
なんか今年は、版画関係の展覧会が多い感じがしますね。先日のbunkamuraのブリューゲルも最高でしたが、今回のデューラーも実に内容があって、好きな人だったら、たまりませんね!
ただ、宣伝が地味だからかなあ~。そりゃ、ブリューゲルのような奇怪なキャラは、あまり見当たらず、一般人受けしないこともあるのでしょう。
昨日の午後から行ってきたのですが、本当にガラガラにすいていました。もっとも、おかげで1作品ごとに、ゆっくり&じっくりと眺めることができました(笑顔)。
やっぱり版画って言ったら、何はなくともデューラーを思い浮かべますが、改めて実物を見て、それは間違いないことを確信します。エングレーヴィングの線の細かさは、まあ、納得しますが、木版画であっても、その細部にわたる精密さ・線の細さは、デューラーの彫りの技術と完璧さを追い求める職人技を感じちゃいますね。
と同時に、16世紀ですよね。エミール・マールによれば、15世紀以降は、キリストを描くにあたってもそれ以前の時代の『理性』をキーワードにしたものから、『感情』へ移行したというのを読んだ覚えがありますが、デューラーの描くキリストの姿も悲しみ、苦しみ等観る人への感情へ訴えかけ、共感を覚えさせるものなのだと感じました。
しかしながら、デューラーはそれを表現するにあたって、非常に人体均衡論など比率を重んじる姿勢を強く現しています。それは、ルネサンスが古典古代に学んでいたことをまさに体現し、ゴシック建築以来の『理性』や『合理性』の存在を強く窺わせているように感じました。
まあ、あれこれ言わずに見れば分かりますし、感じ取れますね!!
宗教的主題が大半を占めますし、タイトルからその場面がすぐに頭に浮かばないと、この素晴らしさ・面白さの理解は、かなり辛いかもしれません。作品には適宜説明がつけられていますが、イマイチ説明の表現がうまくないかも? 端的に言うと読みづらいし、理解し難いです。
もうちょい、その辺への気配りしてくれるといいんですけどね。作品の展示物自体は、もう100%以上満足ですが、展覧会自体の作りはいかがなもんでしょうね? 地味な作品だけに、これで人が呼べるとは全く思えません。だからこそ、チケットのあの価格設定なのでしょうが、創意工夫が足りませんね。
個人的には以前のここの常設展好きだったんですが、新しくなって、展示や照明が変わってから、魅力は格段に落ちてます。全体的に明るくなっただけで、個々の作品の陰影などを味わえないです。建物自体も含めて薄っぺらになったような気がしてなりません。休憩して座る椅子も硬くなり、居心地悪い。
最近、行く回数減ったしね。
まあ、それはおいといて。今回の企画展で気付いたこと。
ほとんどの作品にデューラーのサインっていうか、マークが入っているんですね。意匠化された「A」がどうしても「鳥居」の形に見えてしまい、最初、どんな意味があるのだろうかと悩んでしまいました(笑)。作成された年代も入っていたりして、なんか面白いです。
あとね、宗教画に普通はあまりみないようなおいぼれ犬がしばしば入っているのですよ。これってデューラー自身? 解説のカタログ見たけど、特にそんな説明はなかったようですが・・・?謎だ?
そうそうブリューゲルの作品にもありましたが、「阿呆船」から題材を採ったものも幾つかありました。つ~か、時代的にデューラーの作品を見た後に、ブリューゲルがぱくったんでしょうけどね。それとも、そのデザイン自体が以前から既にパターン化していたものだったのか? その辺はよく分かりませんんけど。
今回は、定番中の定番でどっかで見たような有名ところもいろいろありました。
「ネメシス」「メレンコリアⅠ」とか、西美が持ってたんですね。知りませんでした。何度かあちこちの展覧会で見ていておなじみですが、いいですよね。
「神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の凱旋門」とか、カラーコピー機の宣伝で使いたいぐらい、なかなかの超大作かと(満面の笑み)。いろいろな事柄を暗示しつつ、ヒエログリフまで出てきたり、なんか楽しい♪

あとあの有名なサイの作品もあったよ~。長い間、船に押し込まれて運ばれる間に皮膚病か何かになって、あちこちに変な模様が出てしまったのだけれど、それしか見たことのない人が、それが普通のサイの姿だと思い、それがデューラーの版画で世界中に広まり、更にそれをあちこちで模写されて、日本などに伝わったっていう奴ね。
私が昔、チェコのプラハで読めもしないのに購入したデューラーの本の表紙もこの犀(サイ)だったです(関係ないけど)。
あとね、「魔女」って作品。
いろいろな構図が逆にされていて、デューラーのマークの『D』も逆になっている。魔女というのは、神の作った秩序に反する、逆の存在であり、それを表現しようとしたものですが、これも面白かった♪
他にもエラスムスやメランヒトン。宗教改革の大御所達を描いた作品があります。
グーテンベルクの活版印刷術の発明が、宗教改革を広げたことを知っていて、文字が読めない一般民衆には、宗教改革の意図を図示する必要があり、それを担ったのがまさに版画であったことを知っていれば、大いに納得&納得でしょう。
この辺も時代背景的諸事情を理解していると、とっても&とっても楽しめますネ。
知っている人には、この版画展大いにお薦めです!!
実際に、そういうのを知っている人は喜んで観てますね。でも、予備知識無しにこれだけ見ても、どこまでその面白さに繋がるのかは、保証しないなあ~。
ブログ内関連記事
ブリューゲル版画の世界 in Bunkamura
「デューラー版画展図録」西武美術館 1980年
「中世末期の図像学〈下〉」エミール マール 国書刊行会
印刷革命がはじまった:印刷博物館企画展
生意気な小学生だったころ、美術関係の図鑑かなにかで、デューラーの描いたアダムとエヴァの油絵の図版を見たことがあり、いまだに鮮烈に印象に残っております(子どものころに見たものってよくおぼえているものですね。きのう食べたものとかはすぎ忘れるのに)。銅版画ではないですが、エッシャーのリトグラフとかは見たことがあります。
…それとメールのほう、お返事が遅れてしまいまして、申し訳ありません。m(_ _)m 今月中には返信したいと思います…(汗)。
何かのきっかけで強く印象に残ることってありますね。
今回の展示は何故か人気が無いようで、人が少なかったので本当にこころいくまで堪能できました(笑顔)。久しぶりに良いものが見れました♪
混むのは苦手ですが、あまり知られていないのも残念なようで、複雑な気持ちだったりもします。
わがままなものです(苦笑)。
メールの方は、あまり気になさらないで下さい。
ブログの記事で早々にコメント頂いたの拝見させて頂いております。こちらこそどうも有り難うございました。