さて、実際に読んでみると。最初は、美術の表現形式が歴史的に過去のどういったものを引き継ぎ、それがどういった形で伝播し、展開していったかの説明に乗り切れませんでした。図版もあるんですけど、絶対的に図版や写真の枚数が不足しているのは明らかです。(それなりに載ってはいるんですけどね)
だって、そんな一般人が大聖堂のどの彫刻がどうとか言われても皆目分かりません??? そりゃ、有名なのは分かるし、名前を聞いたことがあるものもありますが、悲しいことに頭に浮びません(涙)。説明だけが空回りする感じがありましたが、段々読み進めていくうちにこの本の素晴らしさ・面白さが分かってきたような気がします。
私の場合は、シャルトル大聖堂や黄金伝説がテーマに上がってくると、予めある程度知っているので著者の説明が非常に良く分かり、ようやく本書のリズムに乗れてきました。そうすると、げんきんなもので今までは説明の羅列のように感じたものが、いかに著者の美術に対する造詣の深さと愛情がにじみ出た文章であるか、またそれが大いに魅力的であることにも初めて気付きました。
いやあ~、一度波に乗ると実に良い本です。今まで見てきたものとは、だいぶ違った見かたを教わった感じなんです。例えば、シャルトル大聖堂のティンパンで描かれた彫刻がただ何を現しているかだけではなくて、それがサン・ドニが生み出した表現形式を受け継いだものであり、他の大聖堂ともども並行して採用したデザインだとか、ステンドガラスで描かれたあのイェセの樹も同じくそうした影響下で初めて成立しているとかね。
大きな表現形式の歴史の流れの中で、それぞれを具体的に説明してくれているのでその題材の特定をするだけでなく、何ゆえそれが描かれ、当時のどういう意図の下でその表現形式がとられたのか、実に分かり易いし、面白いんだなあ~これが!
私は読んで正解でしたし、高い本の方もやっぱり買うつもりですが、とにかくここで紹介されているのを写真とかで見れると面白さが何十倍にもなりそう。逆に言うと、それが大いに不満ですね。どうしても文字中心だから、事前に知らないとその文字情報をイメージできないんだもん。
この本を持ってフランスのゴシック聖堂巡りをしたら、絶対に最高だと思う!! 一つの聖堂観光に1日や2日では確実に足りなくなるけどね。一ヶ所につき、一週間はかけて隅から隅までそこに描かれた題材を確認し、理解し、味わい尽くしたい衝動に駆られます。マジに。
座学の本として読むだけではもったいないし、ある意味面白くない。実物を見つつ、読みたい!そんな本です。
本書からいくつか印象に残った言葉を引用してみよう。
大聖堂は書物である。本書を読んで最初に思ったこと。サン・ドニ今度こそ絶対に行こう!
中世美術のこの百科全書的な性格が最も著しいのはシャルトルである。
シャルトル大聖堂は、眼に見えるものとして示された中世思想そのものである。
次に思ったこと。シャルトル大聖堂を見てから、私の中で中世への関心が異様に増していたのは当然だった。だって、現代に残る中世を目の当りにしたのだから。
最後に思ったこと。百科事典を一日で全部読むのは無理だった。丸一日をシャルトル大聖堂に費やしたが、まだまだ全然読み足りなかったはずである。今度は一週間ぐらい通い詰めたいです。ユイスマンスの「大伽藍」の主人公が羨ましくてしかたがないです。心からそう思った。
さて、明日から下巻にチャレンジだ♪
ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで (上)(amazonリンク)
関連ブログ
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで」エミール・マール 岩波書店本書の続き
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
サン・ドニやシャルトル大聖堂観に行きたいです!
まさに、嬉しい悲鳴が聞けそうです(笑顔)。
でも、私も行きた~い!!
TB有り難うございました。