実際、そこに取り上げられる対象の数やその文献の範囲は、壮大で素直に凄いなあ~物知りだなあとは思うのですが、なんといえばいいのでしょうか、それぞれについて語られる内容が極めて簡素。簡潔というと良く聞こえてしまいますが、メリハリをつけてもっと突っ込んでくれればいいのにと思うことが多々あり。本来はもっと&もっと魅力的な個別の「魔」について感情移入ができない。要は、面白いと楽しめるほど語ってくれないんですよ。
そりゃ、文化的な比較に重点を置いているのかもしれないですが、しょせんは論文ではなくてエッセイみたいなもんでしょう。読んでて面白くなければ、この手の文章は価値が半減してしまいます。著者の博識さは行間から滲み出ていますが、題材の採り上げ方がマズイと思う。
ちっても面白みが伝わってこないし・・・。平妖伝、捜神記、唐代伝奇集、千夜一夜物語、死者の書、ケルト妖精物語、フランス幻想民話集等々、今ここで挙げたものの100倍以上もの書名が文中には挙げられていると思いますが、私が読んだものも多く、読もうと思っているリスト(=読んでないもの)に入っているものも多くて著者を尊敬しながら、読んでいたんですが、採り上げ方がねぇ~。やっぱりつまんない。
絶対にこれだけ読まれているんだから、書けるはずなのにねぇ~。たくさんの引用文献は素晴らしいが、それ以上の価値が見出せないのが悲しい、悲し過ぎる(涙)。
結果として、「魔」というのは何なのか?それも私には分からなかったし、ただ世界中の文献からの列挙で終わってしまっている感じがしてならない。どうせなら、もっと内容を紹介したり、メリハリつけて時々は突っ込んだ解説してくれればいいのに・・・。
とにかく不満だらけです。読み易いのですが、これだけじゃ、読んでも意味ないでしょう。書名の一覧だけ、使えるかもしれません。新潮社のは絶版になってるようですが、講談社学術文庫で同じもの出ているようです。でも、これは本当に残念です。
【目次】
ナッツ(精霊)の国で
魔の創始、魔の定義
エジプトのヘビ、中国のトラ
龍の階層化と発展形
自然現象の魔化
吸血鬼伝説
狼男、ヒトトラ、月
アスーラとアトラス
鬼子母神など
スリランカの魔たち
ネパールの魔、バリ島の魔
西欧中世の魔女
魔法=錬金術
呪文・護符・仙人
ヒンドゥー圏のリシ=聖者
イスラーム圏の魔術師
西欧の妖精たち
狐狸、河童、山姥たち
十王、地蔵、座敷童子
鬼から化猫まで
日本の幽霊たち〔ほか〕
「魔」の世界(amazonリンク)
この本は、僕も持っています。少し読みかけて中断したまま10年以上経ちましたので、内容は全く覚えていません。(苦笑)
成る程、あまり面白い本ではないのですね。
あらためて目次を見ますと、このページ数で収まる内容ではないと思いました。
講談社学術文庫じゃないですか?
私はこの本で枕中記を知るまで
芥川の「黄梁夢」が原典だと思ってました(恥)
私なんか、それ以前の段階で原典のことをほとんど意識していなかったものですから、正直申し上げてもっとお恥ずかしいです(赤面)。芥川氏の作品は王朝物や今昔物語などの翻案物が多いのを知っていて、中には原典を読んでいても気付かないものさえあるのですから・・・そんな私って???
でも、この本は本当にたくさんのことに触れられていますね。著者が本当に造詣が深いことが推測されるだけに、もっと教えてくれればいいのに・・・と思わずにはいられませんでした。範囲を絞って詳述されたものを是非読みたいと思わずにはいられません。