと、一生何もしないまま終わりそうですし・・・(それだけは嫌ですし(笑顔))。
Posted by alice-room at 2006年04月17日 12:58
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