明確な目標に向けて、所与の制約条件下で最適な手法を選択し、それを実施していくのですが・・・ここまではどんなもの、どんなプロジェクトにも共通!
しかし、そこには人の『想い』が強く介在していることを実感します。
無い物は無いわけで、だったら、どうやってその制約を克服していくのか?積極思考とかなんとか薄っぺらな評論家の言葉ではなく、自分の(自分達の)夢を叶える為には、とにかく目の前のものを創意工夫&情熱でクリアしていくしかないわけで・・・。
それが出来ている実例を知ると、やっぱり感動します。
打ち上げ時期の地元の漁業関係者との調整をそうですし、NASAとの交渉もそうですが、綺麗事ばかりではないのでしょうが、目的の為には、情熱と共にそれを支えるしたたかな計算と根気ある永続的な努力は必須なんですね。
どちらかというと、すぐ諦めがちな私などには見習わなければならないとこ、多過ぎ(苦笑)。私などもさすがに歳食ったせいか、新人だった頃ならすぐに駄目だからと切り捨てたり、諦めたりしたことをようやく地道に時間をかけて変えていくことを考えられるようになりましたが、これは『想い』を継続するだけの情熱を持ち続けるわけで、信念に近いぐらいのものが必要なんでしょうね。
行方不明になったはやばぶさを探し続けるっていうのも当然、合理的な計算の下、可能性があることは必須ですが、それでも最終的に失敗すれば、無駄な費用を使ったということで当然責任を問われ、今後の活動にもマイナスに働くことを分かったうえで、腹くくった決断なんですから、これはなかなか出来ることではないでしょう。
昨今、どこを見渡しても責任回避の風潮が見られる日本ですし・・・。
そうそう、あと本書を読んで強く感じたのですが、制約がある故、資金がかけらない故、結果的になんでも自分達でやろうとした結果、否応もなく、全体を隅々まで理解することになり、それが後々のトラブル発生時への柔軟且つ、独創的な対応を可能にしたというのも感慨深く読みました。
今、どこに行ってもなんでも揃っていることが多く、例えば仕事でも必要なツールなり、システムなりはたいてい完成して、ほとんど使用者が内容を理解しなくてもできてしまうのですが・・・・それってある意味、非常に脆弱だったりする。
決まりきったパターンであれば、間違えが生じないようになっているはずですが、イレギュラーに対する適応度が著しく低下するんですよ~。その状態は。
私の場合は、ベンチャーとかで何もないところから、自分達で一から物や業務フロー、部署そのものを作ったりしてきているので、基本、無いもの、必要な物は自分で生み出すと思って仕事してますが、周りの人をその生み出す過程にいかに主体的に参画させるかで、その後の成果が全く異なってくることを思い出しました!
(自分以外の)人が作ったものは関心が沸かないし、知ろうともしないので、何か不具合が生じても一切、お手上げとなり、また、どうにかしようとも考えないで全て停止してしまう。
そもそもの仕組みをきちんと理解していれば、自ら考え、対処しようと動くこともできるのですが、ただ、説明しただけでは相手に伝わらないし、相手自身が関心を持たない限り、空回りしちゃう。
こないだ日経の記事でトヨタが電池に関する研究だけは、どんなに金かかっても自前で延々と長きに渡り研究していたと知りましたが、それも一緒でしょうね。必要なものは、自前でやり遂げる、費やした金や時間以上にそれがあるのとないのでは、雲泥の差でしょう。
また、それこそが他のライバルが真似できない自分のところの強みとなるでしょうし。
はやぶさの偉業に対し、これほどまで日本人が関心を惹かれるのもまさに単なる科学技術の成果以上に、普遍的な「日本人としての在り方」というべきものを共感させられるからではないでしょうか?
TV等で物知り顔で語られることの多い、(著者が売れたので経済評論家という肩書きで語っているだけの)方達のどこか受け売り的な、自分だけ効率よく成果を挙げれば良い的な話には、胡散臭さがつきまといます。
個人主義(や利己主義)で中国やアメリカに日本人が勝てるとは、どうしても思えないんですが・・・。
また、メンタリティ的にそれで勝ってもヨシとできないのが日本人だと思うのですけれどねぇ~。
何でもかんでも、制約があればいいというものでもないですし、そもそも戦術的なもの以上に、戦略的な思考が大切なのも分かったうえで制約条件自体を変える必要も知りつつも、あえて、みんなで一つの目標を達成すべく何ができるか?
そういったものを考え直す、いい契機になるのではと思います。
今の日本はいろんな意味でそれが崩れているだけに、より一層感慨深いものがありました。でも、やっぱり感動するわ。はやぶさは。
来月、川口プロマネの講演会聞きにいくので楽しみですぅ~♪
【目次】小惑星探査機 はやぶさ物語 (生活人新書 330)(amazonリンク)
第1章 「はやぶさ」出発まで
第2章 「はやぶさ」の性能と技術的目標
第3章 打ち上げからイトカワ到着まで
第4章 イトカワ着陸
第5章 トラブル続きの帰還
第6章 なぜ「はやぶさ」は成功したのか
第7章 「はやぶさ」がくれたもの
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